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第四十九話 モンスターハウス


 エリスがパーティに入り、地下30階のボスに挑むことになったが、




「止まりなさい!」


 エリスの一撃が、ボスであるアイアンゴーレムを飲み込む。生み出された大量の水がアイアンゴーレムを包み込み、動きを止める。そこに、テミアの大包丁剣が関節に減り込み、身体の部位を少しずつ落としていく。


 アイアンゴーレムの身体は鉄と同様に硬く、生半可な攻撃では、反対にこっちの武器が壊れてしまう。

 だが、関節を狙うことによって武器の損傷を抑え、こっちが押していた。




「今回は珍しく連係をしているな。”居絶”」


 今は間違いなく、連係をして戦っていた。その理由はエリスの加入にある。エリスは支援に回っており、水魔法で敵の動きを止めたり、回復魔法も持っているので、盾ごと吹き飛ばされたシエルの回復までもこなしている。


 ”居絶”で敵の首を落とすが、まだアイアンゴーレムは水の中で暴れ続けている。ゴーレム系の魔物は核と言われる弱点を壊さなければ、倒せない。




「うーん、核は心臓部分にあるのかな?」


 回復し終わったシエルがそんなことを呟きながら雷の矢を心臓部分に向けて射っていく。雷の矢は貫通力が高いのだが、一発では貫けていない。

 だが、星屑は連射を可能になっており、次々と矢が発現して射られていく。




(これだったら、すぐに貫いて終わりだな)


 と考えていたら、シエルの矢が核を貫いた。アイアンゴーレムの身体は崩れて魔石だけが残る。






−−−−−−−−−−−−−−−






「ねぇ、しばらく戦ってみて気になったことがあるけど、いいかしら?」

「ん? なんだ?」


 今は地下34階で魔物を倒していたら、エリスから話し掛けてきた。




「なんで、トドメは輪廻さんばかりなの?」

「……その輪廻さんと言われるのは慣れねぇな……」


 輪廻は年上からは君付けか、少年とかだったから、さん付けには慣れていないのだ。




「あら、貴方は年下だけど、実力は私よりは上だから敬うわよ? これは変えるつもりはないから」

「……はぁ、勝手にしろ。で、トドメは俺ばかりだったな? 俺が一番レベルが低いからだ」

「…………え、えぇっ!?」


 衝撃だったようだ。自分に勝った人がこの中でレベルが一番低いとは思わなかったのだ。




「え、えっ……、一応、レベルを聞いても……?」

「俺は27だな」

「私の半分もないじゃない!? なのに、私が負けた……」


 エリスは膝から崩れ落ち、orzの形に落ち込んでいた。エリスのレベルは61だと言う。さらに、テミアのレベルを聞くとさらに沈んでしまった。

 戦えば、自分が勝てると思っていたが、レベルに20以上の差があるとは思わなかったのだ。20以上の差があって、互角に戦えたのだからレベルが同じぐらいなら、確実にテミアの方に軍配が上がるだろう。




「なんで、そんなに強いのよ!?」

「んー、才能?」


 本当のことを言えない輪廻は本当のことに近い答えを言えたと思う。加護や種族などは自分で決められることではないので、ある意味、才能と言っても間違っていないのだ。




「それに、特異魔法まであるなんて、いいなぁ……」


 特異魔法のことは話してある。聞かれたのもあるが、一緒に戦うならこれぐらいは教えても問題ないと判断したのだ。




「無いものをねだっても仕方がないだろう。エリスは魔力が高いんだろ?」

「それはそうだけど……」


 エリスの魔力は3000を越えており、魔力の高さに恵まれている。同じ人間であるゲイルがレベル50ぐらいで1400近くのと比べれば、どれくらい高いのかわかるだろう。




「さて、次の階に進みたいんだが…………あれ、なんだあの隠し扉みたいなものは?」

「もしかして、隠し部屋!?」

「隠し部屋ですか? 年増エルフ、すぐに説明しなさいな」


 シエルとエリスは知っているが、輪廻とテミアは隠し部屋のことを知らないから入る前に説明を求める。




「隠し部屋は、いくつかの宝箱が置いてある部屋か、入った瞬間に大量の魔物が現れる部屋の二つがあるの」

「成る程、宝箱の部屋を期待しているわけか」

「魔剣などが見付かった実例があるの! 入りましょうよ!」


 シエルは興奮気味に説明して、入るのをオススメしてくる。




「それに、外れだとしても、このメンバーなら問題はないでしょう」


 エリスもシエルに同意している。確かに、このメンバーなら魔人イアみたいな化け物が出てこない限りは大丈夫だろう。宝箱の部屋やモンスターハウスのような部屋があるなら、見付けたら積極的に入るのもいいだろうと考えた。




(宝箱か、誰が準備をしているんだ? それに、ダンジョンは何のためにあるのかわかっていないよな……)


 ダンジョンは外の世界に魔物や魔人みたいな魔族が現れる前からあったという記述が残っていたのだ。だから、侵略のために魔族達が準備した物ではないのはわかっているが、何のためにあるのか、未だにも不明なのだ。




「まぁ、いいだろう。どうやって開けるんだ、押せばいいのか?」

「私が前に」


 テミアが前に出て、開けると言う。もしかしたら、開けた瞬間に魔物が襲ってくるなどと考えているかもしれない。


 テミアがドアを押して開けると、そこには一つの宝箱があった。魔物は…………出て来ない。




「当たりの方だったね!」

「あら……、宝箱は一つだけ?」


 宝箱がいくつか置いてあると聞いたのに、一つしかない宝箱に訝しむエリス。全員が一つの部屋に入り、エリスは嫌な予感がした。シエルが宝箱の前に座り込んで、上蓋を掴み、エリスはそれを止めようとした。




「待っ…………」

「何かなー!?」


 少しだけ遅かったようで、宝箱は開いた。とその時に、扉が消えた。

 さらに周りに魔法陣が何十になる数が現れた。




「やっぱり、罠だったな」

「はい、一つだけなんて怪し過ぎましたからね」


 輪廻とテミアは気付いていた。一つしかなかったのも怪しかったが、嫌な気配が宝箱からビンビンと感じられたのだ。

 つまり、あれは侵入者をこの部屋に引き込むための罠であり、開けた瞬間に大量の魔物が現れる仕掛けになっていたようだ。

 だが、輪廻はあえて止めなかった。外れだとしても、大量の魔物が現れてくれるなら、レベルを上げるのに、ちょうどいいと考えたからだ。




「各自、好きに動け!」




 輪廻は狭い部屋で魔物に囲まれ、仲間も少し離れ離れになっているから無理に連係に動くより、各自に動いてもらった方がやりやすいと考えた。


 現れた魔物は全て同一で、小さな悪魔のような魔物で、名称はスターデビルと言う。

 おでこには星の形をした痣があるからそう名付けられたのだろう。ランクはCと高くないが、火を吹くことが出来て、狭い部屋で吹かれてはたまらない。なので、輪廻は現れた瞬間に紅姫で切り裂いていく。




「やれやれ、手応えがない。魔力の無駄になるな」


 輪廻は敵が弱いと感じ、紅姫に込める魔力が勿体ないと考えて、紅姫を仕舞って、二本のナイフを構えて”隠密”を発動する。




(久しぶりに暗殺者らしくやるか……)


 輪廻は気配を消し、敵が周りの仲間達に意識が向かった所で、背後からナイフで首を斬る。それを繰り返していく。

 スターデビルからにしたら、輪廻の姿を見付からないから、仲間達が次々と首から血が吹いて倒れていく悪夢にしか見えないだろう。




「軽いですね」


 テミアは敵の攻撃を軽いと断して、スターデビルが持つ武器、三又の槍ごと切り裂き、吹き飛ばす。

 シエルも星屑で頭を一発ずつ撃ち込み、どんどんと消していく。


 エリスは敵に火を吹かれないように、水の玉で頭を包み込んで溺れ殺していた。




 Cランクのスターデビルでは、4人の相手になるはずはなく、最後では、部屋に4人と魔石だけが残るのだった…………








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