第百九十六話 襲撃者の正体
はい、続きをどうぞ!
謎の襲撃者に召喚者が設置した転移の魔道具を壊された件にて、王の間で様々な人が集まっていた。その中心にいるのが、啓二達だった。国王と王女もいるが、戦いに加わる事もできないので、啓二達が中心になって、召喚者と兵士で上位に立つ人が集まっていた。
「昨日だけでいくつ壊された?」
「2つ。さっき、1つ壊されたと連絡があったから、残りは獣人の国、温泉がある所だけ」
「あと、ここのを含めれば、2つ。ケイたん、まずいね?」
「くっ、襲撃者の正体はなんだ!?」
今まで設置した転移の魔道具はティミネス王国にあるのを含めれば、5つあったのだが、謎の襲撃者にもう3つも壊されていた。何故、襲撃者が謎とされているのかは、3つも壊されていても未だにも正体が知られていないことだ。それに、その襲撃者は何故かピンポイントに転移の魔道具を壊しに来ており、被害が考えていたよりも少ないことにあることだ。
「まるで、魔道具の位置がわかっているような動きだよね?」
「玲子本人が動いている可能性は――」
「魔道具が出来たのは玲子が出て行ってからだったから、設置した場所までは知らない筈だよー?」
「あと、考えられるのは、裏切り者がいることか?」
「っ!」
兵士の副隊長をしているナザドがそう発した瞬間に、空気が固まるのを感じた。『裏切り者』、その可能性も考えなかった訳でもなかったが、玲子の例もある。クラスメイトであっても、自分の命惜しさで裏切る可能性も捨てきれない。
「ナザドさん! 皆が不安になるようなことを言わないで下さい!」
「いえ、ここは言うべきでしょう。現に裏切り者は出ていたのでしょう? 他に裏切り者がいるなら、すぐ炙り出して置かないと、更に危険になりますよ」
「で、でも……」
菊江先生は生徒達が不安になるようなことを言って欲しくはなかったが、実際に玲子と言う世界の敵となって、クラスメイトの中では裏切り者になっている。今回の件で他に裏切り者がいる可能性があるから、皆を疑うべきだと! ナザドはそう言っているのだ。
「一番怪しいのは、味方なのかわからないあの子供です。魔人を従えているところから、敵ではないとは言い切れないと思いますが――――」
「おい? 何を言っていやがる?」
ここにいない輪廻のことを裏切り者の可能性が大だと言い放つナザドに切れそうになる啓二。啓二はあの輪廻が玲子と組んでいるとは思ってはいない。何回もこちらの助けになっているのに、目の前にいる男は何を言っているんだと思うのだった。
「マッチポップをして、こちらの信頼を集めようとすることもしていたのでは?」
「黙れ! お前はその目で何を見た!? 俺達は間違いなく、輪廻達に助けられなかったら、死んでいた筈だ!! それを、マッチポップと? ふざけんな!!」
啓二は一瞬でナザドの前へ詰め寄り、首を掴んでいた。
「っ! 何をする!!」
王国へ大量に攻め込んできた魔物から助けて貰わなかったら、戦っている人だけではなく、民も沢山死んでいた筈だ。そして、魔王の幹部が攻めてきた時や蟲王の相手も輪廻達が受け持っていなかったら、大量に死人が出ていた筈だ。なのに、ナザドは人先に裏切り者の第一者を輪廻達に名指ししたことを許せないと思っていた。
「啓二の言う通りよ! 輪廻達がいなかったら、皆は死んでいたのよ! それをわからない大人じゃないでしょ!?」
「そうだ! 俺達は輪廻達がいなかったら、死んでいた!」
「私も感謝しているのよ、それを裏切り者と考えるなんて、どんな頭をしているのよ!!」
「そうだ!」
「この恩知らずが!!」
絢に続いて、他の召喚者達も啓二の肩を持っていた。自分達は間違いなく、輪廻達に生かされたのだから。
「どうせ、お前は魔人がいるから、輪廻も敵だと考えているんだろ!? 前にも闇魔法とか言って、場を狂わせていたな?」
「私はそんなことを――――」
ナザドも言い過ぎたのを理解したのか、冷や汗をかいていた。そのまま、啓二が首の骨を折ってしまいそうな力が入るところだったが――――
「皆、やめい! これ以上に仲間同士で喧嘩をしても意味は無い!!」
「ちっ!」
「ぐぅっ!」
国王の声に啓二はナザドをこのまま殺しても意味は無いと理解し、首から手を離していた。ナザドはごほごほと咳き込んでいるが骨までは折れていないようだ。
「ナザド副隊長、ここから出て、頭を冷やせ。啓二もやり過ぎだが、あの子供達は間違いなく、こちらを助けてもらった。今更、魔人だからと考える前に、何かを考える事があるのだろう?」
「……御意」
それだけ言って、ナザド副隊長は王の間を出て行った。そして、ゲイル隊長が召喚者達に向けて、頭を下げていた。
「すまない。ナザドは本気で輪廻達のことを裏切り者だと思っていない筈だ。ただ、子供の頃に両親が魔人に殺されたのを見ており、まだ恨みが消えていないのだ。だから……」
「言うな。俺達だって、クラスメイトが魔人や玲子に殺されている。だが、恨みだけで動いている場合じゃないのは理解しているし、今は殺された人のことよりも今回のことを考えてくれ。酷いと思うが、全ては生き残る為だ」
「理解している。ただ、兵士達も召喚者に合わせて動くようにするから、頼む」
「ああ。では、今は俺達に裏切り者がいないと考えて、どうすれば襲撃者を捕まえられるか考えて欲しい」
「「「「「「「了解」」」」」」」
皆が揃えて、了承してくれたが、すぐ思いつく物でもないので、しばらくは無言になりかけていたが――――
「おかしいよね。どんな方法かわからないけど、場所を知ったとしても、被害が小さいし、少ないのは」
晴海が手を挙げて、思ったことを言っていた。一番、気になるのは被害が少なかったことにあると。
「確かに……すぐ悪人だとわかったら、街の中で動き回るのに大変なこと筈。だが、街では被害が一箇所だけだったな」
「うん、転移の魔道具が置いてあった場所だけ」
「そういえば、転移の魔道具を知っている人は俺達と他に誰がいた?」
「ギルド長達、置く場所を貸してくれた人、最近、仲良くなったSSSランクの冒険者ぐらいかな?」
「仲良くなったSSSランクの冒険者?」
「あの4人と途中から参戦したあの人~。たまに魔道具の護衛を受け持って貰えると言うことで、ギルド長と相談して教えることにしたらしい」
「そうか」
啓二はこの中に裏切り者がいないと考えるなら、転移の魔道具のことを知っている人のことを聞いて仕方が無いと思ったが、被害が少なかった件から――――
「……罠を掛けてみるか?」




