第百八十六話 彼女の復活
青龍王との死闘、その後はどうなったかは――――
『うははっ、やるじゃないか。私がここまで追い詰められるとは思ってはいなかったよ』
「……目を覚ましたら、なんでお前がいるんだよ? 『破壊』で朽ちていなかったのか? それに、ここは……?」
「まだ起きるな。そいつはもう戦う気はないようだ。ここは、我の結界の中だ」
さっきまで意識を無くしていた輪廻だったが、テミアの“再水”によって、目を覚ました。眼を覚ましたら、目の前に陰陽師のような姿をした青年、青龍王が映っていた。周りに女性達がいるから、戦闘は終わったのはわかるが、まだ生きているならトドメを刺さないことにも疑問を浮かべていた。
青龍王も無傷ではなく、身体に付いた大きな傷は完全に回復しておらず、古傷のような跡が残っている。それから、右腕もまだ元に戻っていなかった。だが、死んではいなかった。本来なら、最後の攻撃で『破壊』の力によって、身体が朽ちていく筈だったのだ。だが、それを跡が残った程度で致命傷には成り得なかった。
『それは君が気絶したから、威力が弱まったのもあるが、私は元から不死に近い存在だからだ』
「不死に近い存在だと? それでは――――」
『大丈夫だ。核が欲しいと言うが、その女を元に戻したいなら、これを使えばいい。不老不死にならずとも、前よりは強くなれる程度の効果はあるぞ』
そういい、輪廻が斬り落とした右腕を渡された。
これでどうしろ? と思ったが、右腕が突然に形を変えて、核に似た丸い物になった。
「これは?」
『偽核と言う。これを呑めば、その女は元に戻るだろう』
「……テミア。呑むか?」
「はい、元に戻れるなら、呑みます」
完全に信じた訳でもないが、青龍王が嘘を付く理由も見当たらないので、呑む本人であるテミアに聞くことにした。テミアも同じく青龍王が言っている事を信じてはいないが、可能性があるだけでも飲む価値はあった。小さくなっているテミアだったが、両腕で受け止めると、呑みやすいサイズまでに小さくなった。
「では、飲みますね」
小さくなった偽核を呑み込むと、その効果はすぐに現れた。まるでビ○グライ○で光を浴びされたように、少しずつ大きくなって――――元の姿に戻った。それで終わらず、テミアの瘴気が溢れ出したのだ。
「えっ、何! 何!?」
「ほう、更に強くなっているのぅ。我を少し超えたな?」
「…………」
テミアは精神を落ち着かせ、溢れ出した瘴気を身体へ戻していく。テミアは今まで扱ったこともない量の瘴気を、たった数秒だけで纏めて、操ってみせたのだ。
「大丈夫か?」
「……はい、ありがとうございます」
「そうか。良かっむぐっ!?」
突然にテミアが輪廻へ抱きつき、輪廻は胸に埋もれていた。
「ちょっ! 少年はまだ怪我人なのよ!?」
「あ、すいませんでした。とても嬉しくて……」
テミアにして、珍しく恥ずかしい表情を見せて、そっと輪廻から離れていた。抱きつかれた輪廻は息の確保をしつつ、気付いたことを口にしていた。
「あれ? なんか、大きくなってないか?」
「あ、本当ですね。これは……Eカップになっていますね」
「E!? ま、前まではDカップじゃなかったの!?」
「……女は胸で決まるものではないのぅ……」
「そうか? 男は胸が好きなんだろ?」
何故か、テミアの胸サイズが上がっていた。ちなみに、シエルはまだBカップ、ウルは普通のカップのCカップ、ルフェアは残念レベルのAカップしかない。その原因は――――
「あ、青龍王! もしかして、カップを上げれる効果もあるの!? 私にも頂戴よ!!」
『お、落ち着け。そんな効果は個人によって、違うから誰でもそうなる訳でもないのだ……』
「そんな~~~~~」
「……ふっ、黒エルフはもう成長はしないわよ。何故なら――――黒乳首だからっ!」
「黒乳首とか、関係ないでしょ!? って、私のは黒くないわよ!?」
「落ち着けよ……、ほら、テミアも煽らない。元に戻れたから嬉しいのはわかるが、今は静かにしてくれよ」
誰から見ても、今のテミアは元に戻ったからか、何処かテンションが高いように見えた。だが、輪廻はまだ完全に体力が戻った訳でもないので、しばらくは静かにしてもらいたかった。そして、まだ青龍王には聞くことがあったからだ。
「青龍王、お前はいつでも俺を殺せた筈。何故、殺さなかった? あんなアドバイスを送ったり、見逃そうとしたりして――――」
『簡単なことだ。無駄な殺生が嫌いなだけだ』
「お前の核を狙った敵であってもか?」
『不老不死になりたい者で、畜生な奴だったら、遠慮はしなかったが、君は違ったようだからな』
輪廻は自分の為ではなく、仲間の為に動いていた。仲間を元に戻したい為だけに、自分の命を賭けて格上だった青龍王に挑んだ。だから、青龍王は輪廻を殺さない選択をしただけなのだ。
「…………はぁ、それで納得しろと言うんだろうな。わかったよ、テミアを元に戻せたなら、文句はない。身勝手だったが、お前を狙って、すまなかったな。何かして欲しいことがあれば、言ってくれ」
『うはははっ、構わん。この腕はしばらくすれば治るし、君との戦いは楽しかった。対価はそれで充分だ』
青龍王はあっさりと許した。命を狙われたのに、互角に戦えただけでも対価は充分だと、心広い器で許すのだった。
輪廻は苦々しい表情を浮かべていたが、今はまだやることがあるので、全てが終わったら、酒とか持って行ってやろうと考えるのだった。
青龍王と別れて、テミアを元に戻した後、これからやることは――――
「俺はまだ弱い。もっと強くならなければならない」
「少年は充分、強いと思うけど……」
「レベルは高いから、上がりにくくなっている。それに、互角に戦える相手は青龍王しか思い当たりがないのぅ」
「魔人は魔王がいなくなったから、バラバラになっているだろうし。戦いたいなら、探すのが面倒になりそうだな」
「でしたら、方法があります」
輪廻はもっと強くなりたいと思っていた。もし、敵に青龍王のように強い者がいたら、今の輪廻では殺されるのが見えている。といえ、輪廻の強さはこの世界ではトップクラスであり、自分が強くなれるような相手がいないことが問題だった。
他に相手になりそうな敵がいないか、考えている中、テミアだけは一つだけ思い当たりがあるようで、手を挙げていた。とんでもない提案に皆が、考え悩むことを止め――――
「私の故郷である魔界に行きませんか?」
「「「「はぁっ!?」」」」
声を揃えて、皆が驚愕するのだった――――
次回は魔界編ーーーーーーーーーーーーになりません!
他の人はどうなっているか、書いて行きます。
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