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第百六十七話 生存

本日2話目!

 


 邪神の力を抑えた輪廻は全ての力を使い果たしたようにぐったりとしていた。翼が無くなり、力無く重力に従って落ちようとしていたが、ルフェアが優しく受け止めていた。


「だ、大丈夫なの!?」


 シエル達も力を使い果たしていて、ルフェアのように誰かに肩を貸すことも出来ないぐらいに消耗していた。


「大丈夫だ。疲れているだけだのぅ?」

「……あぁ、少し休めば立てる。それに…………すまなかったな」


 輪廻はルフェアに肩を借りて、なんとか脚で立って頭を下げていた。暴走した時、もしかしたら誰かが死ぬ可能性があったのだから、頭を下げて謝罪をしていた。

 謝罪に呆気に取られる表情の啓二達だったが、次に笑顔に変わっていた。


「水臭えよ、お互い様だ。感謝しているのはこっちも同じだ。街で危ない所を助けられたしな。そこは謝罪ではなく、感謝だろ」

「そうよ! 輪廻君だけが気にすることはないよ!!」


 啓二や絢も輪廻には助けてもらった恩があり、それを返せただけでもツリが来るぐらいだと思っていた。

 自分達よりも輪廻のことが心配だった。なにせ、テミアが殺されたのだから…………


「そうか、ありがとーーーー」


 輪廻が感謝をしようとした先に、森から爆発が起きた。






「な、何がーー」

「危ない!!」


 ルフェアが輪廻を皆がいる場所に突き飛ばし、僅かに残った魔力で”凍結氷柱”を盾代わりにするがーーーー




「グハァッ!?」

「ルフェア!!」


 森から突き出た光線にルフェアの”凍結氷柱”を貫通し、威力が弱まったといえ、脇腹を抉られた。

 その光線で誰が攻撃してきたのか理解した。森の奥から現れたのは…………




 輪廻が倒したと思っていたメガロモスであった。その身体はボロボロで口にも穴が空いたままだが、まだ生きていて動いている。




「ぐ、ゲホッ、下がれ……」

「な、なんで、生きているのよ……。口に穴が開いているのに!?」


 ルフェアは不死身に近い存在だから、すぐに回復するーーーー筈が、何故か回復が遅かった。


「やはり、生命の力で回復の邪魔をしておるな……」

「ぐ、ルフェアこそ、下がれ……、俺がやる。最後までやれなかった俺の責任だ」


 輪廻は地面に膝を付けて、まだ体力が戻っていない状態でもルフェアを庇おうと前に出た。


「駄目だ、ここは我が時間を稼ぐから、離れていろ!」


 今はなんとか立てるルフェアが盾になり、他はその時間を使って、体力を回復させた方が勝ち目があるかもしれない。だが、輪廻はそれを許さなかった。

 もう仲間に自分のために傷を付けたくはなかった。だから、輪廻はルフェアの手を振り切り、前へ少しずつ進める。


「はぁはぁ、また力を貸せよ……」


 立てない今は、また邪神の力を借りるしか方法が無かった。だが、邪神の力を使うには体力が必要なのか、指先しか黒い魔力が集まらなかった。


「クソォ、力が集まらないだと……」


 こっちは力が集まらないのに、メガロモスはまだ余力があるというように、口から力を溜めていた。

 それが撃ち出されたら死ぬのは理解していた。だが、どうやっても指先にしか集まらない。

 あの光線に勝つには、最低でも腕一本を包むぐらいはしないと駄目だ。


 もう駄目なのか……? 皆から助けて貰ったのに、それが無駄になるのか? ーーーー嫌だ!! 仲間を守るんだ!! 自分も生き残るんだ!!!




 心はまだ死んでない。諦めてはない。なんとか生き残ろうと足掻く。

 そうしても、ようやく指一本を包むだけ。

 そして、遂に黒い光線が輪廻達に向けて発射された。


 まだ指一本だけの力しか使えないが、諦めずに”黒槌衝氣”を発動しようとした。流石に力が足りなすぎて、メガロモスが放つ黒い光線に似た細く伸びる光線しか放てなかった。

 見ただけでも輪廻の光線が負けるとわかるだろう。




「それでも、諦めてたまるかぁぁぁぁぁ!!『ーー良く言いました。それこそ、私の御主人様です』……え?」


 念話で声が聞こえたと思えば、突き出していた右腕に黒い物が包み込んだ。輪廻は黒い物が魔力だとわかった時は驚いた。この黒い物は魔力だが、邪神の力ではないのはわかる。しかし、あり得ないとも思っていた。その声は確かに、いつでも側にいると言ってくれた人の声だった。

 それは奇跡とも言えるような現象で聞こえていたと思っていた。

 しかし、黒い物は前から知っている。それはーーーー




 瘴気だった。




 前は紫色だったが、今は魔王になってから黒くなったのは知っている。それが、輪廻の力になるように右腕へ包み込んでいる。つまりーーーー




『言ったでしょう。私はいつでもお側に控えていますと』

「テミア!?」

『今は集中しましょう』


 後ろにテミアがいるのを感じ、すぐに振り向きたい輪廻だったが、今は敵の攻撃が向かっているのだ。


『私の瘴気は何がわかりますよね?』

「あ、あぁ……」


 泣きたい想いを抑え、テミアが言う意味を理解する。テミアが持つ瘴気は、特別な能力がある。それを邪神の力で強化させる。




「そうだな、名称は……『魔毒神光』だ」

『はい。私達で終わらせましょう』




 強化された『魔毒神光』は魔力を毒させて殺す。もちろん、生物だけに関わらず、攻撃も魔力で出来ていれば同じのことだ。『生命』の力も魔力で構成されており、魔力の毒が光の速さで蝕んでいく。黒い光線を散らして、そのままメガロモスへ向かっていく。

 魔力の毒を浴びたメガロモスは苦痛に鳴き、身体を歪めさせる程に捻っていた。






「ギゴガキューーーー!?」






 魔力の毒はあっという間にメガロモスの身体を巡っていき、『生命』の力は魔力の毒に抗えず、身体は灰になって消えていった。

 蟲の王として長く君臨していた蟲生に終点を打たれた瞬間であったーーーー







「はぁ、はぁはぁ……」


 流石に限界が来て、前乗りに倒れた。後ろから気遣う様子を感じられたが、起き上がって振り向く力も無かった。まさか、テミアが生きていたことに抱きついて喜びたいが、この状態では無理のことだった。


「すまない、肩を貸してくれないか……」


 後ろにいると思われるテミアに肩を貸して貰おうと思ったが、困ったような声が聞こえるだけだった。


『すいません、肩を貸すと言わず、おんぶをしてあげたいのですが、難しいです』

「もしかして、力尽きた?」


 どうやって生き残ったか知らないが、とんでもない方法で生き残ったに違いないから、体力と魔力を使い果たしてもおかしくはないと考え、テミアも輪廻みたいに力尽きたと思った。だが、首を動かして横へ向けてみたらーーーー




 困ったように頬を掻くテミアの姿が見えた。




 生きていたのは嬉しいが…………おかしなことが一つだけあった。

 うつ伏せの状態になった輪廻がテミアの全身を見れたのだ。距離は念話が良く聞こえたことからそう離れてないのはわかる。だが…………




「え?」

『えっと……、えへっ、小さくなっちゃった』

「えええぇぇぇぇぇッ!?」




 なんと、テミアがミニチュアみたいに小さくなっていたのだったーーーー!!








生きていたけど、小さくなったテミア!

これからどうなるのか!?

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