第百六十八話 終戦後
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メガロモスは討伐され、生き残っている魔人は姿を消失したことで戦争は終わった。
人間側の勝利だ。
戦争に勝った人間側はセイオリック天聖国で盛大に祝祭が行われた。生き残った冒険者達は酒を浴びるように飲み果たし、誰も顔には笑顔が張り付いていた。
戦争で前線に出ていたセイオリック天聖国の王もその熱に浮かれ、祭に紛れて酒の飲み比べをしている。
王でさえも浮かれている中、召喚者は祭に参加しつつも、表情に陰りを落とす者もいた。その原因は、今回の戦争で命を落とした者が3人もいたのだ。それに、行方不明が1人。
召喚者の中でリーダーである啓二も一緒に帰る仲間が減ったことに憤慨なる感情を持っていたが、祭になっている空気を壊すことを良しとせず、夜空が良く見える場所に座りこみ、1人で寝転がっていた。
「ままにならねぇな……」
啓二は戦争で誰も命を失うことも終わらせるのは不可能に近いのは知っていた。誰かが殺されてしまっても、耐えよう。リーダーとしての責任も受け入れようーーーーと思っていたが、あっさりと切り替えるのは難しかった。
「あ、ここにいたのかよ!?」
「もぅ~、そんな場所にいたのね」
「あわわ、高い、高いです……」
「ん、お前ら……」
夜空が良く見えて、1人になれる場所にいた啓二だったが、目立つ王宮の屋根にいたことで、仲間達にはバレバレだった。勲、祐美、彼方は手に飲み物や食べ物が握られており、王宮の屋根に座り込んでいた。彼方だけは高い場所に恐怖を浮かべていたが、王宮の中に戻ろうとはしていなかった。
「ケイたん、1人で背負いこむのは無しだよ? クラスメイトが何人か死んだのは残念だったけど、決してケイたんだけの責任じゃないからね? 弱かった自分達が駄目だっただけなんだからね」
「そうよ。クラスメイトが死んだだけではなく、帰る方法が無くなったのも啓二だけに責任を負わせるつもりは無いわよ。あのクソ玲子のせぇぇぇぇぇいッだからね!!」
「…………」
2人からの励ましに言葉を失う啓二。ちなみに、彼方だけは高さに震えるだけで無言のままだったが。
手に持っていた食べ物を押し付けられ、啓二は食欲は無かったが空っぽである胃に詰めようと口に進めていく。
「でも、これからはどうしよう? 今は帰る方法が無いんだよね?」
「まぁ、それはあの子達が眼を覚ましたら会議に出るんじゃないかな?」
「……まだ眼を覚ましてないか?」
「うん。輪廻君は魔力枯渇で気絶していたけど、吸血鬼ちゃんは明日には元気になっているだろうって~」
「そうか、良かったと言うべきか……?」
「1人は縮んでいるが、生きているから良かったんじゃないかな」
主力であった輪廻達は連続で強者と戦い続け、勝利を掴んできたが、限界が来てルフェア以外は疲れや魔力枯渇などで気絶したのだ。縮んだテミアも流石に限界もあって、輪廻のまだ意識があった時は気合いで気絶をしないように耐えていたが、輪廻が気絶した後はテミアも同時に倒れたのだ。シエルも例外はなく、王宮の一室に案内された後に、疲れから泥のように眠っている。
それらの当事者が起きるまでか、何か異常なことが起きない限りは会議をしないと決めていた。当事者がいないまま進めることに賛成はしない人が多数であった。だから、今は勝ったことに喜び騒いでいるわけだ。啓二達もそれを理解しているので、輪廻達が眼を覚ますまで待っている。
「……むぐむぐっ、美味いな」
「うん。美味しいよね」
「とにかく、今は待とうぜ」
「ぶるぶる……」
上へ向くと、たまたま流れ星が落ちてきた。一つが落ちると、続くように二つ、三つと落ちてきた。幻想的な景色だが、端でぶるぶると震えている彼方の尻が見えていて、台無しであった。
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「うっ……」
「起きたかのぅ?」
「ここは……」
輪廻が眼を覚まし、天井があり立派なベッドで寝かされていることから、此処が何処なのか推測出来た。
今まで本を読みながら看病をしていたルフェアは此処が何処なのか答えていた。
「此処はセイオリック天聖国にあるお城だ。思ったより起きるの早かったのぅ? 半日も寝ていないからまだ寝ても構わんぞ?」
「……そうか。まだ身体が動かんから、少し休ませて貰う。会議のことで何か聞いてないか?」
「会議? あぁ、人間が集まって話し合いをすることか。まだやってないぞ」
「戦いが終わったからと浮かれているのか……? 問題はまだ残ったままだろうが……」
「あちらは此方が元気になるまでは待ってくれるみたいだ」
窓から外を覗くと王宮前の道で宴を開いているのが見えた。門を見てみたら、小さく動く影も見えたから、ちゃんと門番を設置しているようだ。浮かれているといえ、警戒だけは解いてないのはわかった。
「そこまで馬鹿じゃなかったなら、いいか。……そういいや、ウルの姿が見えんな?」
周りを見てみるが、ウルの姿だけは無かった。その疑問はルフェアが答えていた。
「アイツは輪廻が邪神の力に呑み込まれた後に姿を消しておった。おそらく、生き残った魔人と合流しているのだろう」
「まぁ、休戦はまだ解かれてはいないはずだ。口約束でしかないが、アイツが破るとは思えんな」
ウルは何処に行ったかわからないが、輪廻と敵対することはないだろう。兄であるイアを殺した玲子を殺すまでは無駄な戦いをしようとは思えない。
「まだ知りたいことがあるようだが、今は休め。これから忙しくなるのだから、休息は無駄にしない方がよかろう?」
「……あぁ、わかった」
まだ聞きたいことはあった。何故、ルフェアが邪神の力を封じる魔導具を持っていたのか? だが、今は休める時は休むべきなので、ルフェアの言うことに大人しく従って、目を瞑る。
「我はいつでも貴方の側にいるから、今はゆっくり休め。その後に隠すこともなく全てを話してやろう」
ルフェアは輪廻の頭を撫でて、優しい笑みを浮かべているのだった…………




