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第二十一話 秘密



 朝、食堂ではシエルが1人で座っていて、2人を待っている。その2人が階段から降りて来るのが見えて、挨拶をしようと思ったら…………






「なんで、メイドの脚が生まれたばかりの鹿みたいにぶるぶるしているの……?」


 そう、テミアは壁に寄り掛かりながら階段を降りて来ているのだ。ただ、テミアの顔はツヤツヤしており、笑顔だった。




「年増エルフは黙りなさい。御主人様が凄くて私がまだまだだっただけ………………、凄かった……」


 テミアはシエルの顔を見た瞬間に、キッと睨むが、夜のことを思い出したのか、だんだんと顔が蕩けていた。




「少年、そのメイドはどうしたの……?」

「さぁ?」


 輪廻は惚ける。間違いなく夜のせいなのはわかっているが、そこまで説明する必要はない。

 テミアをこんなことにした本人である輪廻はケロッとしていて、いつもの調子だった。

 言っておくが、輪廻も初めてだったのだ。だが、輪廻の精力は普通より桁外れで、知識と技術は夜行から教え込まれたことがあり、テミアをこんなことにすることが出来たのだ。




「あの時の言葉はそういうことだったのですね……」


 テミアが言うあの時の言葉とは、「覚悟をしとけ」であり、テミアの膝が笑うまで床の勝負をさせられた。

 そして、輪廻はまだ余裕があり、テミアは見た通り、輪廻に負けたのだった。

 床の勝負で勝ち負けがあるかは疑問だが…………




「そう? なら、いいけど……」

「おーい、犬耳の店員、朝ご飯を2人分……シエルは?」

「いえ、食べ終わったので紅茶だけを」


 シエルはカップを見せる。それでわかったのか、輪廻は2人分の食事とシエルのおかわりを頼んだ。




「テミア、食べ終わったらギルドへ行くけど、大丈夫?」

「は、はい。あと10……いえ、5分休めば大丈夫です!」

「そうか、無理だけするなよ?」

「さすが、御主人様です……、夜の王に相応しい方です……」


 ブッと吹き出すような音が後ろから聞こえ、後ろを見ると食事を持ってきた犬耳の店員がいた。

 テミアが言っていた意味を理解したのか顔を赤くしていた。




「あ、あのぉぉぉ! 食事ですぅっ!!」


 犬耳の店員は食事を置いたらすぐに裏へ逃げた。犬耳の店員はうぶであることが証明された瞬間だった。




「まぁいいや。食べるか」

「……成る程。そういうことだったのね。メイドは慣れているかと思っていたけど、違っていたのね」

「当たり前です、貴女のようなビッチではありません。私の身体は御主人様のモノです」

「私はビッチじゃない!! 経験はまだ……っ!?」


 シエルはしまった! と言うように自分で口を塞ぐが、もう遅かった。

 テミアの声も大きかったのもあり、周りにも、二人の話は聞こえていた。顔を赤くする者、輪廻に嫉妬を向ける者、聞いてないフリをする者がいて、シエルは顔を赤くして俯いてしまう。


 さらに、テミアはトドメを刺す。




「その歳でまだ処女だったのですか、大丈夫です。誰かいつか貰ってくれる者がいるかと思いますので、安心してビッチになりなさいな」

「全く慰めてないよね!? 最後にビッチと言っているし!!」


 珍しく慰めていると思えば、さっきより大きな声でシエルが処女であることを発表し、最後はテミアの毒舌で締めた。


 それを近くで聞いていた輪廻は食事しながら、さすがテミアらしいなぁと考えていた。






−−−−−−−−−−−−−−−






 食事を終えた輪廻は、騒がしくなった食堂から2人を連れてギルドに向かった。テミアはいつも通り、シエルは顔を赤くして俯いていたから昨日より静かだった。

 だが、その静穏はギルドに着くまでだった。




「ん? やけに騒がしいな」


 いつも騒がしいギルドだが、今日はさらに騒がしくて、周りの人が慌てているようだった。




「何かあったのかな?」


 騒がしいことに気付いたシエルは、受付嬢の元に向かって聞いてみる。




「あ、シエル様! 実は…………」

「え、本当に!?」


 受付嬢の話を聞いてシエルは驚いて、顔が笑顔になっていく。輪廻はその顔を見て、危険が迫ってきているのと違うのは理解出来た。




「何、笑顔になっているんだ?」

「キモいです。さすが、処女ですね」

「うぉい! 処女は関係ないでしょ!?」


 平常運転のテミアにツッコミを入れるシエル。だが、シエルは笑顔のままだった。






「はっ、そんな場合じゃないわよ! 黄金の亀、二つ名は『エスケープコータス』であり、ここの近くで見かけたという情報があったのよ!!」

「エスケープコータス?」


 輪廻はエスケープコータスのことを知らないから、詳しく聞いてみた。

 大きさは50センチで小さな亀だが、甲羅が黄金に輝いており、逃げ足が凄く速い亀らしい。数が少なくてなかなか見付からない亀で希少度が高い。

 亀なのに、逃げ足が速いのは何故だ? と思ったが、ここは異世界だからと無理矢理、納得しておいた。


 もし、倒して1体丸ごと持ってくると、白銀貨1枚貰えると。エスケープコータスは黄金の甲羅よりも珍しい物が内部にあり、とても高いのだ。

 白銀貨を日本のお金に変えると、百万円になる。




「成る程、それで騒がしかったわけか」

「探しにいきましょう!!」

「白銀貨1枚か……」


 お金はいくらあっても困らないし、こういうイベントを楽しむのもいいだろうと、輪廻達も亀探しをすることに。




「まぁ、今日一日を亀探しに当ててもいいが、どうやって探すんだ?」


 近くに現れたと言っても情報が少な過ぎる。ラディソム国の周辺を全て捜すなんて無理だ。

 さらに、大きさが50センチしかない小さな亀を捜し回るだけでは見付かるとは思えないので、シエルに何か策があるのか聞いてみるが…………




「策なんてないっ! 脚で捜し回るだけ!」

「ノープランで、捜そうと思えたな……」


 テンションが高いままなのか、笑顔で策はないと言ってくる。輪廻とテミアはそんなシエルに呆れた。




「貴女は馬鹿なのですか? 頭が空っぽで、よく今日まで生きていましたね? 赤ん坊でも少しは考えますよ。あ、貴女は元から赤ん坊以下でしたね。処女ですし」

「また、処女と! そ、そこまで言うならメイドに何か策があるの!?」

「ありますが、それは御主人様の許可が必要になります」

「あー、あれならただ、捜すよりはマシだろうな」


 テミアの策とは、瘴気を広げて歩き回れば、見付かる可能性が少しは上がるが、人の前では使えないのだ。森の中で捜すから使っても問題はないが、今はシエルがいるのだ。




(うーん、探索用の瘴気は目に見えないほどに小さいが、始めだけは瘴気をそのまま出してから散らばらせないと駄目なんだよな……)


 つまり、始めだけは目に見える瘴気を出さないと駄目なのだ。それぐらいは何とか出来ないのか、前に聞いたが無理だったのだ。


 ならば、テミアが魔族であることをシエルにばらすか? と考える。もし、シエルが何かしてきても殺せば問題はない。

 少し考えて、もうシエルに教えることにした。




「……わかった。俺達の秘密を教えてやるから場所を変えるぞ」

「え、いいの?」

「ああ。テミアの策は秘密に繋がるから、ばらした方が楽だからな」


 そう言って、人気が少ない森に向かう輪廻達。









 森に着いた輪廻は周りを見て、誰もいないのを確認してから話を始める。




「さて、最後の警告だ。秘密を知りたいなら覚悟を決めろ。だが、聞かないと言うならパーティは解除して、もう組まないと誓え。そのどちらを選ぶ?」

「え、えっ? 少年達の秘密って、それ程に凄いの?」

「ああ。もしかしたら、お前が敵に回るかもな。その時は覚悟しとけ。で、聞くか?」


 その言葉と殺気に、シエルは本気だと気付いた。もし一つでも誤れば、シエルの命日が今日になることにも…………






「……わかった。聞くよ」

「よし、教えてやるよ」




 輪廻が異世界から召喚された者で、『邪神の加護』を持っている。テミアは輪廻が魔界から召喚した魔人の病魔であることも。

 病魔の器が必要で、人間を犠牲にしたことも話した。






「俺達の秘密はそんな所だな」

「………………」


 やはり、シエルは驚いていた。輪廻は驚いても当たり前だなと考えていた。どう動くか警戒していたら、シエルが動いた。




(やはり、敵対するかっ!)


 身体が口より先に動いていたなら、輪廻達を殺そうとすると予想しており、ナイフを手に持つが…………











「じ、邪神の使徒様! ほ、本当に『邪神の加護』をお持ちになっているのですか!?」




 そう言って、輪廻の足元に跪ずいていた。思っていなかった展開に輪廻とテミアは武器を手にして固まっていた。




「……へ?」

「この展開は何でしょう……?」


 跪ずいたまま動かないシエルを前に困ってしまう二人。と、シエルが話を始めていた。




「いえ、確認する必要はありませんでしたね。魔族が隣にいることで、少年が普通ではないこと。私も長年、秘密にしてきたことをお見せになりましょう」


 シエルが”偽造”のスキルを解除すると、肌色が変わっていった。




「はぁっ!?」

「肌が薄暗い色……?」




 目の前にいたのはエルフではなく、薄暗い色の肌をしていて、魔族側と認定されている種族。






「はい。私はダークエルフと言う種族です」






 まさか、シエルの種族がエルフではなく、魔族側になるダークエルフの方だったとは思わなかったのだ。







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