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第二十八話 ゴブリン軍団

『異世界者の強み』→『異世界者の覚醒』に変更しました。



 北の森を進んでいくが、他の魔物はいなかった。テミアに瘴気で調べてもらったが、走り回っても全く反応がなかった。




「うーん、冒険者が倒したならダンジョンと違って遺体が残るはずだから、ここから立ち去ったかもな」

「そうみたいですね。ゴブリン程度といえ、同じか少しだけ上の実力では、数の暴力に勝てないですからね」


 魔物がいないのは仕方がないとして、そろそろ北の森を抜け、草原が見える頃になる。




(先に行った冒険者はもう戦っているのかな?)


 草原の向こうから気配と殺気を感じる。おそらく、キングゴブリン達がいるだろう。

 輪廻は紅姫を手に持ち、二人もそれぞれの得物を持つ。









「見えた! やっぱり先に戦っているな」

「はい。冒険者側が魔法を撃ち込んでいるようです」

「キングゴブリン達は魔法などの遠距離攻撃を持っていないからね」


 先に戦っていた人は全員で15名はいた。5名で一つのパーティとするなら、三パーティがいることになる。前衛の人は前に出て、盾を構えている。魔術師を護る体勢を保って、ゴブリンを通さないようにしている。

 後ろからは、5名の魔術師が様々な魔法を撃ち込んでいる。何人か怪我をしていて、魔術師の後ろで倒れていた。回復魔法を使える魔術師はいないのか、怪我人は回復出来ずに呻いている。何とか生きている状態で、戦いに参加も逃げることも出来ないようだ。

 教科書通りな戦い方でゴブリンを減らしているが…………




「駄目だね。あの戦い方じゃ……」

「ああ、数に押し潰される。さらに魔術師の魔力が切れたら最悪だな」


 シエルがダメ出しをし、輪廻も同意する。100体程度なら、今の戦い方でいいが、今回は2000体もいるのだ。しかも、良く見れば倒せているのはゴブリンだけで、キングゴブリンとホブゴブリンは後ろにいて無傷だった。

 つまり、ゴブリン達が囮ということになる。




「……ったく、Aランクが先に行ったとか言っていなかったか?」

「強そうな人はいるように見えませんね。せいぜい、年増エルフと同等なのが1人だけ」

「あのね……、いい加減に年増エルフと言うの止めてくれる?」

「嫌なのですか?」

「嫌に決まっているでしょ!!」


 もうすぐで戦い場なのに、緊張感がない2人だった。




(そのまま、合流すべきか? 怪我人がいるから足手まといになる可能性が高いんだが、どうする……?)


 輪廻は突っ込んで乱戦をしたいが、魔法を撃ち込まれては邪魔だと判断し、冒険者の元に着く前に、脚を止めた。




「御主人様?」

「やっぱり、あの冒険者が邪魔なんだけどどうする? このまま助けてもこっちの足を引っ張りそうだけど」


 とりあえず、2人に意見を聞いてみる。だが、2人の答えは前と同じだった。




「斬ればいいのでは?」

「周りには誰もいないし、いいんじゃない?」

「ふふっ。やっぱり、2人はそう言うと思ったよ」


 輪廻は苦笑した。ここなら目撃者はキングゴブリン達しかいない。なら、答えは決まっている。




 輪廻は冒険者の元に行く。冒険者達がこっちに気付いたのか、声を上げていた。




「……はぁ? 何故、子供とメイドがぁ?」

「誰でもいいから、手伝って!! 魔力が無くなりそうなの!!」

「助けてくれ!」


 やはり、あの戦い方では最後まで持たないようで、こっちに助けを求めていた。

 輪廻は冒険者達の助けを受け入れるように、冒険者の元に行く。ただ、紅姫を持ったままでだ…………






「”居絶”」






 輪廻は紅姫を腰に構えるようにし、怪我人以外の冒険者を五メートル以内に入れてから、居合のように横へ斬った。

 紅姫は、五メートルの長さになる魔力の刃を伸ばし、冒険者を上半身と下半身を分けたのだった。




「はぁ……!?」

「な、なんで……!?」


 味方だと思っていた少年に斬られて、信じられないような顔を向けていた。

 何人かは即死したが、まだ生きている人もいた。ただ、身体が半分になっているため、時間の問題だが…………




「ただ、足手まといだったから死んで貰ったの」


 輪廻はまだ生きている人に答えてあげる。そして、まだ生きている人にトドメを刺してあげる。




「い、痛い……助けて……」

「ゆ、許さねぇぞ……」

「うん、許されなくてもいいよ。俺は人間も魔族も同じだと思っている。何せ、どちらも生き物だから当たり前だけどね。敵だと判断したら殺すし、生きるために必要なら無害の人間でも殺すよ」


 そう、テミアの身体を手に入れるために1人の少女を生贄にしたように…………

 輪廻は軽く教えてやってから、次々と額に魔力の刃で突いていく。その様子にキングゴブリン達は唖然として、進撃が止まっていた。




「おや、攻めて来ないなんて、律儀な魔物だったっけ?」

「いえ、人間が人間を殺していたことに驚いただけかと」

「まぁ、向こうの仲間が現れたと思ったら味方に殺されているんだから、驚いても仕方がないと思うよ?」


 陽気に話している3人を見て、キングゴブリンはハッと気付いて、命令を出していた。




「ぎが、こ、ころせぇぇ」


 綺麗な言葉ではないが、確かにキングゴブリンが言葉を話したのが聞こえた。




「あれ、あのキングゴブリンは魔人なの?」

「……いえ、普通のキングゴブリンは魔物扱いですが、あれは魔人なりかけですね」


 テミアが説明してくれた。あのように魔物から魔人になることはあるが、それは希少なことだと。殆どの魔人は、生まれから魔人というのが多い。

 目の前のキングゴブリンは魔人側では『魔人なりかけ』と言い、人間側では『変異魔物』と呼ばれている。魔物なのに、言葉を話すから、普通の魔物より強いと警戒されているのだ。




「成る程ね。変異魔物の方が言いやすいから変異魔物と呼ぶね。キングゴブリンは変異魔物だから、あれだけのゴブリン達を従えるんだね」

「はい。変異魔物の魔物は普通の魔物より強いですが、魔人には届きませんね」


 テミアが先に出て、右翼に展開するゴブリン達を大包丁剣で木の葉のように吹き飛ばす。




「私も何かしないとね。”魔炎弾”!」


 テミアの反対側になる左翼に向けて”魔炎弾”を放ち、爆発と熱でゴブリン達は身体をバラバラになったり、酷い火傷でどんどんと倒れていく。




「さて、中央は俺の獲物になるか。”居絶”」


 また居合の構えで、五メートル内に入ったゴブリンを切り落とす。

 輪廻が持つ紅姫は、前に色々と試して、わかったことがある。


 この紅姫をテミアとシエルに使わせてみたが、使えたのはテミアだけで、シエルは使えなかった。これで何故、魔力を込めるだけで魔力の刃を造れる優れた魔剣が魔剣だと認識されなかったのかわかった。


 この紅姫を使うのに、条件があるのだ。輪廻とテミアに使えて、シエルは使えないのか。

 それはあのスキルが関わっていており、そのスキルとは、”魔力操作”のことだ。

 このスキルは2人が持っていて、シエルは持っていない。だから、シエルは紅姫を使えなかったのだ。


 ”魔力操作”はどれくらいの人が持っているのかわからないが、”魔力操作”を持っていなかったら紅姫を扱えないのだろう。


 輪廻はその紅姫でゴブリン達を切り伏せていく。




(冒険者を殺したお陰で、レベルもステータスも上がったし、新しい称号を二つも手に入れたしな。攻めてきたキングゴブリン様々だな〜)




 今のステータスはこうなっている。




−−−−−−−−−−−−−−−


崇条輪廻 11歳 男


レベル:21

職業:暗殺者

筋力:860

体力:810

耐性:510

敏捷:1410

魔力:1360

魔耐:610

称号:邪神の加護・暗殺の極み・冷徹の者・魔族を虜にした者・無慈悲なる者・異世界者の覚醒

特異魔法:重力魔法(重壁・重圧・重球)

スキル:暗殺術・隠密・剣術・徒手空拳・身体強化・鑑定・隠蔽・魔力操作・言語理解

契約:テミア(魔族)


−−−−−−−−−−−−−−−




 二つの称号、レベルが上がったお陰なのか、称号の効果がわかるようになった。ただ、『邪神の加護』だけはわからなかったが…………


 まず、『無慈悲なる者』の効果は筋力と魔力のステータスが100ずつ上がる奴だった。

 次に、『異世界者の覚醒』はレベルが20になったことで手に入れた称号だ。この称号の効果は、レベルアップするごとに、ステータスに10ずつ追加されるものだった。

 つまり、前は20〜50ずつて上がっていたが、今は30〜60も上がっているのがわかった。この称号は、異世界者がレベル20になれば、誰でも取得出来るみたいだ。

 レベルアップするごとに10ずつプラスされるならば、長い目で見れば『ゼアス』の人と比べると差が大きくなるのはわかるだろう。


 このような称号を手に入れたのもあり、ご機嫌だった。だが、レベルが上がりにくくなっている。

 レベルも結構上がったから、ゴブリン程度では経験値が足りないのは仕方がないだろう。




「ゴミ共、消えろ!!」

「穿て! 穴だらけになっちゃえ!」


 テミアはいつも通りに大包丁剣を振り回すだけ。ゴブリン程度で、瘴気はいらないようだ。

 シエルは”魔矢”でゴブリンを貫いていく。ゴブリンは角兎と変わらない耐性しかないから、身体に穴が空いていく。

 輪廻も負けずに、紅姫で片付けていく。紅姫での攻撃は魔力消費が少ない。

 五メートル内に入ってきたゴブリンを斬る、それだけの作業を続けてゴブリン達を減らしていく。




「それにしても、ゴブリンは突撃しかしてこないんだよな。まぁ、こっちは楽だからいいんだけど」

「ゴブリンは魔物の中で馬鹿ですから。本能のままに殺す、犯す、食べる、盗むしか出来ないのです」

「私もそう聞いたことがあるなー。ゴブリンからホブゴブリンになったらようやく理性が生まれるような存在らしいよ」


 魔物に、進化があるのは知っている。ゴブリンの場合は、ゴブリン→ホブゴブリン→キングゴブリンになるが、魔法を使う才能があれば、ホブゴブリンからメイジゴブリンになるのもあるが、それらは全てが解明されているわけでもない。






 少し、時間が経つとゴブリンの死体の山が出来ていた。残ったのはキングゴブリン1体とホブゴブリン10体だけだ。




「2人はホブゴブリンを相手にしておいて。俺はボスをやるから」

「畏まりました」

「了解だよ〜」


 輪廻とテミアはまだ余裕があり、シエルに少し疲れが見えるが、テミアと一緒なら大丈夫だと判断した。

 2人がキングゴブリンからホブゴブリンを離し、輪廻はキングゴブリンと相対する。キングゴブリンの得物は剣と盾で、少しボロボロだが、鎧を着ていた。ステータスは、平均800ぐらいで、普通の魔物より結構高かった。




「先手を貰うぞ」


 先手必勝というように、紅姫を振るう輪廻だったが…………




「ギィッ!」


 なんと盾で防いだのだ。それによって、キングゴブリンは無傷。




(ほぅ、ゴブリンとの戦いを見て、学んだってわけか?)


 キングゴブリンは紅姫が魔力によって刃を伸ばせることをわかっている。あれだけ見せたのだから、当たり前なのだが。




「少しは楽しめそうだな」




 輪廻はようやく強そうな敵に出会えて、口を歪めて楽しそうに紅姫を構える。







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