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第三十二話 トリア村



 ダークエルフの村があった場所を目指す輪廻達は、トリア村に着いていた。

 トリア村はラディソム国からアルト・エルグに向かうと必ず通る村であり、冒険者の姿がちらほらと見掛ける。




「見た所、普通の村だけど冒険者が多いな」

「殆どは遠征の依頼に向かっていた冒険者だと思うよ。ここは中間の休憩所にちょうどいい場所にあるからね」


 トリア村は特に有名な物を売っているわけでもなく、観光地になるシンボルもない。冒険者にとっては休憩所として使うという考えしかないようだ。




「なんというつまらない村ですね。魔法しか取り柄がないエルフはどう思いますか?」

「よく悪口を思い付くのね……、いっそ感心するしかないわよ……」


 テミアは誰にでも、村だろうが、毒を吐く。シエルは毒を吐かないと死ぬと言う弱点を持っているのか、と疑うぐらいだった。




「まぁ、一泊だけ泊まってすぐに出発するから、別に何もなくてもいいじゃないか? 平和が一番、平和が一番」

「そういえば、街に行くごとにトラブルに巻き込まれっぱしでしたね。何処かの偽造エルフなど……」

「私をトラブル扱い!? 酷すぎるよぅ……」


 シエルはシクシクと涙を流しながら輪廻に助けを求める。




「メイドが虐める〜」

「まぁ、トラブル扱いはちょっと言い過ぎかな」

「すいません。虐めるのが楽しくて…………、クソエルフ。御主人様に引っ付くな」

「ヤダー。今の私には癒しが必要だもん〜」


 街の中で少年に引っ付き、頭を撫でられるシエルの姿があった。テミアは離れろと言いつつ、シエルに足蹴をしていた。

 目立っていて皆から視線を集めていたが、3人共は無視。




(こんな所で視線を集めても意味はないし、早く宿見付けないと…………)


 そんなことを考えていたら、男が輪廻達の前に出て来た。




「おい! 何、ここでいちゃいちゃ……」

「全部言わせるか!」

「がふぉっ!?」


 また絡んできたから輪廻は面倒事を長引かせないように”重脚”で顔を強打して、吹き飛ばした。




「一々、トラブルを持ってくんな! この展開はもう飽きたんだよ!! ……2人も遊んでないで宿を取るぞ」


 輪廻はもう気絶している男にそう吐き捨てて、宿を探すことに。

 その様子を見ていた周りの人は呆気に取られ、固まっていた。









 空いている宿を探し始めてから五軒目で、ようやく部屋を取れた。




「まさか、防音の部屋が何処もいっぱいとはな……」

「ここはカップルが多いのかしら……?」


 防音になっている部屋がなかったから探し回っていて、五軒目で見付けたのだ。普通の部屋なら二軒目の時は空いていたが、2人の声は高いから防音の部屋がこのましかったのだ。


 部屋に案内され、目的地に着く前に、何があるのか説明して貰うことに。




「ようやく、落ち着いて話せるな」

「はい、説明しようと思ったら空気を読めない魔物が襲ってきましたからね」

「そうですね。これでようやく年増エルフの羞恥を聞けますね」

「そんな話をするわけないでしょ!? もし、あったとしても貴女に一生、話すつもりはないからね!!」


 いつでも弄るテミア。シリアスな話でも、テミアはシエルを弄るのを忘れないのは流石だなと感心する程だ。




「メイドは話の邪魔をしないっ! ……コホン、私が見せたいと言う場所は、少年の称号に関することなの」

「称号…………、『邪神の加護』のことか」


 ダークエルフは邪神を崇めていたことから、『邪神の加護』に関することを何か知っているかもしれないと思い、詳しい説明を求める。




「私達、ダークエルフは邪神を昔から崇めていた。魔族と認識されても、崇めるのを止めなかった」


 昔から何故、邪神を崇めていたのかは、ダークエルフの先祖達が危機に陥った時、助けてもらった者は『邪神の加護』を持った人物だったことから。

 余程、昔のことだったのか、『邪神の加護』を持っていた人物は何者だったのかわからなくなっている。人間、エルフ、ドワーフだったとかの噂もあるが、何故か情報が『邪神の加護』しか知らない(・・・・)状況になっているのだ。大事なことなら何か残しているはずなのに、それさえもない。


 だが、ダークエルフは『邪神の加護』のことを世界中から調べ、わかったのは邪神は破壊の神であり、フォロボスと呼ばれている。




「『邪神の加護』を持っている人物の種族がわからなくなっている? しかも、何も残っていないのはおかしいじゃないか」

「はい。私もおかしいと思いました。だけど、村中を探しても何もわからなかったの」

「ふむ……、加護を持っていた人物がわからないのに、『邪神の加護』だけは伝わった……?」


 『邪神の加護』を持っていた人物がダークエルフの恩人なら、加護よりもその人物に注目するはずなのだ。だが、伝わったのは『邪神の加護』だけで、その人物は名前も種族はわからず、『いた』としか認識されていない。




(話を聞くには、おかしな所ばかりだな……。『邪神の加護』だけ歴代に伝わって、恩人である人物がわからなくなるのはありえるのか?)


 情報が少な過ぎるので、ダークエルフの廃村に着いたら調べて、考えることに決めた。




「そうか……、故郷に来てほしいと言うが、何が残っているんだ? 故郷は潰されたんだろ?」

「私が案内したいのは、潰された村ではなく、近くにあるやしろです。あそこは邪神を崇めていた社があり、裏には洞窟があります」

「社の裏に洞窟? シエルは入って調べた?」

「いえ、ダークエルフの中では洞窟に行くことを禁止されていました。社は『幻惑の森』の奥にあって、奥に進むほどに魔物が強くなりますので、私1人だけでは……」


 シエルは村を潰された後に、一度調べるために向かったことがあるが、シエルだけでは社まで着くことが出来なかった。

 前は腕の立つダークエルフがいたから護衛をしてもらえば、行けたが…………




「成る程。シエルだけだったら魔物が沢山出てくるとキツイもんな」

「ええ、前衛がいないのでは、一度に沢山の魔物と戦えないの」


 他の人間に頼むのは、リスクが高いから出来なかったが、今なら輪廻とテミアと言う強力な仲間がいる。

 さらに、今回の件は輪廻にも関係があることなので、寄り道をすることにしたのだ。






「私が知っている情報はこれくらいですね」

「了解した。話を変えるが、あれだけの魔物を倒したから、レベルが上がっているんじゃないの?」


 ゴブリンとホブゴブリンの軍団をあれだけ倒したのだから、テミアとシエルも上がったのでは?



「あ、調べてなかったわ」

「確認したら、レベルが一つだけ上がっていました」

「私もね」


 2人共、一つだけ上がっていたようだ。これが2人のステータスだ。




−−−−−−−−−−−−−−−


テミア(魔族) ???歳 女


レベル:36

種族:病魔

筋力:2450

体力:2150

耐性:1550

敏捷:2150

魔力:3050

魔耐:3050

称号:病の魔族・珍魔族

スキル:瘴気操作・魔力操作・鑑定・隠蔽・身体強化・毒無効・念話・言語理解

契約:輪廻(人間)


−−−−−−−−−−−−−−−



−−−−−−−−−−−−−−−


シエル 184歳 女


レベル:40

職業:巫女

筋力:910

体力:970

耐性:530

敏捷:1070

魔力:2150

魔耐:1330

称号:月神の加護・闇の巫女・

魔法:闇魔法(魔矢・暗霧・魔炎弾・魔牢)

スキル:弓術・杖術・身体強化・魔法耐性・偽装・魔法付加(火、雷、闇)・直感・魔力操作・言語理解


−−−−−−−−−−−−−−−




 称号やスキルには変化はなかったが、テミアは全て50も上がっており、シエルは魔力と魔耐が一番高く上がった。




「……テミアのステータスを抜ける気がしないな」

「うん……、毒舌メイドのくせに生意気な……」

「えっへん」


 テミアは胸をポヨンと揺らし、シエルはそれを見て、さらに悔しがる。

 ちなみに、テミアはDもあり、シエルはBである。




「これで話し合いは終わりだな?」

「はい、御褒美を楽しみにしております」

「メイドだけ狡い!! 私にも頂戴!」






 その夜も、高い声が鳴り響いたのだった…………







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