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第二百二話 様々な世界その2




 森の世界


 そこには、シエルがいた。深き森の中で、狩人のように獲物を狩っていく…………ということにはならなかった。


「敵が見えない……うわっ!?」


 シエルの腕に光の矢がかすった。そう、現在の獲物はシエルで敵の居場所を掴めないまま、攻撃から逃げ続けるしか出来なかった。


(この森はどんな成長をしたのですか!? 迷いの森よりも性質たちが悪過ぎる!!)


 故郷であるダークエルフも村を隠してくれた迷いの森よりも、性質が悪いとシエルは考えていた。迷いの森はエルフやダークエルフ等の特定の種族以外を迷わせる効果があった。だが、ここはそれ以上。ここで生まれた者にしか効果を発揮しないようなずるい仕様になっていた。


「さてさて、どうしましたか? 黒エロフ?」

「さっきから、黒エルフと五月蝿うるさいですよ!? きゃあああああぁぁぁぁっ!?」


 声が大きすぎた為、シエルの居場所がバレバレだと言うように、大量の矢が降り注いできた。必死に避けるシエルだが、ある程度の高いステータスを持っていても、全てを避けきることは出来ていなかった。致命傷を受けてはいないが、毒を塗っている可能性も捨てきれないので、収納の指輪から毒消しの薬を一気に飲んでいく。


「五月蝿いのは貴方の方でしょう?」

「くっ! 本当に、メイドの母親だわ……貴方は」

「さっさと反撃をしなさいよ」

「反撃が出来ていたら、とっくにしているよ!」


 先程の反省をして、声を小さくして口答えをするシエル。星屑があれば、反撃は避けながらでも出来るが、相手が持つスキルがそうさせてくれないのだ。


「ずるいよ、遠距離攻撃を反射するスキルがあるのは!」

「あら、そのスキルは範囲が小さいので、全ての遠距離攻撃を反射は出来ていないのですが?」

「そのスキルを上手く使っている相手が強いのはわかっているけどっ!!」


 まだ姿が見えていない敵は、ベルゼミアが言っているように、自分へ向かっている遠距離攻撃を全て反射している訳でもない。だが、その敵はそのスキルを上手く使って、自分に当たる部分だけを前方だけ展開しているだけで、シエルの反撃を跳ね返しているのだ。

 その反射の盾を展開しているのは、前方だけなのでその隙を付けばいいのだが――――


「また、森が変わった!!」

「貴方が鈍いからでしょう」

「こんな場所で敵を早く探し出し、反撃をされないように攻撃をしろと言うのは無理難題に近いよ!?」


 遠距離攻撃を反射されるなら、接近戦で倒せばいいと考えていたが、それは森が邪魔をしてしまう。この森は一定時間を過ぎると、全ての木の位置がランダムに変わってしまう性質を持っていた。更に、この森で生まれた者以外は方向を狂わせてしまう幻覚を生み出す。敵は毎回、この性質を利用して、木の上に乗ったまま自分自身も転移したように、位置を変えてしまう。

 だから、シエルは毎回、敵の居場所を探すことから始まることになる。だが、先に敵がこっちを見つけてしまうので、今はまだ敵の姿さえも拝めてはいない。先にこっちが見つけて、接近戦を挑まなければならないのに、この森に邪魔されるので、成果は全く出せないでいた。

 この森を火の矢で燃やしていくことも考えたが、何故か燃えない。少しの間は燃やせても、すぐ消えてしまうのだ。木の上を飛び越えて、全方向へ撃ち出すことも考えたが、それで倒せる敵ではない可能性が高いし、魔力が勿体無いので試すことも出来なかった。


「やれやれ、この調子では、一週間でクリアは出来ないですよ? 考えなさい。そして、気付きなさい」

「何によ!?」

「貴方の可能性にですよ。ヒントはこれまでの旅にあったのですよ?」

「ヒントが……?」


 ベルゼミアは今までしてきた旅の中に、シエルの可能性についてのヒントがあったことをシエルに教えた。だが、シエルはまだそれに気付かない。




「さぁ、気付くのでしょうか?」




―――――――――――――――――――




 魔界


 テミアはベルゼミアから持ってきなさいと言われた、魔物の素材を集めに行っていた。周りを囲む門から現れる敵を倒しながら。

 現れる魔物は殆どがレベル200を超えるような化物だらけだったが、魔王になったテミアには倒せない敵ではなかった。


「この程度で、私を止められるとは思わないで!!」

「流石、私の娘ね。自分の力を理解しているようですね」

「当たり前です。御主人様と一緒に生き続ける為には、更に強くなっていなければなりませんからね!!」


 輪廻のことを思い浮かべると、更に魔物を倒すペースが上がっていく。これが恋の底力だと言うように。


「うふふふっ、いい男を見つけたのね。でも、これから戦う敵は、その程度では倒すには厳しいかもね」

「それでも、越えて見せます!!」


 この戦いはテミアのレベル上げが目的なので、長々とテミアより高いレベルを持つ魔物を送り続ければいいだけ。ある意味、何かに気付かなければ、強くなれない他の人よりは楽かもしれない。万を越える魔物をずっと相手にしなければならないことを除けばだが。


「着きましたね。今は魔物の召喚を止めますが、目の前にいる魔物は貴方よりも格上。さぁ、倒してみなさい」


 テミアの前に現れたのは、山をも越える体を持つ魔物。聖獣である青龍王には劣るが、『ゼアス』の世界にいるSSSランクの魔物とは比べにもならない、伝説の魔物と呼ばれている。




 その名は…………『ベビモス』。




「さぁ、倒してみなさい」

「言われなくても!!」






――――――――――――――――――



 闇の世界


 ここは何も無い、闇だけの世界。そこに送られた輪廻だったが――――




「その程度ですか? 貴方は気付いていない」

「がはぁっ、クソが……」


 輪廻は倒れていて、ベルゼミアに腹を踏まれている状態だった。ゼアスでは、頂点にいると過言でもない敵、青龍王にもいい戦いを見せた輪廻は間違いなく、最強に近かった。だが、その輪廻はベルゼミアを相手に地に伏せていた。




「貴方は、気付いていない。貴方の本質を理解していない。今の貴方では、私に勝てない。なら、どうすればいいか考えれば、わかるでしょう?」




 ベルゼミアは輪廻にも皆と同じように、ヒントを送っていた。それに気付くかは、輪廻次第だ。




「さぁ、気付くのでしょうか?」









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