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第四十七話 切り札



 魔人イアが現れた日から三日間経っていた。輪廻達はその三日間は何をしていたのかは…………




「またシーホースかよ?」

「私に任せて!」


 シエルが前に出る。敵は1体だけなので、任せることにした。




「ボヒー!」


 上半身が馬で下半身が魚という珍妙な姿をした魔物。そのシーホースが、水を吹き出してきた。

 シエルは、持っていた大盾を構えて、水鉄砲を受け流す。


 今まで星屑との組み合わせを色々と試した結果、大盾にしたのだ。シエルの筋力は2人より低いといえ、普通の人間よりは高い。だから、大盾でも片手で持てる。

 その大盾でそのままシーホースに突っ込んで、シーホースがその衝撃でのけ反らせる。そのまま、隙を見せたシーホースの顎に向けて星屑で撃つ。




 ドバッ!!




 シーホースは一撃だけで絶命した。三日間でわかったことがあり、星屑は威力を調整出来て、射程も連射でなければ、150メートル先にある物を撃ち抜くことも可能だ。

 この前、的に向けて撃った時は、結構な威力で普通の魔物には、オーバーキルなのようで、威力を落とすように込めると、魔力を節約出来るのもわかった。

 今の威力で撃つなら、150発も撃てることも実証済みである。あの時もテミアに起こされて、むせながら涙目でテミアを睨んでいたのを覚えている。


 今のところは戦い方も決まっており、シエルも星屑と大盾を手に入れてから、ガンガンと前衛に出て戦うようになった。

 星屑も弓矢と同じように遠くを狙うと、威力が落ちるので、星屑の威力を生かすために、出来るだけ近くまで近付いてから撃つやり方になり、大盾が一番相性が良かったのだ。




「よし、終わったみたいだな。先に進むぞ」

「「はっ」」


 今はアルト・エルグの近くにあるダンジョン、『精霊の泉』と呼ばれる所に潜っていた。洞窟に入ると何故か、森があるという不思議なダンジョンである。たまに見る下級精霊が漂う泉があるため、その名になったようだ。

 『奈落の穴』のネーミングよりはマシだと思う。


 輪廻達はすでに三日間で地下29階までは進んでおり、その攻略スピードは速いと言える程だ。

 輪廻達だったら浅い階層なら、一日に10階層は進めるが、魔法を試したり星屑の検証もしていたので、地下29階までしか進んでいない。


 もちろん、魔物を倒してきているので、レベルが上がっている。

 まず、輪廻のステータスである。




−−−−−−−−−−−−−−−


崇条輪廻 11歳 男


レベル:27

職業:暗殺者

筋力:1400

体力:1350

耐性:990

敏捷:2070

魔力:1960

魔耐:1090

称号:邪神の加護・暗殺の極み・冷徹の者・魔族を虜にした者・無慈悲なる者・異世界者の覚醒

特異魔法:重力魔法(重壁・重圧・重球・虚手)

スキル:暗殺術・隠密・剣術・徒手空拳・身体強化・鑑定・隠蔽・魔力操作・言語理解

契約:テミア(魔族)


−−−−−−−−−−−−−−−




 新しい魔法、”虚手”を手に入れた。あとで、説明することにして、次はテミアだ。




−−−−−−−−−−−−−−−


テミア(魔族) ???歳 女


レベル:37

種族:病魔

筋力:2500

体力:2200

耐性:1600

敏捷:2200

魔力:3100

魔耐:3100

称号:病の魔族・珍魔族・毒舌家

魔法:水魔法(水刃・水遁弾)

スキル:瘴気操作・魔力操作・鑑定・隠蔽・身体強化・毒無効・念話・言語理解

契約:輪廻(人間)


−−−−−−−−−−−−−−−




 水魔法に、称号が追加されていた。毒舌家、口が悪いと言うことだが、毒舌で相手を憤怒させる効果があり、精神攻撃になるようだ。

 テミアらしい、称号だなと思ったのだった。

 そして、シエルは…………




−−−−−−−−−−−−−−−


シエル 184歳 女


レベル:41

職業:巫女

筋力:930

体力:990

耐性:650

敏捷:1100

魔力:2200

魔耐:1480

称号:月神の加護・闇の巫女・耐える者

魔法:闇魔法(魔矢・暗霧・魔炎弾・魔牢)

   雷魔法(雷球・雷刀)

スキル:弓術・杖術・盾術・身体強化・魔法耐性・偽装・魔法付加(火、雷、闇)・直感・魔力操作・言語理解


−−−−−−−−−−−−−−−




 シエルは何と言うか、結果オーライな称号を手に入れていた。『耐える者』は様々な攻撃を耐えた者だけに与えられる称号で耐性と魔耐に+100されていた。

 様々な攻撃とは、盾の練習で受けたり、テミアの毒舌での精神攻撃や虐め攻撃などのことだろう…………


 それは置いといて、盾術と言うスキルも手に入れていた。盾を扱う時に、盾術を持っていれば、何となく前よりは受け流すのが上手くなったような気がするという。


 曖昧だな? と思うが、検証が難しいから仕方がないだろう。盾術を持っていなくても、盾を扱うのが上手い人がいるのだから。


 剣術、槍術、盾術、杖術などの武器に関するスキルがあるのだが、おそらくそれらは、武器を持った時に、補助のような感じが術師の地力を少し上げているのだろう。




 ようやく、”虚手”の説明に入るのだが、これは暗殺者から掛け離れた魔法である。

 ”虚手”の虚と言う文字は何もないと言う意味なのだが、能力の内容を知れば、暗殺者らしくないと思うだろう。


 ”虚手”とは、一本の手になるんだが、馬鹿デカイ手なのだ。透明のようで、薄っらと輪郭が見える手で、大きさは10メートルになる。

 試しに使ってみたら、自分の手に合わせて動かすことが出来て、その手は”重球”のような重力の塊だから、振り払うだけで木が軽々と吹き飛んだ。

 振り下ろすと、地面はベコッ! と大きく凹んでおり、潰されていた。手刀の形にすると、”虚手”も形を変えていた。

 面白いなと思いつつ、向かって来る何体かの魔物に攻撃したら、ぺちゃっと音がして、吹き飛ばされた場所を見ると、はらわたをバラバラにして潰れている魔物の姿があった。

 この時は、輪廻は切れないのか…………と残念そうにしていた。実証をしている輪廻から離れて見ていたシエルは冷や汗をかき、テミアは目をキラキラとして、見つめていた。


 最後に、テミアとシエルに魔法を”虚手”に向けて撃って貰った。テミアは”水刃”、シエルは”雷球”を撃って貰ったが、”虚手”は重力の塊で、輪廻が手をにぎにぎと開いて掴んでいると簡単に魔法は手の中で潰されて消えていた。


 2人が放った魔法は弱い魔法なのだが、2人の魔力は高いから、普通のよりは強いはずなのに、”虚手”には全く効いていなかった。




 攻撃も防御もこなせる、完璧な魔法のように見えるが、決して完璧ではなかった。何せ…………、






(魔力をバカ食いするんだよな……)






 そう、魔力消費が凄かったのだ。魔法を発動し、保持するまでも魔力が必要になるのだ。

 初めて使った時は、魔力欠乏になりかけて、意識が消えそうだった。魔力欠乏になる前に消したから、意識を無くすことはなかったが、魔力はすっからかんになっていたのを感じた。


 その時は、テミアが残念にしていたのが見えたが、今はいいだろう。




 つまり、”虚手”は切り札のようなモノで、魔力を物凄く使うから、考えて使わなければならない。今は2000に近い魔力を持つ輪廻だが、発動したら四分の一も減って、保持するだけでもグングンと減っていくから5分が限界だ。

 すぐに消せば、今の輪廻なら、四分の一だけで済むから切り札にすることに決めたのだった。






 と言った内容の魔法だったため、暗殺に使うモノではないとわかっただろう。小さな殲滅兵器のようなモノに近い。




「よし、地下30階に着いたか。今日はここまででいいだろう」

「もう夜になりそうですね」


 転移に必要なカードを見て、そう言う。カードを覗いて見ると、確かに暗くなる所だった。




「今日は沢山、暴れたから魔力が残り少なくなっているしね」

「年増エルフは猪のように突っ込んでいて、ブヒブヒと言っていたものですね」

「ブヒブヒは言っていないよ!? 確かに、前衛に突っ込んでいてばかりだったね……」


 初めは後衛だったはずが、今は前衛のような雰囲気を出していた。おそらく、大盾を持っているからだろう。




「まぁ、前衛や後衛とかは考えなくてもいいんじゃない? 自分のやりやすいようにやればいい」

「うーん、それだと連係が……」

「今まで連係のようなのやったっけ?」

「それはもっともですねぇ……」


 今までは連係をしたことがないことに気付いたが、皆の戦い方は我が強いから連係をしない方が上手く行くような気がしないでもない。


 転移機で一階に戻ると、入口には一つの影が見えた。3人とも、知っている人だった。






「メイド! ようやく見付けた。決着を付けるわよっ!」






 テミアに向けて、水色のオーブを嵌めた杖を持ち、そう言ってきた。

 Sランクの冒険者、エリスの姿があったのだった…………







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[一言] シーホースはタツノオトシゴやで、、、、
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