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第三十三話 金策


 トリア村では何もトラブル無く、村を出れた輪廻達はご機嫌だった。

 輪廻はトラブルが無かったことにだが、2人は昨日の夜で御褒美を貰ったことからだった。




「トラブルがないのは良いことだ。旅の途中で盗賊に会わなかったのは残念なことだけどね」


 アイテムボックスのような魔道具は、実際にあるかわからないが、もし見付けて買うとしたら、お金が必要になるのだ。

 盗賊を倒したら、盗賊の物を自分の物にすることが出来ると聞いたので、輪廻としてはお金のために出会いたいと思っている。




「ここら辺で盗賊が出たと言う情報はなかったから出会わないかもしれないね」

「そうなのか? 他の金策を考えるべきか……」

「そこら辺の冒険者を襲わないのですか?」


 テミアがとんでもないことを提案してくる。だが、輪廻は……




「駄目だ。それでは、盗賊とは変わらん。この前の冒険者を殺したが、何も盗らなかっただろ?」

「はい。そこに疑問を持っていたのですが……」


 この前とは、キングゴブリン討伐のことだ。輪廻は15人の冒険者を殺したが、何も盗っていない。




「そこでお金だけを盗ったら、俺達が疑われるだろ? もし、キングゴブリン達が盗ったと言っても、死体をそのままにしてあるのもおかしいだろ?」


 ゴブリンは悪食で、何でも食べる。それが人間の肉でもだ。決して、お金だけを盗るのはありえないことで、もしそこでお金だけを盗ったら、人の手だとばれる。




「あの15人はキングゴブリン達に殺されたということにしてあるし、冒険者の遺品は遺族に送る手配になっているから、お金だけが無くなって俺達が疑われるのを避けた訳さ」


 つまり、輪廻は証拠を残したくないのだ。輪廻は自由に旅をしたいだけで、自分から進んで指名手配を受けたいわけでもないのだ。




「成る程。勉強になりました」

「勉強って……、普通はやらないからね?」


 学んでも、実践はしないようにと注意をするシエル。




「あー、この前のエスケープコータスだったっけ? それが見付かれば早いんだがな〜」

「それは難しいでしょうね。現れるのは本当に稀なことで、何処に住んでいるのか、解明されていないのです」

「そうか、エスケープコータスは黄金の亀だったよな……あ、ああいうの?」


 輪廻が指を指す方向には1体の亀がいた。甲羅が金色で、大きさは50センチぐらいはある。




「そうそう、あれがエスケー…………え、ええぇぇぇぇぇ!?」

「あ、あれがエスケープコータスだったの?」


 シエルが叫び声を上げてしまったため、エスケープコータスがこっちに気付いてしまった。




「”魔牢”……早っ!?」


 シエルは咄嗟に”魔牢”で捕まえようとしたが、亀とは思えないスピードで避けていた。




「テミア! 捕まえるぞ!!」

「はっ!!」


 敏捷が高い2人でここから逃げ出す亀を追う。




「白銀貨、逃がすか! ”縮星”!!」


 いくつかの”縮星”で亀の動きを止めようとするが、横に急転換して、”縮星”の範囲から逃れた。




「あれは亀の動きじゃねぇよ!?」


 ふざけた避け方をし、”縮星”から逃れていたことに、本当に亀なのかと疑うのだった。




「私にお任せをっ!」


 テミアは力技で亀の動きを止めるようだ。テミアは大包丁剣で隣にあった木を切って、片手で掴み、亀に向けて、投・げ・た…………




「無茶苦茶です!?」


 後ろから着いてきていたシエルが叫んでいた。

 投げられた木は残念ながら、亀に当たらなかったが、走るスピードが落ちたのがわかった。




「続けろ!!」

「亀、これ以上逃げるならば、スッポン鍋にしてあげます!!」

「キュッ!?」


 亀はテミアが言っていた言葉を理解したのか、驚きの声を出していた。




(スッポンって……この世界にもいんのかよ? あれは確かに鼻が少し尖っているから似ているが、違うだろ……)


 そんなことを考えている時でも、テミアは木を投げ続けていた。

 ようやく距離が近付き、五メートルの範囲に入ったのを確認し…………




「これで止まれよ」


 ”居絶”で亀の後ろ脚を斬った。亀は後ろ脚を斬られ、バランスを崩してしまう。




「甲羅に傷を付けるなよ!」

「はい!」


 テミアが追い付き、甲羅を傷付けないように、首を狙う。これで決まった! と思ったが…………




「ぴぎーーーー!」

「な……!?」


 エスケープコータスは脚を甲羅の中に引っ込めたと思ったら、何かを脚から噴射して、飛んだ。テミアの攻撃は空振りし、亀は空に逃げ出す。


 3人とも、一瞬は呆気に取られたが、輪廻が一番、我に返って”空歩”で亀が逃げた方向に走るが、もう遠くまで逃げていた。




「ガ○ラかよっ!? あんなふざけた亀がいるとは、この世界は広いな……」




 亀の姿が小さくなっており、追うのを諦めた輪廻は2人の元に戻る。




「逃げられましたか……」

「あの亀がガメ○のように逃げるとはな……」

「えっ、ガメ○とは?」


 前の世界のネタであるガメ○と言っても通じない。何でもないと答え、旅の続きをすることに。




「ふざけた亀は諦めて、進むぞ」

「うぅ〜、白銀貨が……」

「諦めなさい。貧乏エルフはパンの屑でも食べて生きてなさいな」

「そこまでしなければならないほどに、貧乏じゃないっ!!」


 2人がいつものことように、漫才をしている時、輪廻は変な物を見付けていた。




「あれ、これは?」

「紅い宝石?」


 ルビーのような物を二つも地面に落ちているのを拾った。




「あ、”鑑定”を使えばいいか」


 ”鑑定”でこの紅い宝石の正体を調べてみた。




−−−−−−−−−−−−−−−


 血の結晶石


 エスケープコータスから取れる宝石。血を流すと結晶化し、希少な宝石になり、価値が高い。


−−−−−−−−−−−−−−−




 調べたら、エスケープコータスの血から出来た宝石類の物だった。




「確か、ここは後ろ脚を斬った場所だったな」

「はい。これなら少しは財布の足しになるかと」

「ねぇ、これはもしかして、本物の宝石?」


 ”鑑定”を持っていないシエルだけ、これが宝石だとまだわからないのだ。




「そうだ。エスケープコータスから取れた血の結晶石だ。二つしかないが、価値は高いらしいな」

「そうなんですか!?」


 この血の結晶石が高く売れるとわかり、シエルは目を輝かせていた。

 シエルはそれ程、お金に執着してはいないが、お金が手に入ると嬉しいのものだ。それは冒険者なら、当たり前のことである。




「もし、年増エルフが叫び声を上げなかったら、楽に終わったのにね」

「うっ……」


 確かに、叫び声を上げなければ、向こうはまだこっちに気付かなかったし、輪廻の”隠密”を使えば、近くまで歩いて首を狙えたかもしれなかったのだ。

 だが、輪廻はそのことに怒るつもりはなかった。輪廻の代わりに、テミアが愚痴を言い聞かせるのだから、ちょうどいい罰になるだろう。




「逃げられるなら、後ろ脚を狙わずに、身体を狙うべきだったか?」

「あの甲羅は硬いのは予測していたし、まさかあんな方法で逃げるとは思いませんでした」

「あー、確かにな。まぁ、無いものをねだっても仕方が無いし、今はこの成果を喜ぼうではないか」


 いくらぐらいになるかわからないが、売りに行く時に楽しみが出来たのだからいいだろう。




 思いがけない物を手に入れた輪廻達は旅を続行するのだった…………







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