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第五十六話 ガリオン国

まだ勇者達のターンが続きます。


 魔人ウルの出会いから、三日間経った。英二達はようやく、次の国であるガリオン国に着いたのだった。

 ガリオン国から湯気が上がっているのが所々と見えた。湯気からわかるが…………






 それは、温泉から出ている湯気なのだ。






 ガリオン国は獣人の国他に、温泉の国とも呼ばれている。


 数人の獣人が、ここで温泉を掘り当てたことから、ガリオン国の始まりなのだ。初めは小さな温泉街で、国と呼ばれる程に大きくはなかった。


 温泉の珍しさからなのか、大量の人が集まってきた。集まってきた人と協力して、町も大きくなっていき、このような国が出来たのだ。

 協力していた人は、獣人が多かったため、自然に獣人の国とも呼ばれるようになり、獣人の王が生まれた。




 このような歴史があったから、今のガリオン国があるのだ。




「もしかして、温泉があるのですか!?」

「言っていなかったな。ここは温泉の国でもあるのだ」


 女性陣は温泉があることに喜んだのだった。遠征で野宿になると、お風呂に入ることなんて無理だ。水を濡らしたタオルで身体を拭くしか出来なかったから、町に着いたら風呂に入りたいと思っていたのだ。


 普通の宿では風呂はないが、少し大きめな宿なら、風呂もある。お金さえ払えば、銭湯のような風呂に入れるのだ。


 だが、ガリオン国は他の国と違って、天然物の湯が湧いているのだ。何処の宿に泊まっても、必ず温泉に入れる。




「えぇと、先にギルドへ……?」


 早く温泉に入りたい気持ちを抑えて、絢がゲイルに聞く。




「いや、先に宿を取って、温泉に入って休む。ギルド長と会うのは、明日でいい。このまま、会いに行くと外へ蹴飛ばされそうだからな」


 ギルド長に会うのは明日でいいらしい。このままで会うと蹴飛ばされるって、どういう意味だろう? と聞いてみたら、




「ここのギルド長は狼の獣人だ。それだけで、わかるだろう?」

「あぁ、臭いか……」


 臭いがキツイと、鼻が良い獣人にとっては嫌な気分だろう。狼の獣人も鼻が良いので、このまま会うのはまずいらしい。




「成る程ね。さっさと宿を探しましょうよ!」


 早く温泉に入りたい晴海は、皆を急かす。皆はそれに苦笑しながら、晴海に着いていく。






−−−−−−−−−−−−−−−









「えぇっ!? 今は温泉が使えないの!?」

「はい、この時間では一行の貸し切りになっております。すいませんが、しばらくお待ちいただけるか、他の宿にある温泉に入るのどちらかになります」

「そんな……」


 晴海は、泊まる宿を決めて、今すぐに温泉へ行こうとしたが、止められたのだ。

 一行が温泉を貸し切りにしている状態で、今は泊まることに決めた宿の温泉に入れないのだ。ここの温泉は、男女別だが時間によって、柵を取り外して、混浴になる作りになっている。


 この時間は混浴の時間であり、その時間の中から一刻ほどは、ある一行が貸し切りをしているのだ。

 ちなみに、混浴の時間だけは、水着などの着衣を認められている。


 晴海は外見からだが、ここの温泉は良い物だと見抜いていた。宿屋としても、サービスが良くて人気があるのだ。

 今回はたまたま、英二達が泊まれる部屋を取れたのでここに決めた。そのまま温泉に直行しようとしたら、これである。


 orzで落ち込む晴海を絢が慰めていた。




「おや、温泉は使えないのか?」


 後から来た貴一がそう聞いていた。さらに、英二とゲイルも来て、詳しい説明を聞くことに。




「貸し切りですか……?」

「温泉は、貸し切りが出来ないのではなかったか?」

「えっ、そうなの? なら、なんで貸し切りになっているのよ?」


 ゲイルは冒険者時代にここへ来たことがある。貸し切りにしたい者がいたが、出来なかったと聞いたことがあるから疑問を持ったのだ。冒険者時代は昔のことだから、変わったのかな? と思ったが違ったようだ。




「はい、普通なら貸し切りは出来ません」

「でも、貸し切りになっているよね?」

「特例ですから。ギルド長が直に来て、貸し切りにするようと頼みに来ていましたので」

「はぁ? ギルド長が直に来ていたのか?」


 普通なら、誰かわからないが、貸し切りをしている一行のためにギルド長が直に頼みに来るのは有り得ないことだ。




「はい。入っている方は3人の冒険者ですが、Sランクが2人とAランクが1人のパーティです。これ以上は私から話せませんが……」

「おいおい、Sランクが2人も? ここでは、珍しいな……」


 大抵、Sランク以上の冒険者は北か南に向かう。Sランク同時がパーティを組んでいて、まだ西の地にいるのは珍しい。

 Sランクに上がったら、強さを求める者にしては、西の地では物足りなくなるのだ。




「仕方がない、すぐに入りたいなら別の温泉に行くしかないな」

「むぅぅぅ、会ったら文句を言ってやる! 皆もいいよね?」

「おいおい、まだDランクの俺達がSランクに物を申す? 馬鹿なことを言うな」

「ああ、止めとけ。SランクはAランクの魔人を倒さないとなれない。つまり、人外への入口だと思えばいい」

「Sランクの冒険者か、どれくらい強いんだろうか。話が出来るなら話してみたいな」


 英二はSランクの冒険者に興味があるようだ。最近は強さを求めるようになったから、真っ当な反応だろう。




「それに、ギルド長と繋がっているなら、明日に聞けばいいだろ? 話してくれるかわからんが」


 今回は、別の宿にある温泉へ行くことに決めた。






−−−−−−−−−−−−−−−






 温泉から出た絢と晴海は買い物に外へ出ていた。




饅頭まんじゅうに、温泉卵…………ここは異世界だよね? 日本にある温泉街の店にしか見えないんだけど」

「あははっ、確かに思うね。でも、饅頭の中身が違うよ?」

「あ、本当だ」


 見た目と名前は、饅頭だが、中身はあんこではなくて、別の物だった。木の実と果物をすり潰した中身や、甘さ含んだクルミのような感触を味わえる饅頭もあった。




「へぇ、珍しい感触だね。ここは木の実が多そうだから、こういうのが作れたかもね」

「でも、簡単な料理しか出来ないんだよね。私達は……」


 隠れオタクと変人、この2人はチャーハンや卵焼きなどの簡単な料理しか出来ないのだ。




「そうだね……、私はいいけど、絢は頑張らないと駄目でしょ?」

「え?」

「あんな料理を輪廻君に食べさせる気?」

「っ!?」


 晴海に言われて、気付く絢。絢は輪廻から、家族と一緒に食べる時は必ず外食で、1人の時は、ほとんど自分で作っていると聞いている。

 もしかしたら、輪廻は家族の味を求めているかもしれないと、絢は考えたのだ。




「確かに……」

「まぁ、今は輪廻君を捕まえることが最優先だからね」

「捕まえるって、輪廻君は動物じゃないんだよ……?」


 苦笑する絢。確かに、捕まえておかないと、何処かに行きそうなイメージが浮かぶ。

 騒ぎ立てる街の中で、ゆっくりと話しながら歩き続ける。


 そして、次の日に変わった…………









 ここはガリオン国のギルド前。英二達はこれからギルド長に会いに行く予定だ。




「そういえば、ゲイルさんはここのギルド長とも知り合いなんですか?」

「ああ、ダガンの元仲間だ。ダガンが私の師匠で、仲間達にも会ったことがある」

「へぇ、ここのギルド長はどんな人なんですか?」

「そうだな……」


 狼の獣人で、女性ということ。身体特徴は、これから会うのだから見ればわかると。


 最後に会ったのが、隊長に上がる前の三年前だから、身体特徴については曖昧になってしまう。だから、見ればわかると答えたのだ。




「はい、わかりました。ギルド長に問い合わせを致しますので、お待ちください」

「ああ。頼んだよ」


 取り次ぎを受付嬢に頼み、英二達は待つ。ガリオン国のギルドは何も特徴はない、ギルドだった。ラディソム国のように大きくはないが、ティミネス国みたいに小さくはない。他には、冒険者もいるが、ガリオン国はダンジョンが一つだけだからそれほどに多くない。

 むしろ、温泉目的の客が多いぐらいだ。




「どうぞ、着いてきてください」


 会う許可が取れたようで、案内してもらう。ギルドの中はそれ程に広くはないので、ギルド長室の前にすぐ着いた。




「入れろ」


 受付嬢がノックをすると、すぐに返事が来て、扉を開ける。




「良く来た。ゲイル坊よ?」




 大きな椅子に座っていたのは、椅子の身丈に合わない少女。輪廻の歳と変わらないように見え、立派な狼の耳がピンと立っていた。


 その人こそが、ガリオン国のギルド長であるメルアと言う者だった。







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