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第百八十二話 勝つ為に




 二つの特異魔法を持っている、青龍王に対して、輪廻はどう戦うのか? その問題に対して、輪廻が出した答えは――――




 正面から戦わない・・・・・・・・だった。




『……次はこうくるか』


 今、輪廻は“空歩”で空中を走り跳びながら、青龍王へ攻撃を仕掛けていた。その攻撃は魔法ではなく、カオディスアによる斬撃の攻撃をしている。それに対して、青龍王は近付いた瞬間に『雷神魔法』の“雷球体”で自分を守っていた。そして、風刃や雷を放って、輪廻を撃ち落そうとしている。しかし、それらの攻撃は輪廻には当たってはいない。“雷球体”による雷の防御は直前に方向を変えて、ヒットアンドウェイで距離を取っていたので、雷による反撃も受けてはいない。

 今回の輪廻が取った策は――――




『こっちの魔力切れを狙っているか?』

「…………」


 青龍王の答えに輪廻は沈黙する。青龍王は確信していたようで、この戦法をすぐ決行したことに感心していた。この戦法は相手が格上だと認めていなければ、やろうとは思わないことだ。そして、自分の力を過信せずに挑めていると考えられる。魔力の配分も良く考えられており、今は放出している魔力が多いのは青龍王の方だ。輪廻は避けきれない攻撃だけを魔力による防御をし、攻撃は邪剣による攻撃で魔力を全く使ってはいない。移動に“重壁”を足元に作っているが、その魔力は微々たる物で、青龍王が使っている魔法と比べたら、消費が多いのは、青龍王になる――――




『このまま、一日中は戦えば――――こっちが先に魔力切れになるな。だが、体力はどうだ?』

「黙って、戦えないのか……?」


 魔力消費は青龍王の方が多いといえ、問題はまだ残っている。そう、体力だ。空中に留まっている青龍王と違って、輪廻はずっと動き回っている。しかも、攻撃を避け続けながらでは、最も体力を使っているのは輪廻の方になる。魔力は一日ぐらいなら大丈夫だが、体力の方はそういかない。


『試せることは何でも試す、その心意気は良いが、勝利出来ない相手と出会ったら、逃げることも考えるのも大切だぞ?』

「逃げる選択は有り得んな! そして――――、一つだけ、間違っているぞ?」

『間違っている?』


 間違っていることが一つだけあると言われるが、青龍王はすぐ思い付かなかった。ブラフかと考えていたが――――


『ッ! これは!?』

「ようやく、気付いたか!!」


 いつの間にか、自分の身体が重くなっていることに気付いた。空中に浮いていた青龍王は体重が増えたことにより、少しずつ地面に近付いていた。いつ、こんな攻撃を受けたのか、まだわかっていない青龍王はバランスを崩してしまい、魔法の制御も乱れた。


「“虚冥”!」

『クッ!』


 バランスを崩した青龍王は魔法の制御を元に戻そうとしたが、先に輪廻の攻撃が青龍王の身体に当たってしまう。これが、初めて魔法が当たった瞬間だった。攻撃を受けてしまった青龍王は更にバランスが崩れて、自分の身体がまた少しずつ重くなってしまって――――地面に落ちた。


『な、何が!?』

「まだわかっていないようだな。だが、俺は易々と教えてやる程に器は広くないんでな!! “隠真空刃”――充填! 充填! 充填!」

『グオオオオッ!?』


 答えを教えることもなく、輪廻は耐性と魔耐を無視した攻撃で青龍王に攻撃を仕掛けていく。魔法で反撃をしようとしても、魔法の制御が上手くいかないまま、輪廻がいる場所へ真っ直ぐと行かない。“雷球体”で守ろうとしても、“隠真空刃”は雷の防御を擦り抜けて、身体に当たってしまうのだ。何回か、身体に当てていると青龍王の身体に幾つかの傷が出来ていく。致命傷とは程遠いが、格上である相手に傷を付けられていると言う結果は上等な物だった。

 だが、その苛烈な攻撃は長い間は続かなかった。ついに、青龍王がようやく本気で戦闘だと認めたからだ。


『舐めるな!!』

「ッ!?」


 青龍王の口から雷と風の息吹が放たれ、輪廻がいる場所から更に上空、そこには、“静隠気”で隠されていた一つの黒い球があり、それを消し飛ばしたのだ。


『やはり、あの球のせいだったか!!』

「……」


 隠されていた一つの黒い球は斥力を放ち続ける“重球”。上空から斥力を放たれてしまえば、押し潰されるような重さを感じるようになる。青龍王もその重さにやられていたが――――、一つだけではステータス10万を超える青龍王相手には効果が薄いのだ。ということは――――




「1つしか見つけられなかったか」

『何を――――なっ!?』




 輪廻が指を鳴らすと、“静隠気”の効果が消えて――――青龍王の周りに大量の“重球”が姿を現した。


「一つだけ間違いがあると言ったな。俺は魔力切れを狙った訳でもない。俺がやることは、最初から何も変わってはいない。そう、お前を倒すことはなっ!!」


 青龍王が“静隠気”で隠された“重球”を見つけられたのは、ただの勘で、輪廻が重力を使うと知っていた所から、姿が見えずとも、上に何かを隠していると考えていただけなのだ。


「最大出力!!」

『グオオオオッ!?』


 重力が様々な方向からも放たれて、青龍王は身動きが取れなくなった。そこに、輪廻は“終之重”で青龍王を削り殺そうと発動した。数秒は動けないと判断出来たので、これで決まると輪廻は思っていた。




 だが、現実はそう簡単ではなかった。




 重力で動けない筈の青龍王が光りだしたと思えば、その光から一つの人間の手が現れ、“終之重”を握りつぶしたのだ。




「……なんだ、その姿は?」

『クククッ、この姿は久しぶりだな。私をここまで追い詰めるとは思ってはいなかった』

「赤龍王のように魔力の消費を嫌った訳でもないな……。なら、その姿が本気になった姿って訳か?」


 輪廻は読み取っていた。青龍王の体から先ほどの龍だった姿と違い、更なる力が高まっているように思えた。




『見せてやろう。『神人覚醒』の力を。すぐやられないことを祈るよ』




 光が収まり、その中から現れたのは……陰陽師みたいな姿をした青年だった。








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