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第百七十六話 砂漠の敵

はい、続きをどうぞ!



 砂の中に潜ったまま、現れないサンドスピアワームに対して、輪廻が前に出る。ある試みを試す為に。


「邪神モードにならないで出来るか、試させてもらおう!!」


 邪神の力で姿を変えずに『破壊』の力が使えるかどうかだ。敵が何処にいるかわからない状態なので、味方から距離を取ってから手を下に向ける。




「“極気圧”」




 砂ごと巻き込んで、輪廻の回り全てを押しつぶしていく。しかも、『破壊』の効力付きなので、押し潰された砂は更に細かくなって消え去って行く。その力に恐怖したのか、巻き込まれる距離にいたサンドスピアワームは慌てて離れようと動く跡が出てきた。


「逃がすか」


敵を見つけた瞬間に“虚冥”を撃ち込んでいた。咄嗟だったから、『破壊』の効力を付加出来なかったが、威力は充分だった。当たった箇所は千切れて、気持ち悪い姿になって地上に出てきた。叫び声を上げて暴れるサンドスピアワームに止めを刺そうと、カオディスアを取り出すが……



 瀕死だったサンドスピアワームは巨大な魔物に食われた。5メートル以上はありそうだった魔物を一口で食べられたのを見て、呆気に取られた。


「あ、アレ! でか過ぎませんか!?」

「SSランクの魔物をあっさりと倒した輪廻も大概だが、アレも化物だな」

「幼女吸血鬼、知っていますか?」

「アレは、SSランクのボルテックワコールだ」


 サンドスピアワームを一口で食べたのは、鯨みたいな姿をした魔物だった。普通の鯨と違い、砂の中を泳いで身体に雷をバチバチと纏っている。


「輪廻―、戦わないで逃げた方がいいぞ?」

「む、ウルが逃げた方が言うとは? 強いのか?」

「いや、あの魔物は普段から十数体以上の群れで行動していんだよ」


 ウルは戦っても勝てるが、現れたのは一匹だけでも他に姿を隠しているボルテックワコールがいて、その数は多いからここは戦わないで逃げたほうが賢明だと言う。暑い中でこれだけ大きい魔物と連続で戦うのは面倒なので、ウルの言う通りにすることにする。


「ここの砂漠は面倒な敵が多いな」

「ああ、だから戦わないで素通りするのが賢明なのさ。行きも魔物を無視して走ってきたからな」

「ん、転移を使える魔人はいなかったのか?」

「ディオなら使えたが、人数が多かったからな……」


 思い出してみれば、この前の戦いは魔人だけではなく、大量の魔物もいたことを思い出した。数万体の魔物も一緒に転移するのはシエルにも無理だ。ちなみに、シエルの闇魔法の転移は一度で十数人が限界である。


「そういえば、御主人様は邪神モードにならずとも、『破壊』の効力を付加することが出来るのですね」

「ああ、邪神モードの時と違って自動で出来ないから、数秒は掛かってしまうがな」


 『破壊』の力を使えたが、慣れが必要で魔物ならともかく、ウルのような魔人の相手にはその数秒は致命的な隙になってしまう。


「む、今度は大量の魔力を感知したぞ?」

「多分、オーラスウルフだな。音を操る狼だが、縄張りに入らなければ襲ってこない」

「雷の鯨に、音の狼とか砂漠に関係ない魔物がいるな?」

「さあ?」


 どうしてそんな魔物がいるのかはウルにもわからないようだ。ルフェアも考えていたが、何も話さないことからわからないのだろう。だが、推測だけは立つようだ。


「おそらくだが、洞窟の魔物と同じようなものだろう」

「実験された魔物ってこと?」

「黒エルフも実験された魔物の一体ではないのでは?」

「なんでよ!? 魔物じゃないし!!」


 いつも通りにテミアがシエルを弄っている内に、ようやく砂漠の終わりが見えてきた。砂漠が途切れて、森があるのが見えてきた。




「次は森かーーーーっ!? 止まれ!!」




 森が見えたと思ったら、前方の砂が盛り上がっていた。相変わらず、魔力を感じないが魔物が現れたのは間違いない。巨大な毒針を持つ(さそり)の魔物が行き先を防ぐように立ち塞がっていた。




「ギィィィィィ!!」




 今度の敵はSSSランクの魔物で、世界でも有名な魔物だった。輪廻は知らないが、他の人は目を大きく見開いて驚いていた。


「あ、あれは!?」

「SSSランクの魔物の中で、七体しかいない災害級の化物……アロディスア!?」


 シエルの口から出た魔物の名前、アロディスア。だが、輪廻はどう見てもメガロモスより強そうには見えず、眉を潜めていた。


「そんなに凄い奴なのか? ただの蠍にしか見えんが?」

「御主人様から見れば、そんなものかもしれませんが、あの魔物は世界にいるだけでも害となる魔物であり、数いるSSSランクの魔物の中でもとても高い実力を持つ化物です。噂では、聖獣の赤龍王より強いとか」

「ほう?」


 輪廻が苦戦した聖獣の赤龍王よりも強いと聞けば、興味が出る。蟲王であったメガロモスを倒した今の輪廻では役不足な相手かもしれないが、他の人にすれば、厄介な敵であることは間違いは無い。


「まったく、相手はヤル気のようだが、誰がやる?」

「我がやろうか?」

「いや……どうぜなら、ここでシエルを強くするのもありか?」

「わ、私!? 無理無理ですよ!!」


 指名されたシエルは顔を青くして横にぶるぶると振っていた。強くなるためには、自分より少しだけ格上の敵と戦うのが一番であるが……


「無理ではありませんか? ただの黒エロフが勝てるとは思えませんが」

「そこ! 真面目の話で弄るの止めてよ!?」

「じゃあ、テミアの瘴気で強化してあげれば、勝てるか?」

「そうすれば、五分五分かのぅ」

「よし、シエル勝て」


 シエルはまだ勝てるとは思えていないのか、顔をしかめていた。輪廻は仕方がないというように、餌を用意した。


「勝てたら、なんでもご褒美をやろう」

「やります!!」


 あっさりと釣れた。単純だなと思いつつ、話しているうちはウルが抑えてくれていたので声を掛けて置く。


「ウル、いいぞー!」

「わかった!!」


 ウルはアロディウスから離れて、シエルと交代した。やる気満々で前に出たが、近付くと実力の差に顔を歪めてしまう。テミアから強化してもらったが、まだアロディウスの方が少しだけ上だとわかり、気を引き締めていた。先手を取るつもりで、シエルは星屑を上に向けーーーー




「“流星”」




 天から大量の雷の矢がアロディウスへ向かって落ちていった。







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