第二百話 戦いは終わり
お久しぶりです。
短いですが、続きをどうぞ。
彼方の能力によって、追い詰められたクレアだったが、クレアの笑みは消えなかった。クレアの口から発された言葉、『私の世界』と同時に、魔力が高まるのだったが――――
「ここまでにしろ」
その声と一本の槍が結界を突き破って、啓二達とクレアの間に刺さった。
「何が!?」
「ケイたん、上だよ!」
「あの姿は……玲子と一緒にいた銀色の?」
結界を突き破り、現れたのは銀色の鎧を着たアルトだった。そのアルトが何故、ここへ来たのか? 一体、どうやってクレアにも破れなかった結界をあっさりと破壊できたのか疑問が浮かぶが――――先に答えたのは、邪魔をされたクレアだった。
「結界を破れる槍、『アルカルト』を持ち出して、邪魔をするのはどういう了見?」
「ここで戦う理由が無くなったからだ」
アルトの言葉に眉を潜めるクレアだったが、アルトの後ろへ眼をやると、納得したような表情を浮かべていた。
「あぁ、成程。成功したのね」
「そうだ。御主人様は完全となった」
周りにいた人もクレアが見た視線の先へ向けると――――
「な、なんだ、あの化物は……」
「つ、爪? 爪だけであれだけデカイなんて!!」
「あわわわっ……」
「蟲王と同じ……っ!?」
アルトの後ろには、時空を切り裂いたような傷があり、そこから爪だけが見えていた。アルトはその傷から現れ、結界を突き破っていたのを想像できる。
「確かに、ここでこれ以上戦う意味はないわね。時空を全て支配できるようになったのなら、転移の魔道具を作った人を殺す意味も無くなるわね」
「時空を全て支配だと? お前は何を言っている!!」
「あら、教えてあげる義務はないのだけれども?」
「……なら、無理矢理に聞きだしてやる!」
クレアは転移の魔道具を作った人を殺すようにと玲子から指令を受けていた。だが、ここにいる意味が無くなったと言っていた。つまり、逃げ出すと言っているようなものだ。ここでクレアを逃がしたくない啓二は飛び出していくが――――
「ガドゥス……」
アルトが後ろにいる化物の名を呼ぶと、アルトとクレアを透明な球体で包み込み始めた。
「うらぁぁぁぁぁ!! ッ、壊れないだと!?」
「無駄よ。この球体は『超越者』でもないと壊せないわよ」
「ちっ!! 彼方! 壊せないか!?」
「だ、駄目です。再現した力は『超越者』には届いていません!!」
再現した彼方ならと思ったが、再現したクレアの力はまだ『超越者』には届いていなかった。だから、彼方でも壊せない。周りにいた人もアルトへ魔法を叩き込んでいたが、全くの無傷で球体にも傷1つも付いた様子は無かった。
「そうだ! さっき使おうとしていた、世界のこと! 彼方が使えばどうかになるんじゃないの!?」
クレアが使おうとしていた魔法なら、彼方にも使える。その切り札でなんとか出来ないかと期待する裕美。しかし……
「こ、この魔法は、発動出来るけど! 使ったら、私達が弱く――ッ!?」
「彼方!?」
「詳細を言わせないわよ?」
彼方はクレアが持っていたけん玉、切っ先の方を伸ばして腹に穴を空けられて、言葉を遮られた。ガドゥスが作りだした球体は外から攻撃を通さないが、中からは通せるようだった。彼方は急に現れたアルトとガドゥスに気を取られた為、意識に隙が出来てしまい、腹に攻撃を受けてしまった。
「貴様!!」
「無駄わよ」
怒り狂う啓二だが、攻撃を加えてもクレアを守る球体はビクともしない。
「行くぞ。ガドゥス!」
ガドゥスの爪が動き始めたと思えば、敵が包んでいる球体が浮き始めるのではないか。
「クソッ! 逃げるつもりかぁぁぁぁぁ!!」
「当たり前よ。ここにいる理由がもう無くなったもの。それよりも、あの子を放ってもいいのかしら?」
「彼方!? 彼方!!」
「ケイたん! 彼方が眼を覚めない!!」
「何だと!? 何をしやがった!!」
「さぁね」
攻撃を食らった彼方は先生が作った薬によって、腹の傷は塞がっているのだが、何故か眼を覚めないのだ。追撃をしたい啓二だが、攻撃は通らず、空に浮いている敵を追うことも出来ないまま、見るしか出来ないでいた。
「ばいばい、戦いは少し楽しめたわよ。次は本気で相手をしてあげるわね――――」
クレアはそう残し、ガドゥスが作りだした空間の割れ目へ消えていった。その割れ目も修復していって、何も無い青空へ戻っていったが、残った者の表情は暗いままだった――――




