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第百八十九話 魔界での初戦闘




「む、やっぱり魔界にも魔物がいるのか」


 少し距離があるといえ、輪廻は魔物がこっちに近付いているのを感じ取っていた。


「はい。魔物は瘴気によって、変異した動物のようなモノなので。それから、瘴気があると増えやすいです」

「ほう、つ・ま・り・は・の、魔界はゼアスより魔物が多く生息していると言うのぅ?」


 ゼアスにも僅かだが、瘴気はある。しかし、魔界のように世界中に漂っている訳でもなく、本当に微々たるモノである。その差を考えてみれば、魔界はゼアスより魔物が多く生息しているのは誰でもわかる。


「魔界に住む魔人でも魔物は食料であり、敵対している存在ですので、戦って間引きをします。なので、皆が考えているよりも多くはないかと」

「そうなの? 良かった――、沢山の魔も、の、あれ!?」


 更に距離が縮まり、シエルも魔物の気配を感じ取ることが出来るようになったが……その数は百を超えており、その魔物はタダの魔物にしては強いと感じられた。沢山の魔物と戦う必要がないと思っていたシエルは途中で言葉が途切れて驚愕の表情を浮かべてしまう。


「おおぉぉぉ多いよ!? なに、その強さ!?」

「MANSINしたエルフ、ここは魔界ですよ? ゼアスとは違うと思っていなさい。それに、馬鹿みたいな顔を見せていないで、武器の準備をしていなさい」


 シエル以外は既に自分の武器を出したり、周りへの警戒を高めていた。近付いてくる魔物の強さはステータス一万程度ではないと皆はそう感じ取っていた。ルフェアは『真実の眼』で確実に魔物のステータスを見れるが、その強さに冷や汗を欠いていた。


「少しヤバイじゃないかのぅ? シエルはここで死ぬかもしれん」

「ええっ!? まだ死にたくないよ!?」

「はぁっ、足手纏いエルフは下がっていなさい。吸血鬼幼女、ステータスの平均はいくつでしたか?」

「平均四万ぐらいだな。あの蠍と同じぐらいの強さが百以上もいるとは」

「よ、四万!? 私の倍じゃない!?」


 平均で考えれば、シエルは三万程度だが、百体以上の魔物が全て平均四万と聞けば、脚が竦むのは仕方が無いだろう。


「あれは――――ケルベロス?」

「いえ、頭が二つだけなので、オルトロスになります」


 輪廻達を囲むように現れたのは、二つの頭を持つ犬の魔物、オルトロスだった。ゼアスではSSランクの強さと設定されている。それが百体以上もいれば、その強さはSSSランクを超えると言っても過言ではない。


「オルトロスか、シエルには荷が重いか。ハク! シエルの側にいろ」

「では、私が先に行きます!」


 SSランクのオルトロスといえ、魔力で生きている魔物。テミアの魔力の毒は魔力を持つ者なら、全員が天敵となる攻撃方法になりえる。包囲しているオルトロスへ向かって、全方位へ瘴気を放つと危機を感じたオルトロスはすぐさまに離れていた。何体かは身体の魔力が乱れて、穴と言う所の全てから血が流れていく。

 皆は包囲から抜け出そうと考え、テミアの攻撃によって隙が出来た箇所へ向かって行く。


「“虚手”、“極気圧”」

「近付いてきた奴らは任せろ!」

「ふむ、危機察知が鋭いのぅ」


 輪廻は“虚手”で出来た隙を広げるように、潜り込ませる。そして、“極気圧”で潜り込ませた“虚手”から発動させた。そうすることで、“虚手”の周りにいたオルトロス達は吹き飛ばされて、敵がいない空間が出来る。

 ウルはゲイボルグで襲ってきたオルトロスを蹴散らし、ルフェアが氷の柱をいくつか作り出して壁のように地面に突き刺していた。氷の柱に突き刺されるオルトロスはいなかったことや、テミアの瘴気を避けたことから危機察知が桁外れに高いのがわかる。


「危機察知が高いよな? なら、俺らは危険な相手だと思われてないってことか?」

「輪廻は邪神モードになってもいないし、テミア以外はステータスが平均五万以下から、勝てなくはないと思われているのぅ」


 邪神モードではない輪廻でも戦えるが、戦わずに退ける程の強さではない。相手は数で攻めれば勝てると判断しており、こっちを逃がすつもりはないように感じられた。


「チッ、魔物程度に邪神モードを使う必要があるのはムカつくな」


 邪神モードは強力になるが、一日に何回でも成れるようなモノではない。大量の魔力を喰うので、魔力を節約すれば一日に三回ってところだ。それを青龍王クラスの強さではないただの魔物相手に使うのは勿体無いと思っていた。時間はかかるが、魔法だけで片付けようと覚悟を決めた輪廻だったが――――


「いえ、ここは私に任せてください。複数の相手には私が相手をするのが最適かと」

「ん、瘴気で倒すのか? その瘴気は範囲が……」


 狭いと言う前に、テミアがやれることを証明していた。魔王になり、青龍王の偽核を取り込んだテミアは普通の魔人ではない。




「このくらいの魔物なら、私が全てを死へ誘いましょう。“瘴虚彗星”」




 強力な瘴気にも弱点はあった。それは、攻撃範囲が狭かったことだ。前までは数百メートル程度で、今のように数キロ先で警戒しているオルトロスまでは届かない。




 しかし、今のテミアは前のテミアとは違う。




 テミアが“瘴虚彗星”を発動した瞬間に、ある場所を除き、十キロ範囲内の全てが死んだ。上空から魔力の毒となる大量の瘴気が彗星のように落ちて、オルトロスどころか、十キロ内にいた生物、植物の全てが死んだのだ。魔界に漂う瘴気とは比較にはならないぐらいに濃い瘴気は劇薬になっており、周りは森だったモノが枯れて、生物も魔力の毒によって倒れ、敵だったオルトロスも一体残らず、殺しきった。危機察知されて逃げられる前に全てを殺したのだ。




「どうでしょうか? これで、敵は全て死にました」

「そうか、そうか。一つ、言いたいことがあるのだが……」

「は、はい! なんでしょうか!?」


 テミアは褒められると思い、声を上ずって嬉しそうな表情になっていた。輪廻が言いたいことは――――――――






「「「「やり過ぎ!!」」」」






 皆も輪廻の言葉と同調していた。周りを見れば、何も生きている者は何も無かった。まるで、地球で言えば――核戦争が起こった場所のようだった。

この後、テミアは輪廻に説教され、涙目になってしまうのだった――――










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