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第百九十七話 襲撃者の招待

はい、続きをどうぞ。




 襲撃者は、おかしいと感じていた。四つ目の転移の魔道具を壊した後、ここまでが順調過ぎることに、おかしいと思った次第だった。

 しかし、玲子からの指令はこれからのことを考えると、破壊して置かなければ、こっちが不利になってしまう可能性が出てくるのだから。ティミネス王国にある最後の魔道具を壊し、あと1つの件を片付ける為に、襲撃者は既にティミネス王国の街中へ入り込んでいた。


「ここまでは入るまでが簡単だったけど、王城に入るのが大変そう……」


 ティミネス王国の街中までなら、簡単に入ることは出来るが、ここからが問題だった。襲撃者は出来れば、戦闘の回数を増やしたくはなかったので、街への被害をあまり出さないように気を付けていた。

 まず、自分の立場を使って入れるか試すことにした。手には冒険者カードを持って、城門前に立つ兵士へ話しかける。


「あの、ギルド長からの依頼でここまで来ました。入れますか?」

「む、見せてみろ……あ、貴方が! あのSSSランクの!?」

「ええ、話は通っていますか?」

「はい、聞いております。では、着いて頂けますか?」


 あっさりと入れるようだ。しかし、襲撃者はやはり、おかしいと感じていた。本来なら、依頼であっても国王がいる王城の中へあっさりと入れるのは珍しい事だ。最初に冒険者カード、依頼書を見せてから、自分の武器を預かってもらう。そして、この冒険者カードと依頼書が本物であるか、冒険者ギルドへ連絡が行く。そして、ようやく中へ入れて、少し別の部屋で待たされる。ここで国王へ話が行き、会うか会わないか決められる。国王が会わないと決められてしまえば、別の部屋で宰相と話をすることになり、会う場合は王の間へ案内して貰えるのだ。

 しかし、今は武器を持ったまま、ぽんぽんと音を立てている。何が起こっているのかと考えていたら、案内して貰っている兵士から話し掛けられた。


「そういえば、依頼書では転移の魔道具の護衛でしたね? 国王はまだ準備中なので、先に召喚者達に会ってみますか?」

「え、召喚者に会えるの? 友達になった子もいるので、会えるのは嬉しいのですが……」

「そうですね。転移の魔道具を作った召喚者から、依頼について少し話をしたいと言っていたので、案内致しますね」

「……その話は国王がいる場所でまとめて話した方が良いのでは?」

「普通なら、そうですが……転移の魔道具を作られた召喚者は少し変わっていて、人が沢山いる広い場所を好まないので」

「そうでしたか。わかりました」


 襲撃者はまだ警戒を解けないが、受け入れる事に決めた。もしかしたら、先にもう1つの件を片付けられるかもしれないと考えたからだ。どっちにしろ、魔道具を破壊するよりそっちの方が話は早いのだから。

 待機部屋へ向かうのを止め、方向転換して別の道を歩いていく。そして、兵士に案内された場所は――――







「えっ、ここは兵士の訓練場じゃないの?」


 案内された場所は、召喚者達もよく使う訓練場だった。転移の魔道具を作った召喚者へ会うのに、何故、こんな所に――――と声を出すところに、様々な魔法の雨が降り注いだ。




だが、襲撃者はあっさりと降り注いだ魔法を避け、手に持っていた物で消し飛ばしていた。




「無粋な挨拶ね?」

「敵にはその挨拶が相応しいだろ?」


 正面には啓二のパーティ、絢のパーティ、ゲイルが立ち、訓練場を囲む塀の上には魔法を放った召喚者、兵士がいた。何故か、啓二の後ろに転移の魔道具を作った本人、彼方が隠れていた。


「敵ね、つい最近では一緒に蟲王を倒した仲じゃない?」

「ふん、それこそが、マッチポンプだったろ? こっちの信頼を得る為に。…………あの野郎にその可能性へ気付かされるとは思わなかったがな」

「なぁに?」


 襲撃者はまだ笑顔でこっちの様子を窺っていた。まるで囲まれていても、余裕でいるような態度だった。言い逃れが出来ると思っているのからか?




「もういいだろ? 襲撃者の正体はクレア・トーラス・・・・・・・・。お前だろ?」

「ふふっ……」


 手にはけん玉を持って、ポンポンと音を立てている。啓二達はクレアこそが、襲撃者だと判断していた。自分達が仕掛けた罠の為に、獣人の街にある残った魔道具はわざと見逃していた。もちろん、被害がゼロになるようにと、人気のない場所へ置いていた。そのせいで、襲撃者はおかしいと感じたのだろう。だが、おかしいと思っても指令を途中で終わらせるにはいかなかった、襲撃者は最後の魔道具を破壊する為に、ここへ来ていた。啓二達はここへ来るまでは読んでいたが、犯人像はわからないままだった。しかし、ある物を作ることで犯人を絞ることにした。


「本来なら、わざと見逃した魔道具の近くで見張るつもりだったが、もし相手の索敵範囲が広かったら、その人が殺されるかもしれない。だから、その案は止めて、ここに誘い込むことにした。お前が持っている、依頼書にちょっとした細工をして置いたんだよ」

「へぇ……」

「こっちには思考を読むスキルを持った仲間がいるからな。依頼書にはそのスキルを付加させた小さな部品を紛れ込ませている。小さすぎたから、魔力も余り感じなかっただろ?」

「そのお陰で、依頼書を持っている間に思考を読み取れたの。そうね?」


 堀の上に立つ1人が裕美の言葉に頷く。


「獣人の街にあった魔道具はあっさりと破壊できて、おかしいと思っただろ?」

「それで、思考を読み取らせる為に……ふぅ、精神系のスキルは実証が難しいのだけど、いいわ。認めてあげるわ」


 クレアはあっさりと認めた。言い逃れをしようとしても、目の前にいる啓二達はクレアを確実に犯人だと判断しており、逃がすつもりはなかった。皆が囲んでいるのがその証拠だ。


「あっさりと認めてくれるのはありがたいな。で、投降するか?」

「しないわね」

「クレアさん! どうしてですか!? 悪事に手を染めるなんて、アンタらしくもない!」

「ゲイル、久しぶりね。でも、まだ子供ね。私にはやらなければならないことがあるの。だから、邪魔をするのはオススメしないわよ」


 クレアは既に戦う気があり、ゲイルからの説得も意味を為さなかった。話すこともないと言うように、クレアは自分の周りに“フリスビー”を発動して、自分を囲む人達へ攻撃を加えようとしたが――――




「あら?」


 フリスビーは人へ届く前、何かにぶつかったような感触を残して爆発を起こした。クレアは爆発した瞬間を見て、自分達を閉じ込めるような物があるとすぐわかった。


「無駄だ。お前の敵は正面にいるぞ?」

「もしかして、結界かしら? でもね、その程度の人数で私相手に戦おうとするなんて、舐めているとしか思えないわね」

「舐めていないさ。この人数だけで充分と、ケイたんは判断したんだよ~」

「ふーん」


 クレアはSSSランクの中でも一番の実力者であり、『最強』の二つ名を持っているのだ。なのに、啓二はこの人数だけで勝てると判断したのだ。実際に戦うのは、結界の中にいる人だけで塀の上に立っている者の攻撃はもう届くことは無い。


「さて、お前を捕まえて、吐いてもらうぞ? 『ロスディ・クリア』について、知っていることの全てをな!!」

「やってみなさい」


 今ここ、兵士の訓練場で襲撃者となるクレア・トーラスを捕まえようと、動き出したのだった――――








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