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第百八十四話 八割の力

はい、続きをどうぞ!




 跡形も無くなってしまった龍の山から離れた場所、龍の谷の側にて、輪廻以外の女性達が心配そうに戦いの場を見詰めていた。


「だ、大丈夫なの? アレはやばかったように見えるけど……」

「黒乳首のエルフ! 御主人様を信じていなさい!!」

「黒くないよ!? まだピン――って、何を言わせるのよ!!」

「こんな時でも、騒がしい奴らだな……」

「それが、あいつらだからのぅ。気にしすぎても無駄だ」


 弄るテミア、弄られるシエルに呆れるウルとルディア。先程、風を纏う人型が龍の山全体を潰す攻撃をしていたのが見えており、輪廻はキャンセルさせることが出来ず、受けてしまったのも確認できていた。


「……まぁ、シエルの言う通りに大丈夫か心配な場面だのぅ」

「だが、助けには入らないだろ?」

「そうだ。輪廻が事前に言っていたのもあるが、我らでは全く役に立たんわ」


 青龍王も『超越者』の称号を持っているのは、神と呼ばれる程の聖獣と聞いただけでも推測出来た。会っただけで、皆が一瞬で理解しており、メガロモスを超える強さを持っていると判断出来たから、輪廻だけで戦うと決めたのだ。本能で戦っているメガロモスならともかく、理性を持っているただの魔物とは違う青龍王では、ルフェア達は戦いに加わることが出来ない。すぐ殺されるのがわかっているからだ――――


「……その化物が二体も増えるのは予想外だったがのぅ」

「やっぱり、戦いに加わるか?」

「無駄だろうな。あの化物のステータスも確認してみたが、どちらも13万程度で青龍王自体は――――」




――――――――20万。青龍王のステータスは平均で20万を超えている。それが、ルフェアが『真実の眼』で確認したステータスであった。


「今はまだ戦えているようだから、我らが出るのはまだ速い。出るなら――――輪廻が死ぬ寸前に助ける時だ」

「そして、そのまま逃げるんだな?」

「当たり前だ。逃げた後に鍛え直しだな――――そして、また挑めばいい」

「青龍王がそう簡単に逃がして貰えるのかな?」

「喜んで逃がすだろうな。あいつは、いつでも輪廻を殺せた筈だったが、輪廻はまだ生きてるというのが根拠だ」


 ルフェアは青龍王が輪廻を殺すつもりはないのを見抜いていた。その理由も、ルフェアだけが知っている。青龍王はルフェアと同じなのだから――――。まだ弄る弄られるを続けているテミアとシエルを放っておき、ルフェアとウルは真剣の眼で輪廻と青龍王の戦いを見続けるのだった。











 風神の攻撃により、龍の山は跡形もなく、大きなクレーターがあるだけだった。だが、その中心には小さな影がいくつか残っていた。そう、ハクの守りによって生き残った輪廻だった。

 だが、雷神を抑えていたアモンは消し飛ばされていた。そして、ハクも力が付いたようにカオディスアへ戻ってしまう。しばらくすれば、元に戻るが、今は戦えないようだった。


『どうやら、生き残ったようだな。だが、まだ三分は残っているぞ?』

「チッ、どうやら、リスク無しでは勝てないか」

『む、まだ何かあるなら、さっさと出した方がいいぞ? ほれ、雷神と風神が動き出しているぞ』


 青龍王と会話をしているのを他所に、雷神と風神はまだ生きている輪廻へ襲い掛かる。輪廻が死ぬまでは止まらない、殺人マシーンのように――――




「八割だ」




 輪廻は邪神の力を更に高める。今までの輪廻は、半身だけを邪神モードにさせていたが、それ以上の力を得る為に、邪神の力を高めていく。半身だけのが、更に輪廻の身体を侵食していくように両手、両足が黒い魔力に包まれていく。生身は二割程しか残っておらず、小さな邪神の姿に近付いていた。


『まだ、それ以上の力を使えたのか!』

「これなら、やれる!!」


 半身だった時よりも高い身体能力で、雷神の顔を一瞬で掴んでいた。そのまま、風神がいる場所へ投げて、一箇所へ集めた。




「“終之重”」




 ブラックホールに似た黒い球が二体へ向かい、雷神と風神の両手を削り吸収していた。そして、吸収の限界が来たのか“終之重”は消えてしまった。高ステータスを持った魔物、生き物を消し去るのは一発の容量では足りなかったようだ。雷神と風神は腕を削り取られようが、進みを止めない。魔法だから、痛みを感じないのは当たり前だが――――鬼気迫る表情を浮かべた敵が向かってくる姿に恐怖を誘うのは普通なら、怖いと思ってしまうのが人間だろう。だが、経験が豊富な輪廻には恐怖を浮かべることもなく、次の魔法の準備を終わらせていた。




「これで、どうだ。『幻融』で“虚手”と“終之重”を融合させた、“無界掌”を喰らいやがれ!!」




 『幻融』は魔法を融合させ、威力を高めることが出来る。“虚手”に“終之重”の効果を上乗せし、更に『破壊』も付加させた。そうして、出来たのが“無界掌”。ブラックホールに吸い込まれるよりも酷い状況に陥る魔法であり、『破壊』の性質で雷神と風神を構築させている『雷神魔法』と『風神魔法』その物を破壊する。特異魔法は宿す人物の心から生まれる魔法であり、完全に破壊する事は無理だが――――、一時的には『雷神魔法』と『風神魔法』を使えなくすることが出来る。

 正面から“無界掌”を喰らってしまった雷神と風神は何も発することもなく、そのまま消え去った。もちろん、青龍王にも効果があって、『雷神魔法』と『風神魔法』を一時的に使えなくなっている。なのに――――




『素晴らしい。邪神の力を見事に制御し、よく雷神と風神を倒して見せたな!』




 雷神と風神がやられて、『雷神魔法』と『風神魔法』を使えなくなっているのに、青龍王は素晴らしい物を見たというように、笑顔で拍手をしていた。


「……そんな余裕を見せてもいいのか?」

『ん、どうかな? 『雷神魔法』と『風神魔法』が使えなくなっているみたいだね。でも、だから何?』

「ッ! そんな余裕を見せていられるのは、もう終わりだ!!」


 輪廻のステータスは平均18万になっており、敏捷と魔力に至っては19万を超える。それが、今のステータスだ。



 ――――――――――――――――


 祟条輪廻 11歳 男


 レベル:278

 職業:暗殺者(天邪覇神発動中)

 筋力:35570(187900)

 体力:32650(184200)

 耐性:28790(176500)

 敏捷:40870(194300)

 魔力:41850(192350)

 魔耐:30780(179800)

 称号:邪神の加護・暗殺の極み・冷徹の者・魔族を虜にした者・無慈悲なる者・異世界者の覚醒・疾風迅雷・ハーレム野郎・吸血鬼の弟子・邪剣使い・勇者殺し・覇者の資格・王殺し・超越者

 特異魔法:大気魔法(重壁・重圧・重球・虚手・虚冥・隠真空刃・静隠気・極気圧・終之重・天邪覇神)

 スキル:高位暗殺術・隠密・剣術・徒手空拳・気操作・集中強化(武神・神硬・神速・幻融)・上位鑑定・上位隠蔽・魔法耐性・直感・魔力察知・魔力操作・言語理解

 契約:テミア(魔族)・邪蛇アモン、邪蛇ハク


 ――――――――――――――――




 なのに、青龍王はまだ余裕を見せていた。ステータスの数値はまだ相手のほうが上だとしても、もうこの戦いでは『雷神魔法』と『風神魔法』を使えない。それを差し引くと、輪廻の方が有利だと考えられる。このまま、余裕を見せる青龍王へ向かい、核を抉り取ろうとした。人間型になってくれたお陰で、核が何処にあるか絞り込める。胸の中心へ邪神の爪と言える手を伸ばした。








『君は強い。でも――――もう、あと一歩足りないかな』

「な、なんだと……」


 邪神の爪は胸の中心へ当たった。だが、貫けなかった・・・・・・




『赤龍王と戦ったなら、知っていた筈だよ。私は『雷神魔法』と『風神魔法』と言う攻撃を封じ込められた。だが、攻撃は無くても――――防御はどうだ?』




 赤龍王も攻撃と防御に二つのスキルを使っていたことを思い出した。同じ龍なら、同じように攻撃と防御のスキルが分かれていたということなら――――




『まだ、力が足りない。君では私を殺せない。私の『不壊龍鱗』を破らない限りは』

「ふ、『不壊龍燐』だと……?」

『そう、だから、あと一歩だったよ』


 驚愕に固まってしまった輪廻は隙だらけで、青龍王は手刀を持って、輪廻の右胸から左脇腹まで切り裂いた。邪神モードだったのに、あっさりと豆腐を斬るように、簡単に斬られた。

 そのまま、伸ばしていた手はだらりと力が抜けて、下へ落ちていった――――









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