第百七十二話 洞窟の主 前半
本日1話目
リハビリの為に書いている、『乙女ゲームの悪役令嬢はシナリオから外れて、魔王になる』があります。
良ければ、読みに来て下さいね!
東の地への近道である洞窟に入った輪廻達は襲ってくる魔物の数に面倒そうにしていた。
「雑魚が威圧で逃げ出さないのはどういうことだよ」
「仕方がないさ。野生という勘がらないのさ。こいつらは」
「どうして無いのですか?」
「あー、詳しくは知らねえがこいつらは実験失敗した時に生まれた魔物で、自然に生まれた魔物じゃないってこと。ディオから聞いたことで、誰がやったことかは知らないわ」
「そうか。だから、馬鹿みたいに襲ってくるのか」
輪廻は魔法を使わずに、カオディスアで斬り裂いていく。真っ暗で良く見えなかったが、ツギハギにされた魔物もいたことから、自然に生まれた魔物ではないのはわかる。
「……減った感じがしないな」
「あー、思い出した。『分裂』というスキルを持っていたな」
「道理で減らないわけだ……」
「どうしたらいいんですか!? 本体がいるパターンですか!?」
「いや、全てが本体だ。リーダーとかはいないから無駄だ」
「こいつらが言っていた面倒な奴か?」
「いや、違う。アイツは洞窟の主だ。アイツの所まで着くまで耐えるんだ! そうすれば、こいつらの縄張りから出られる!」
「御主人様の魔法でしたら、すぐ倒して先に進めるのでは?」
「いや、この洞窟は脆い。強い魔法を使ったら、崩れてお陀仏だ」
「あ、気付かず、すいませんでした」
確かに魔法を使えば、ここはすぐに突破出来るだろう。だが、少しでも周りを削ってしまうと崩れそうで怖い。だから、武器を使って対応しているのだ。
「っ、減って来たから、もうすぐで抜けるぞ!!」
「最後は我に任せろ!!」
最後はルフェアが自分の爪で魔物を斬り裂いていく。爪には氷の爪が付いており、斬り裂かれた瞬間に凍っていった。
「早く走れ!!」
「ぜぇぜぇ、はいっ!」
「はっ、この程度で疲れるなんて、まだまだだな!」
「御主人様、私の瘴気を黒エロフに纏わせてもいいですか? 少しは強化させる事が出来ますが」
「黒エロフと言うなぁっ!!」
「まだ元気っぽいが、少しは楽にさせられるなら、やってくれるか?」
輪廻が許可を出し、テミアはシエルに強化させる瘴気を脚に纏わせていた。
「あっ! 脚が軽くなった!!」
「一言目に感謝をしなさい。これだから、お花畑の頭は……」
「これから御礼を言おうとしたのに!」
テミアのシエル弄りは平常運転だった。その会話に輪廻は苦笑して、優しい眼をしていた。
テミアは小さくなっても、いつも通りだったことに嬉しく思っていた。
「にやにや」
「何、口でにやにやと言っている?」
「いいだろ。仲が良いのは良い事だぞー」
「ウルこそ、仲が良い奴はいんのか? 「決まってんだろ、あー」あ、兄以外な」
「…………ディオは部下だしなぁ。うー、いないな」
ウルはずっと兄であるイアと一緒だったから、特別に仲が良い友達みたいなのはいなかった。魔王に従っていた頃も、仲間だった者とは喧嘩ばかりで仲は良いとは言えなかった。
「ふん、私は特別な友達はいらん。仇を取るのに、邪魔だ」
「やれやれ、まだ子供だな……」
「何おう!? 私の方が長生きをしている!!」
「そういう意味じゃねぇよ。仇を取るのはまぁ、構わないが……1人やろうとするな。死ぬぞ」
「…………ふん、兄貴みたいなことを言いやがって……」
昔に、兄のイアから同じ事を言われたことがある。イアの親友はディオだった。部下だが、親友でもあった。ウルはその関係を少しは羨ましいと思った時期はあった。
だが、様々な種族と出会っても、喧嘩ばかりで気があった者は1人もいなかった。イアとディオがいなかったら、ずっと1人だったかもしれない。
そんな昔の事を思い出していたら、輪廻に声を掛けられて、ようやく今の状況に気付いた。
「なに、思考を遠くに飛ばしているんだ。新しい敵だ」
「む……あ、アイツだ! 面倒だと言った奴!!」
「アレが洞窟の主ってわけか」
狭い道から広い場所に出て、中央には1つの黒い影がいた。少年のと変わらない身長で、あまり強そうには見えなかった。
そして、輪廻はその敵を見たことがあった。
「ドッペルゲンガー?」
前に、邪神の試練で戦わされたことがあり、辛くとも輪廻が勝利したことがある。ドッペルゲンガーなら、同じ強さになっても武器まではコピー出来ないから、今の輪廻なら楽に勝てる自信がある。
「アレはドッペルゲンガーだろ?」
「ドッペルゲンガーだったら、どんなに楽なんだろうな。違うんだよ」
違う? 見た目はドッペルゲンガーに似ているが、別の魔物だと?
話している時に、黒い影の少年は形を変えていく。まさにドッペルゲンガーのようだが、途中からアレ? と思った。
「アレは、ドッペルゲンガーを改造された存在なんだよ。ここにいる強い者の2人を混ぜ合わせて、完全なオリジナルになる面倒な奴だ」
そこにいたのは、さっきまでの少年ではなく、輪廻とウルを混ぜ合わせたような姿だった。手にはカオディスアとゲイボルグを持っていたーーーー
まだ続きます。




