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第五十話 王の呼び出し



 モンスターハウスでの戦いが終わり、既に地下40階まで進んでいた。エリスが加わっただけで、戦況は早く進み、外が暗くなる前にボスの部屋前まで着いたのだ。




「今日は思ったより進んだな。まだ日は沈んでいないが、帰るか?」

「そうね、急がなければならないというわけでもないし」

「御主人様、無理は禁物ですよ。まだ先はありますから」

「今日はここまでね……、貴方達はいつもこれくらいのペースで?」


 何回も言うが、一日だけでこんなに進むのは凄いことだ。浅い階層ならともかく、今はもうすぐで中盤と言ったところで、ペースは下がる処か、エリスが加わったおかげで昨日よりも早い。

 上手く魔力を節約しているからまだ余裕はあるが、テミアの言う通りに無理する場面でもないし、急いでないから今日はここまでにすることに。




「今日はいつもより早い方だな。まぁ、さらに降りるごとにペースは落ちるだろうし、そうなる前に、ダンジョンの中で野宿を考えないとな」


 転移の魔道具は地下10階層ごとに置いてあり、夜になってもそこまで辿り着けなかったら、ダンジョンで野宿をすることもある。

 輪廻達はペースが早くて地下10階層ずつ降りていたから、ダンジョンで野宿せず、宿に帰れたのだ。


 今後、ペースが落ちて野宿をするかもしれないから、食料などを買っておかなければならないのだ。






 ダンジョンから外に出て、街に向かって歩く。ここでエリスと別れることになる。




「朝、日が上がってから一刻ってとこな。その時間にここで待ち合わせな」

「わかりましたわ。では、また」


 エリスは輪廻と別の宿を取ってあるので、いつでも輪廻達と一緒というのはない。

 輪廻達はエリスと別れて、宿に戻っていく…………のだったが、






「あ、見付けました! ラウド様から話がありますので一緒にアルト樹に来ていただけますか?」

「……ビアンカさん?」


 こっちを見付けて、駆け寄ってきたのは、エルフの王様の秘書をやっているビアンカだった。ラウドが話があるからビアンカを遣したようだ。




(面倒事じゃねぇよな……?)


 輪廻は嫌な予感がした。こういうパターンは嫌なことが起きる定番だと小説や漫画に出て来たのだ。

 だが、反対にこっちが得するような話かもしれない。すぐに自分では判断出来なかったから2人にも聞いてみる。




「どう思う……?」


 ビアンカに聞こえないように小さな声で話す。




「こっちを討伐しようとしても、たった三日でSランク以上を何人か集められるとは思えません」

「だね。敵対するなら魔弓を渡さない方がいいと考えるから、嫌な方向じゃないと思うよ」

「ふむ……、それは一理あるな」


 敵対しないなら、他に何があったか考えてみる。




(…………あ、援助のことか?)


 忘れかけていたことを思い出した。こっちと繋がる代わりに、援助すると言っていた。

 繋がる代わりに、援助すると言うことは、お互いが力を貸しあうことだから、依頼を頼むことにもなり、報酬がこっちの助けになるような物をくれる関係になるだろう。


 ギルドの依頼に似ているかもしれないが、依頼を受ける代わりに、こっちが欲しい物を提示出来る。




「まぁ、危険がないならいいか」


 輪廻達は素直にラウドがいるアルト樹まで案内されることに。






−−−−−−−−−−−−−−−






 日が完全に落ちて、ラウドの書斎では魔道具の明かりに包まれている。輪廻達の他にラウドやビアンカもいる。




「よく来てくれたね。頼みたいことがあるのだけど、いいかな?」

「……話によるな。その頼みは依頼になるなら、報酬は準備出来るのか?」

「ビアンカ、アレを」


 ラウドがビアンカに指示を出す。ビアンカが机に置いてあった箱を持ってくる。




「はい、これですね」

「ありがとう。これが報酬になる」

「……? 箱だけを見せられてもなぁ……」


 箱そのものには何も記述もない。さらに魔力も感じないから魔道具や魔剣類ではないのはわかる。




「これは私の先代が残した本です」


 そう言って、ボロボロになった本を見せてくる。先代が残した本、それに輪廻が求む物があると言っているのだ。輪廻が求む物とは…………




「この本には、『邪神の加護』についてのことが僅かですが、記述されています」

「ほぅ……」


 輪廻が欲しかったのは、『邪神の加護』についての情報。輪廻はすぐに情報を手に入れるとは思ってなかったが、目の前にある。




「これを報酬にする。だから、依頼を請けて欲しいのです」

「ふむ……、それは内容によると言いたいが、これだけの報酬を提示されては、無理難題な依頼ではないなら、請けたいな」


 輪廻達では、達成不可能の依頼でなければ、問題はない。




「ありがとう。この依頼はSランク以上の実力がなければ、依頼を達成出来ないですからね」

「Sランク以上だと? まさか、Aランクの魔人を倒せとかじゃないよな?」

「お、正解ですよ。よくわかりましたね」

「マジかよ……」


 当たるとは思わなかった。Aランクの魔人を倒すには、Sランクの冒険者と同じかそれ以上の実力がないと倒せない。

 しかし、輪廻はSランクのエリスを倒しているし、テミアとシエルも強いから、一緒に戦えばAランクの魔人なら倒せると考えている。




「……いいだろう。請けてやるよ」

「ありがとうございます! 念のために、Sランクの冒険者も連れていって下さい。もうすぐで来ますから」

「Sランクの冒険者だと? まさか……」


 思い付くのは1人しかいない。聞こうとしたが、ドアが開かれて話が止まった。






「あぁ、もう、何の用なの…………え?」






 ドアの向こうから現れたのはエリスだった。エリスもこっちのことを知らなかったのか、驚いていた。




「な、なんで、貴方達がいるのよ!?」

「それはこっちの台詞だ……」






−−−−−−−−−−−−−−−









「成る程ね、貴方達と一緒に依頼を請けろと言う訳ね?」


 説明を聞いて、輪廻達がここにいるのか納得した。もちろん、『邪神の加護』や魔人、ダークエルフのことは言わないで、輪廻達に助けられた恩があると話をした。さらに、実力を見込んで、依頼を頼んだことも。




「そうですね。大丈夫そうですか?」


 輪廻達は強いから心配はしてないが、念のためにSランクであるエリスを呼び出したのだ。どうやったのかわからないが、ラウドとエリスには繋がりがあるようだ。




「というか、私が一緒に行く必要があるとは思えないけど?」

「それはどういう意味ですか?」

「私は輪廻さんに負けたの」


 ラウドが目を見開き、輪廻を見ていた。ラウドは輪廻が強いのは思っていたが、実力はSランクに劣る程度しかないと判断していた。ロニーと戦った時も、輪廻はラウドと一緒でようやく勝てたような感じだったのだから。




「もしかして、あの時は手を抜いていたと? 運でSランクになれたエリスといえ、勝ったのですか……」

「それは言わないでよ!?」

「ん? エリス、それはどういうことだ?」

「うぅっ……」


 運が良かったからSランクになれたということに気になった。エリス本人に聞いてみたら、本人は恥ずかしそうに教えてくれる。




「私が倒したAランクの魔人は始めから重傷を負っていて、火属性の魔人だったの……」

「あー、成る程」


 つまり、重傷であまり戦えない状態で、得意な水魔法に弱い火属性の魔人だったから、倒せたという。




「もし、敵が万全だったら、実力は五分五分で負ける可能性もあったわ……」

「確かに、運が良かったんだな」

「むぅぅぅぅぅ……」


 エリスは唸るが、本当のことだから、何も言えない。話を聞くには、Aランクの魔人はエリスより強いと考えた方がいいと思った。

 エリスも加わるなら、運でSランクになったといえ、実力はあるから輪廻達の助けになるだろう。




「了解した。何処に向かえばいい?」

「アルト・エルグから三日間歩いた先にある『タクト沼』と言う場所で人型の魔人に二組の冒険者が殺されました。生き残った1人がそう証言されている」

「人型の魔人ねぇ、それだけでAランクだと?」

「いえ、知っている魔人でしたので。その魔人は『墓場の守人』と呼ばれ、土を扱う魔人、イシュダラと言う。その魔人は南の地で活動していたのですが、何故か『タクト沼』にいます」


 イシュダラは決して、自分から人間を襲う魔人ではなかった。実力もAランクで、Sランク以上の化け物達が集まる南の地では、弱いと判断される魔人。だが、なかなか見つからないから生き残っていて、今はこちらの側である西の地にいると情報があった。

 『タクト沼』に依頼で来ていた二組の冒険者がそのイシュダラに会ってしまい、殺された。


 『タクト沼』にしか生えない植物があり、薬の素材なので、それを取りに行く冒険者もいる。だが、Aランクの魔人がいては、依頼を請けてくれる者が減って困るから討伐してくれと言う。




「ふむ、わかったよ。明日に出発するでいいよな?」

「助かります。4人とも宜しくお願いします」


 輪廻達は依頼を請けることになり、明日から出発し、『タクト沼』に向かうのであった。







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