第百八十八話 魔界の様子
ちょい短いですが、続きをどうぞ!
魔界と言えば、どんな所だと答えるか?
殆どは人が住めない、地獄の様な世界。恐ろしい化物が住まう世界。緑も無い太陽も無い薄暗い世界。瘴気に包まれていて、視界も良好とは言えない世界。
輪廻もそんな世界を想像していたのだが――――
輪廻の眼には――――らんらんと輝く太陽、緑が広がる森、ゼアスにある湖よりも綺麗な湖、まるで楽園のような世界が広がっていたのだ。
えっ、ここが魔界? 間違えて楽園に来てしまったのでは? と思うぐらいに、想像していた世界観が全く合わなかったのだ。
「えっ、ここが魔界?」
「そうです。ここは魔界で間違いはありません」
「え、ええっ? こんな綺麗な場所が!? 嘘だ!? げ、幻覚でも見せられているんじゃないの!?」
「……いや、この世界は本物だ。『真実の眼』は嘘を付かない」
「ほえー、懐かしいような、昔のことだったから、忘れていたぜ。こんな世界だったな」
この世界を知っているテミアとウル以外はこの世界が魔界だとまだ信じられないのか、驚愕の表情を浮かべ続けていた。
「そういえば、瘴気は? そんなの見えないけど……?」
「馬鹿エルフ、そんなの当たり前のことを言っているのですか?」
「なんでよ! 当たり前と言っても、私は魔界にある瘴気のことを知らないんだから!!」
「はぁっ、私の出している瘴気は眼に見えるように濃縮されていますが、普通の瘴気は眼には見えないぐらいに微細な物ですよ。魔界にとっては、瘴気とは空気のような気体なのです」
「毒の間違いでしょう……で、メイドはこんな綺麗な場所で生まれたの?」
「私が生まれた場所なら、ここではなく、もっと向こうにある大陸です」
「うーむ? ここはどんな形をしているのぅ?」
ルフェアが気になったのは、魔界はどんな世界なのか。大陸はいくつあるのか? ちなみに、ゼアスは四つの大陸が接しており、中心に巨大な湖があるといった感じだった。
「この世界はゼアスと同じ形になっています」
「ゼアスと同じ?」
「はい、ゼアスと魔界は表裏のような世界になっています。ここも四つの大陸が接しております。ただ、中心には湖ではなく、一つの塔があります。それを除けば、ゼアスのと変わらない世界観でしょう」
「へぇ、こんな世界もあるんだ」
ゼアスと魔界は鏡写しのように、四つの大陸がある。ゼアスの中心にある湖だけが違うと言え、似た世界があることに興味を持っていた。
「そういえば、メイドの母親? は何処にいるのよ?」
「急いでも仕方が無いでしょう。この早漏エルフ!」
「女に言う言葉じゃないよね!? それは!!」
「どうでもいいでしょう。貴方の心にダメージを与えることが出来ればいいのですから。それよりも、先にこの世界のことを説明しておきます。魔界へ来たことによって、言葉の制限を解くことが出来たので、それらも含めて話します。では、黒エロフは黙れ」
「う、うわぁぁぁぁぁん!! メイドが苛める~~!! なんでか、心がとても痛い!!」
「はぁ、弄るのはもういいから、話せなかったことを教えてくれる?」
「はい」
『毒舌家』の称号により、精神ダメージを受けたシエルを宥めつつ、ゼアスでは話せなかったことを聞く輪廻。
「ゼアスでは、魔界のことを詳細に話すことができないようにと制限を掛けられていました。私だけではなく、魔界からゼアスへ渡る魔人全体がその制限を受けます。そうでしょう、ウル?」
「そうだったけ? 昔のことだからな……」
「昔と言っても、千年も経ってはいないでしょう? 少しは脳細胞を働かせなさい」
「なにおぅ!? お前こそ、千年前のことを覚えている事はないだろ!?」
「私はまだ千年も生きてはいませんよ?」
「痛い痛い!! 頭を掴むな!?」
ステータスではテミアの歳を隠されているが、千年はまだ生きてはいないようだ。年増扱いされたテミアは額に怒りマークを浮かべながら、ウルの頭を力一杯、掴んでいた。10万超える力で掴まれてしまえば、潰れてしまう程の痛みを受けてしまうだろう。
「制限ね、その制限を掛けている奴がいると?」
「はい。この魔界では、一人の神と四人の王が統治をしています」
「神がいるのか?」
「といっても、実際に見たことはありません。私は母親に聞いただけなので」
「ふむ、四人の王とは?」
「この大陸は四つあり、四人の魔人が王になって統治をしています。そして――――」
ここからが、輪廻達の目的に繋がる。強くなりたいと言う目的に。
「私の母親、ベルゼミア・アルデウス。西の大陸を統治する王になります」
つまり、自分達は四人しかいない魔界の王へ会いに行くことになるようだ――――




