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第二十九話 キングゴブリン討伐



 紅姫を盾で防がれたが、盾で防いだと言うことは、800の魔耐を持っても、魔力の刃は通るということだ。

 紅姫の威力は、魔力の高さによって決まると輪廻は予想している。輪廻の魔力より高い魔耐を持つ者はテミアしか見たことがない。だから、検証はまだしていなくて、確信は出来ていないのだ。


 テミアは仲間で、自分の女でもあるからテミアを使って試すなどはしたいとは思わない。そこが、輪廻の甘さかもしれないが、仲間も殺すほどに狂っているのではない。

 もし、仲間が敵に回ったら容赦はしないが、仲間でいる限りは大切にするのだ。




 輪廻は単調な攻撃を止め、”空歩”を使ってトリッキーな動きでキングゴブリンを翻弄する。

 死角に入った所に、”重脚”をぶち込むが…………




「ぎぃ!」


 死角を狙う輪廻の蹴りが盾で防がれる。キングゴブリンは360度の視点を持っているから防げたわけではない。

 防げた理由は、キングゴブリンの持つスキル、”直感”による勘で死角からの攻撃に対応出来たのだ。

 キングゴブリンは”直感”で攻撃が来そうな場所に盾を構えている。だが、輪廻の”重脚”の威力が堪えられる威力を超えていたようで、キングゴブリンは一メートル程、後ろに下がっていた。

 地面には、擦った後が残っている。




(へぇ、あれに堪えるとはね)


 輪廻がやったことは、100キロのハンマーを凄い勢いでぶち込むのと変わらないはずなのに、キングゴブリンは堪えたのだ。




「ギガァァァ!!」


 キングゴブリンの”咆哮ほうこう”で、自分の筋力を10%ほど上がった。筋力は900に近くなったが、輪廻は当たらなければ問題はないと考えている。




「まず、盾を封じ込めて貰うぞ」


 ”縮星”を何発か撃ち込む。キングゴブリンは力ずくで”縮星”の引力から逃れるだろうが、輪廻の狙いは盾にある。

 盾は結構大きくて、キングゴブリンの身長は大体ニメートルに近く、盾はその半分、一メートルぐらいはある。

 縦長の盾に狙いを付け、”縮星”を発動する。




「ギィィィィィ!!」


 三つの”縮星”が盾を引き寄せる。引力は三倍になっており、キングゴブリンの力を持っても、剥がすのは無理だ。

 そうなると、キングゴブリンは盾を捨てるしかない。




「遅い」


 輪廻はもう動いており、盾に構っていたキングゴブリンは近付かれたことに気付くのが遅れた。

 紅姫が盾を持っていた腕を切り落とす。




「ギガァァァ、き、きさま!!」


 腕を斬られながらも、剣を振り落としてくるが、”重壁”で横に受け流し、続けて剣を持つ腕も切り落とした。




「これで防げないな。”居絶”!」


 腕を無くしたキングゴブリンはこのまま、首に振るわれる魔力の刃を見るしか出来ず…………、首を落として死んだ。






−−−−−−−−−−−−−−−









 戦いを終わらせた2人の姿を見た輪廻は声を掛けた。




「お疲れだったな。10体のホブゴブリンと戦って、どうだった?」

「相手になりませんでしたね」

「私は魔力を節約しつつ、戦ったけど、苦戦はしなかったかな」


 輪廻は目標にしていたレベルまでもう上がったから、次の所に行こうと考えている。2人の戦い具合を聞いてみて、問題はないようなので、明日からラディソム国を出ようと思う。




「あー、報告に行かないとな」

「目立ちそうだけどね……」

「いえ、確実に目立つでしょう。キングゴブリン軍団を3人だけで倒した主従コンビ+ペットとして…………」

「ペットネタも止めてよ!?」

「むぅ、年増もペットも嫌と言うなんて、我が儘な……」

「これは我が儘じゃなくて、当然の主張だよっ!?」


 ギャーギャーと騒ぐシエルを微笑ましく、見ていたら、後ろから視線を感じた。




「っ!?」




 後ろに振り替えって見るが、そこには誰もいない。何も気配を感じない。




(……気のせいか?)


 誰もいないとわかり、警戒を緩める。

 まだ言い合いをしている2人の間に入り、街へ戻ることに…………











 輪廻が見た方向で、輪廻がいる場所から三キロも離れている所には…………






「……む? 焦点を子供に絞っただけなのに、こっちに気付くのはありえるの……?」


 姿は少女だとわかるが、額には一本の角があるから人間ではないのは間違いない。




「むやむや……眠い……。普通なら気付かないよ〜」


 眠そうな少年は、さっきの少女と同じ顔をしていて、同じように額に角があったが、少女と違って二本はある。




「そうですよね。とりあえず、上に報告して置きましょう。人間の子供1人と魔族2人がキングゴブリン軍団を全滅させたと」


 この2人は、魔人であり、キングゴブリンをけしかけた本人でもある。キングゴブリンを村や街を襲えと命令した理由は、退屈だったから襲わせただけなのだ。




「くくっ、キングゴブリンを使って暇つぶしをしようと思ったら、面白い物を見たな。人間と魔族が一緒とは、面白いな……」

「ZZZ……」

「ここで寝るな!!」


 寝ている少年をどつき、あの場から襟を引っ張って離れていくのだった。






−−−−−−−−−−−−−−−






 ラディソム国に着いた3人はまず、ザイルに出会った。ザイルとその仲間が入口で話していた時に、こっちに気付いたのだ。




「おっ? 無事だったんだな。戻って来るの速いから偵察だけしてきたのか? それにしてもゴブリン1体も見えないが、今はどの辺りにいるんだ?」


 ラディソム国から出発してから、半刻も経ってない。だから、ザイルは戦わずに偵察だけしてきたと思ったようだ。




「何言っているんだ? もう終わったぞ」

「…………へ?」


 固まるザイル達を通り抜けて中に入っていく。そのまま、ギルドに行こうと思ったが、肩を掴まれた。




「ちょっ!? い、今のはどういうこと!?」

「あー、ギルドで報告するから一緒にくればいい。何回も説明するのは面倒だからな」

「それはいいですが、御主人様に触らないで下さいな」

「は、はい……」


 テミアからの殺気で、掴んだ手を離していく。ザイル達もギルドまで一緒に来ることにしたようだ。


 ギルドに着き、受付にはディアとダガンの姿があった。




「あれ、輪廻様と……ザイル様までも?」

「どうした? そろそろ攻めてくる時に、ここに来て」


 ディアはパーティのリーダーの名だけ呼んだ。ザイルがパーティのリーダーだと初めて知ったが、それはどうでもいい。




「ここに来たのは報告に決まっているんだろう。もう終わらせたから」

「…………は?」

「終わらせたって……?」


 まさか、キングゴブリンの討伐が終わったとは思えず、詳細を聞いてくる。




「今の状況では、一つしかないだろ? キングゴブリンとゴブリン、ホブゴブリン達を全滅させた」

「はぁっ!?」

「嘘でしょ……」


 証拠に、輪廻達のギルドカードを渡しておく。本当のことなら、倒したキングゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンの数が出ているのだから。




「………………」


 ディアは驚愕しすぎて、声が出ないようだ。輪廻はキングゴブリン1体、ゴブリン702体を倒し、テミアはホブゴブリン7体、ゴブリン797体で、シエルはホブゴブリン3体、ゴブリン541体とギルドカードに表示されているのだから、仕方がないだろう。

 横から見ていたらダガンも固まっていた。




「……おーい、固まっていないで討伐されたと皆に伝えておいて。あと、報酬を」

「は、はい……」

「あははっ……、たった3人だけで2000体以上の魔物を倒すとは……」


 ザイル達もダガンの顔を見て、本当のことだとわかり、驚愕の顔で輪廻達を見ていた。




 その情報はあっという間に、広がった。たった3人だけで2000体の魔物を倒したと。




 輪廻達はギルドで報酬の受け取るために待っていたが、周りが騒ぎ、話しかける者が沢山いて、ウザかった。テミアの殺気でピタッと黙ったのは面白かったが。




「……お待たせました。全部で金貨22枚、銀貨84枚になります」

「うん、お疲れ様でした。あと、お世話になりましたー」


 輪廻はお金を受け取り、ギルドを出ようとしたが、周りにいた冒険者達に囲まれた。




「待ってくれ! 俺達のパーティに入ってくれないか!?」「いや、俺を入れてくれ!」「ぜひ、私のパーティにっ!!」「僕もBランクだ。一緒にやろうじゃないか? な、な?」「坊や、お姉ちゃんと遊ばない?」「お前らじゃ、足手まといなのは見えている! 俺ならついていける!!」




 様々なパーティから勧誘が来た。一つだけ勧誘に関係ないのがあったが、全部断ることにする。




「すみませんが、お断りさせて頂きます。明日にはここを出ますので」


 全員の誘いを断り、3人はギルドを出ていく。後ろを着いて行こうとする者がいたが、テミアの殺気で追い返したのだった。







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