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第四十六話 買い物



 ここでの話になるが、輪廻は何故、大会で優勝して賞金を狙おうとしたのか、それには理由があった。





 ただ、お金が好きだからとは違う。輪廻は、お金は、必要な分だけあれば充分で、成金な趣味はないのだ。


 では、賞金は何に必要になったのかの話になるだろう。ここまで話せば、誰にもわかるだろう…………






 御礼を受け取り、援助の話は今度ということになって、王城から出た輪廻達はすぐにある場所へ向かっていた。




「よぉーし、買うぞ!!」


 目の前には、一つの建物がある。その建物には、一回だけだが、立ち寄ったことがあり、看板には、『幻想樹』と出ている。

 そう、魔道具の店だ。




 前の話に戻るが、輪廻は何のために賞金を狙ったのかは、魔道具を買うためだ。

 魔道具は前の世界にはなくて、輪廻が興味を惹かれる存在の一つだった。

 何処でも手に入るお金ではなく、珍しくてなかなか手に入らなくて、自分にとって役に立つ物だったら、是非に手に入れたいと思っている。

 魔道具だけではなく、魔の付く武器もそうだ。


 これからは積極的に珍しい魔道具や、魔剣などを探して行きたいと考えている。御礼の時に貰えばいいのでは? とテミアとシエルに聞かれたが、貰いすぎるとこっちの借りになってしまう可能性が高いから、2種類の魔道具だけに留めておいたのだ。




「あ、いらっしゃいませ! また来て下さったのですね!!」


 スーツのような服を着たエルフが挨拶をしてきた。




「早速で悪いけど、魔道具はどんなのがあるか、教えてくれる?」


 前に約束した通りに、説明を頼む。どんな魔道具があるか、聞いておきたかったのだ。




「はい、畏まりました。貴方達は冒険者ですよね? これらはどうですか?」


 まず、差し出してきたのは、冒険者にとっては定番とも言える魔道具である。

 『魔灯』、『結界玉』、『煙幕玉』の三種類で、どれも遠征をするのに、役に立つ魔道具である。

 

 『魔灯』は名前でわかると思うが、魔力でともす道具である。これは一回分の使い捨てで、金貨2枚になっている。

 次に、『結界玉』は、結界を作り出す玉であり、6時間は半径10メートルが冒険者を守る壁となる。ただ、発動したら、6時間経つまでは出られなくなる欠点もあるが、防御面ではBランクの魔物ぐらいなら堪えられるのだ。これも同じように使い捨てで、金貨5枚になっている。

 最後に、『煙幕玉』も消費品であり、金貨1枚になっている。煙幕に金貨1枚では高くないか? と思うが、『煙幕玉』には魔力を阻害する成分が入っており、魔力で察知する魔物や魔人を欺けることが出来るのだ。

 運悪く魔人に出会ってしまっても、使って逃げ出せたこともあるので、冒険者は誰でも持っているということだ。




「へぇ、どれもいいものだが、最低金額が金貨50枚と聞いたのだが、安いな?」

「はい、それらは使い捨てですからね。これらの永久版もありますが、価格が跳ね上がり、冒険者が買ってくれません」

「成る程……、使い捨てといえ、金貨1〜5枚とは、命が助かるなら安いもんか? ちなみに、永久版だといくら?」

「平均白銀貨10枚ぐらいはかかります。何せ、壊れない限りはずっと使えますからね」

「それぐらいはするんだな……」


 輪廻は買うか考えてみる。輪廻達にとっては必要な物なのか。

 輪廻達は夜目が利くから、明かりなんて、敵に場所を教えるような物と変わらない。外で寝る時は、テミアの瘴気を常時に広げてくれているから、反応があればテミアが対処してくれる。


 それによって、『魔灯』と『結界玉』はいらないと判断した。




(煙幕玉か、あの魔人に利くか微妙だが、安いから一応、一つだけ買っておくか?)


 輪廻が思い浮かべる魔人は、魔人イアのことである。眠そうな魔人だったが、実力は見た目とは比べにならないほどに恐ろしい強さだと理解している。だが、煙幕玉は便利そうなので、買うことに。




「他には?」

「そうですね……」






−−−−−−−−−−−−−−−






 続けて、他の魔道具を紹介されたが、どれも輪廻の食指が動かなかった。『幻想樹』のような普通の店では、珍しい魔道具は置いておらず、生活や冒険に必要な物で、輪廻が欲しい! と思うほどではなかった。




「次は、魔法ギルドに行ってみるか? そこで基本魔法を使えるようになると聞いたんだが……」

「はい、適性のある魔法を教えて貰えると聞きました」

「もしかして、私か年増エルフに魔法を?」

「そのつもりだな。せっかく、魔力が高いんだから覚えても損はないだろ?」


 テミアは魔力が高いのに、魔法を覚えていないのは勿体ないと思った。




「私はもう魔法ギルドで適性を調べてもらっています。火と雷を使えます」

「ほぅ、でも、何故取得しなかった?」

「お金が……」

「成る程……」


 生れついて魔法を覚えている人もいるが、使えない人もいるので、その人は魔法ギルドで教えてくれる。だが、お金がかかるらしい。

 一つの魔法で、白銀貨1枚になるらしい。


 シエルは強い冒険者だったが、他の人と組んで、ダンジョンに潜っていたから分け前などで余り稼げなかったという。

 シエルは後衛タイプで、1人で潜るのは自殺行為に近いから、1人で潜って稼ぐのは難しかった。




「まぁ、お金はあるんだから魔法を覚えて貰うよ?」

「はい!」

「私はどんな魔法が使えるのでしょうかな? 貧乏エルフと被らなければいいのですが……」

「私が貧乏じゃなくて、白銀貨で高すぎて払えなかったのよ!!」


 ゴチャゴチャとしながらも、輪廻達は魔法ギルドに着いたのだった。建物の見た目は、冒険者ギルドとは変わらなかった。ただ、看板には魔法ギルドと出ていたから、馬鹿ではなかったら間違えることはないだろう。






「なぁ、何処で魔法の適性を教えてくれるんだ? 」

「はい、こちらになります」


 受付嬢に聞くと、ギルドカードを作った水晶と似たモノだった。この前に見たのは透き通った水色だったが、見せてもらったのは赤い水晶だった。




「へぇ、これが……」

「適性を見るだけなら、無料で出来ます。誰か調べますか?」

「テミア、やっちゃって」

「畏まりました」


 シエルはもうわかっていて、輪廻は特異魔法で基本魔法は使えないのだから、調べるのはテミアだけになる。




「では、この水晶に手を乗せて下さい」


 テミアは躊躇うことはなく、水晶に手を乗せると、水晶が光り…………






「青だけ光りましたので、水属性となります」






 テミアは水属性しか使えないが、水属性はエリスが使っていた回復魔法もあるので、回復役もこなしてくれるのを期待している。もし、複数の魔法が使えると、色が変わり変わりに光ると言う。青のまま、光り続けているから、水属性だけのようだ。




(あれ、シエルは闇魔法を持っていたよな? 闇と言えば、水晶が黒く染まりそうなんだが……)


 さらに、特異魔法だったらどうなるのか?

 その話は魔法ギルドでの用事を終わらせてからシエルに聞いてみたら、あの水晶は基本魔法の五色しか光らないと言う。

 だから、闇属性を持っていることは知られていないようだ。




「よし、テミアは水属性でシエルは雷だけにしとけ。火は……わかるよな?」

「はい、わかりました」


 闇魔法の中に火属性にも属する魔法もあるから、雷魔法だけにすることにした。シエルは魔弓もあるから、その練習も必要だと考えて、魔法は一つずつにする。




「水と雷をお願い」

「白銀貨2枚になりますが、大丈夫ですか?」

「ほいよ」

「……ありがとうございます」


 ポンと出す輪廻に目を開く受付嬢だったが、すぐ笑顔に変えて魔法を発現するために、ある場所へ案内される。






 案内されたのは、ギルドの奥にある一つの部屋だった。そこには一つの魔法陣があった。




「では、魔法の恩恵を受ける方は立って下さい!」


 別のドアから現れたのはローブを着ていて、杖を持っている女性が現れた。1人ずつ陣の上に立って欲しいと言うことでシエルが先にやることに…………いや、テミアから命令されて先にされたが正しいだろう。






「実験体エルフの出番よ。最期まで見届けるから逝きなさいな」

「何で、物騒な言い方なの!? 危険はないんだから!! そうですよね?」


 杖を持った女性にそう聞いてみると、顔は困っており、挙動不審のような雰囲気になり…………




「あ、えっと…………」

「あるの!?」


 シエルが涙目で叫ぶが、女性はペロッと舌を出していたことから、テミアに合わせてからっていただけのようだ。




「てへっ、冗談よ?」

「可愛く言っても駄目だからね!? 笑えないからっ!!」


 そろそろ本格的に泣き出そうなので、止めさせた。なんか、最近はシエルが泣き虫キャラが定着しつつあるな……、と思う輪廻であった。




「この後に行くとこがあるから、そこまでだよ。すぐにやってくれないかな?」

「御免ね。少年とメイドは少し下がってくれるかな?」


 二人も話している内に、陣の上に立っていたようで、すぐに下がることにした。




「始めるよぉー」


 気が抜けるような声を出し、杖を高くかざす。陣が黄の色に光り…………








−−−−−−−−−−−−−−−






 魔法ギルドでの用事が終わり、輪廻達は外に出ていた。




「魔法を手に入れて、どうだ?」

「実感がありませんね」

「そうね、ステータスにちゃんと新しい魔法が加えられていたから、魔法を使えるけど、実際に魔法を使わないと実感が湧かないかもね…………で、その手は何?」


 テミアはシエルに向けて手を出していた。




「いえ、いい的があるので、魔法を試して置こうと思いまして。”すい……”」

「やめなさいよ!? 街の中で魔法を使かわない! 仲間に向けないでよ!!」

「では、回復魔法を使えるようになっても年増エルフには使わないようにしますね」

「それは使ってよ!?」


 ギャアギャアと騒いだため、周りから注目されている。その中に、知っている顔があることに気付いた。




「あ、バルドだったけ……?」

「あ、騒いでいる人がいるなーと思っていたら、貴方達でしたか!?」


 ここで出会ったのは、一日だけだが護衛をしてあげた商人のバルドだった。そこには、バルドが売る商品が見えた。武器、防具、道具などの統一がない物を売っていた。

 輪廻はちょうど良かったので、輪廻はここで買い物の続きをすることに。




「あれ、少年? まだ何か買うの?」

「アホか、シエルはどうやって戦うんだ?」

「えっ、片手に星屑を持って…………あ!」

「わかったか? 星屑は片手だけあれば撃てるからな」


 星屑は引く弦がなくて、片手で”魔法付加”を込めれば、撃てるのだ。つまり、片手が空いてしまう。

 無難に杖を持たせてもいいが、どうせなら色々と試したいと思っている。




「バルド、片手で持てる武器と盾を全て見せてくれ」

「はい!!」









 片手剣、ナイフ、刀、短槍、杖、メイス、小盾、大盾などの片手で持てる武具を全種類で一つずつ買った。バルドが持つ武具の中で良いものにしたから、白銀貨1枚と金貨30枚になった。

 バルドは恩義で割引をしてくれ、全部を白銀貨1枚で買えた。こんなに買ってくれたから、割引してもホクホク顔をしているバルドがいた。




(金貨30枚も割引したが、その顔は黒字みたいだな……)


 でも、輪廻は買う物を今日中に買えたので、少しはご機嫌で、宿に帰ったのだった。






 ちなみに、夜に輪廻が頑張ったせいで、2人が気絶してしまったのは3人だけの秘密である。







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