第百七十三話 洞窟の主 中盤
本日2話目
カオディスアとゲイボルグを持ち、その姿は輪廻とイアを半々にして混ぜ合わせた姿をしていた。
「強さはどうなるんだ?」
「お前と私のステータスを合わせて、半分した数になる」
「……面倒な。ドッペルゲンガーの特性を受け継いでいるなら、スキルや魔法も使い放題か」
「な? 面倒な敵だろ。だが、全員で掛かればいいだけだ」
「全員で……」
後ろを見てみたが、テミアとシエルではドッペルゲンガー改の攻撃に耐えれるようには思えない。ということで……
「いや、俺とお前だけでやる」
「はぁ?」
「テミアとシエルではドッペルゲンガー改の攻撃を受けたらおしまいだ。俺とお前の力だぞ?」
「……それもそうだな」
「ルフェアはすまないが、2人を守ってくれ」
「了解だのぅ」
戦力で考えれば、輪廻とウルだけでも充分な戦力でもある。2人のスキルや魔法を使ってくるのは面倒だが、広さも邪魔になる他の敵もいない。
「カオディスア!」
「ゲイボルグ!」
2人も武器を顕現し、敵へ向かう。
「”虚手”」
ドッペルゲンガー改は二本の手を顕現し、2人を押し潰そうとする。
「舐めんな!」
ウルは”虚手”を無視して、ゲイボルグをドッペルゲンガー改へ投げた。ウルは隙だらけになってしまうが、輪廻がいる。
「どちらが強いか試そうじゃないか、”虚手”!!」
輪廻も同じ魔法を使い、手を合わせるように力試しが始まった。がっちりと手を組み合って、ウルを守った状況になっていた。
投げたゲイボルグは両手にあるカオディスアとゲイボルグの両方で、受け止められていた。
「はん、無駄だ! ”武昇格”!」
触れてもないのに、ゲイボルグは一段階に強化された。そして、カオディスアとゲイボルグを突き破って、右胸を貫いた。
シエルはやった!? と思ったが、他の皆は舌打ちを打っていて、えっ? とドッペルゲンガー改を見て驚いていた。
致命傷に見えた傷があっという間に元通りになり、壊れたカオディスアとゲイボルグも何もなかったというように元の姿に戻っていた。
「嘘っ!? 不死身なの!?」
「ちげーよ、弱点がある左胸を狙わないと、完全に元通りになるだけだ。それよりも、アイツは防げないとわかった瞬間に、ズラしやがった」
「眼から眼球のエルフ、ちゃんと魔力を感じれば、弱点がわかるでしょう?」
「怖いよ!? その言葉は!!」
眼から鱗が本来の言葉だが、テミアは眼から眼球と怖いイメージで駄目駄目と伝えていた。
それはそれとして、左胸にある弱点を狙えば、ドッペルゲンガー改は死ぬが…………、そう簡単にやらせてくれない。
「くっ!」
ドッペルゲンガー改はウルを先に潰そうと、ウルばかりに攻撃をしていた。輪廻も見ていないで、攻撃をしているが殆どは躱されていて、ウルの近くにいるから強い魔法が使えないでいた。
「アレは強すぎない!?」
「そうですね。……意外だったことがあるのですが、幼女吸血鬼がいるのに、ウルが選ばれた」
「……そういえば。私もルフェアの方が強いと思うけど? あれ?」
今までの戦いから見れば、輪廻とルフェアが混ぜ合わせたドッペルゲンガー改が出来ると思っていたが、輪廻とウルになっている。
「おそらく、ウルはまだ本気を見せていない……いや、まだ更なる力を持っていることに気付いてないのぅ」
「えっ!? 潜在力はルフェアよりウルの方が上だったから、選ばれたと?」
「その可能性が高い。現にあの輪廻が攻撃を当てられないでいるぞ」
輪廻が一度もドッペルゲンガー改に当たらないまま。それも、ウルの隠された力のせいかもしれない。
輪廻が持つ邪神の力も使われているのでは? それは否だ。
邪神の力は真似出来る程度の力ではないし、使っていれば前の輪廻みたいに黒いオーラみたいなのが出る筈だ。
「チッ、お前! あの時はまだ力を隠していたのかよ!!」
「い、いや! 本気でやっていたぞ! なんだよ、こいつはぁぁぁ!!」
ウルは切れた。もう手加減するの止めて、ゲイボルグを『限界突破』で神槍ゲイボルグに昇格させた。
「死にやがれ!! ”神葬槍”」
時空を飛ばして、突きを届かせる。それも一突きだけで、百以上の突きがドッペルゲンガー改へ届くーーーー筈だった。
ドッペルゲンガー改も神槍ゲイボルグに昇格させなければ、このままウルの勝ちだった。
「”神葬槍”」
「嘘だろ……」
時空を超えた突きには、時空を超えた突きを。ウルの本気でこれ以上の技はない、必殺技だったが…………全て相殺されて、防がれてしまった。
この結果に呆然してしまったウルは隙だらけだった。
「何してんだぁぁぁ!!」
輪廻が邪神の力を使い、攻撃されそうになっていたウルへ抱きついた。そして、輪廻が代わりに時空を超えた突きを受けた。
「少年!?」
「御主人様ぁぁぁ!!」
2人の叫びが洞窟内に響き渡ったのだった…………
まだ続きます。




