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第百九十三話 第一の標的

はい、続きをどうぞ!





――セイオリック天聖国



「なんだと!? こっちに人形と竜の群れが向かっているのか!?」

「は、はい! それも数万の数が来ています!!」


 人形と竜の群れが向かっていた街とは、セイオリック天聖国のことだった。そのことが王であるガラードへ情報が伝わり、慌てていた。今のセイオリック天聖国はこの間、魔族との戦争でまだ復興も終わってない状況だった。そんな時に、数万を超える人形と竜が攻め込みに来たのだ。冒険者や召喚者はまだセイオリック天聖国にいるといえ、戦力は向こうの方が上だと、見ただけでわかる。一番の理由は竜が制空権を握っており、その数もAランクの冒険者が数人で一体を倒すことが普通である所を大量に攻め込まれてしまえば、勝ち目は無いと考えられる。


「おやおや、ここは街を捨てて逃げたほうがいいかもしれませんよ?」

「貴様! 黙って、王の間に入ってくるんじゃない!! 今の状況はお前が起こしたことじゃないな!?」

「違います。魔王の部隊には竜は一体もいませんでした。前の戦争で証明されているのでは?」


 情報を伝えに来た冒険者は急に現れた魔人のディオに人形と竜の群れを仕向けたのかと怒鳴るが、ディオは否と答えた。この間の戦争では、竜一体もいなかったのを、ガラード達は確認している。

 もし、竜が魔王の配下にいたなら、戦争で出し惜しみをする理由は無かったので、ディオが言っている事は嘘ではないのは理解できている。しかし、誰が人形と竜の群れを仕向けたのかはわからない。


「まさか、ロスディ・クリアか?」


 今、魔王の配下であったディオ達と休戦しているなら、考えられる敵の組織は、ロスディ・クリアの組織しか考えられない。それに、ロスディ・クリアにはSSSランクの人形遣いと竜使いがいるのを確認している。


「その可能性は高いでしょうね。向かっている敵を私も確認しましたが、正確に人形は三万、竜は一万の数はいました。こっちの戦力を考えれば、さっさと街を捨てて、別の街へ逃げたほうが宜しいかと。ここに着くまでは一日の距離があるので、すぐ決断した方が良いですよ」

「……こっちの戦力はどれぐらいだ?」

「えっと、前回の戦争で出てきた戦力の半分程度です」

「無理だな。皆よ! ここは逃げに徹する!! 向こうの目的はわからんが、ここを目指しているなら、別の街へ逃げても被害は少ないだろう」


 ガラードはすぐ町を捨てると決断した。結界がまだ健在だったら、他の街から援助を待ちながら篭城することも出来たが……


「猶予は1日しかない! すぐ国民へ通達して、別の街へ避難をせよ!!」

「はっ!!」

「ディオ殿、すまないが――――」






 慌てる様子の人間達を見ていたディオはどうやって、あれだけの戦力を集められたのかが不思議で仕方が無かった。人形は材料があれば、出来るかもしれないが、問題は竜の方だ。

 一万の竜が1人の竜使いに従うのかも、疑問だったが、この時代で竜使いとして有名になっているのは、SSSランクになったばかりの『暴竜』だけ。同等の竜使いがいないから、こんなことが出来るか知る術がない。


「あれは偽者? いえ、あの魔力は本物でしたし……」


 斥候として動いていた時、竜の魔力は全てが本物だと教えてくれた。ただの幻覚や案山子みたいな作り物ではないのは自分の眼で確かめてあるので、疑問が膨れ上がるばかりである。

 今の竜使いに聞けないなら、昔に今の状況と似たのがないか、歴史を調べようと思いつつ、避難していく人間に混じって街を出て行く。ディオなら転移が使えるから、変装して人間達に混じる必要はないが、人間とは今は休戦しており、ガラードから密かと護衛を頼まれていたからだ。


(ふふっ、人間から頼みごとをされるのは久しぶりのことなので、請けてしまったが、これが吉と凶と出るか?)


 ディオは微笑みを浮かべつつ、固まって街から出て行く人間に紛れながら、周りにおかしな事や危険な魔物がいないか察知の範囲を広げて調べていく。そこで、妙な反応を1つだけ見つけていた。

 もし、人間を放って転移で何処かへ行っていたなら、見つけられなかったことだ。


「おやおや、これは……あの方のせいでしたか」


 一気に様々な疑問が解消された瞬間だったが、既に街からどんどんと人間が出て行くのを見て、もう遅いと思った。


「全く、騙されました。これは厄介な敵が『ロスディ・クリア』にいるとわかり、被害も僅かで済みそうなのはマシですか」


 ディオは察知の範囲が魔人の中でも桁外れに広く、最大まで広げたのが、幸に現れた。セイオリック天聖国から十キロも離れた先、人形と竜の軍隊が攻めてくる方向の反対側に――――1つの反応があった。




(やれやれ、精霊王ファステア・・・・・・・・の魔法だと、すぐ気付けなかったのは、私の落ち度ですね)












 ディオがいる場所から十キロの先、そこには確かに1つの人影があった。その者こそが、今回の策で中核を為していた。


「ふん、戦わずに逃げるか。どの時代でも人間共は堕落しておるな――――む? なんで、魔人も混じっている? はぐれか?」


 精霊王ファステアも逃げ出す人間の軍団に1人の魔人がいることに気付いたが、特に何をする事もなかった。今回の目的は、セイオリック天聖国から大部分の人間を追い出す為だ。だから、本人が動かずにある魔法を使い、高み見物を続けていた。魔人がいることに気付いても、動くことはなかった。


(さて、今回の作戦は楽だったな。――――玲子よ、今は従ってやる。だが、いつまでも従うと思うなよ。ふふふっ……)






 人形と竜の軍隊を見つけてから1日にして、セイオリック天聖国は『ロスディ・クリア』の元に陥ったのだった――――













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