第百六十五話 小さな邪神
はい、続きです!
メガロモスは距離が取れたことで、再び額に意識を集中した。折れたツノを再生しようと、生命の力を集めるが…………元に戻らなかった。
そうして、メガロモスは理解したのだ。
スキルが破壊されていることに。
蟲人ザウルアスから手に入れた黄金のツノは『王角変型』と言うスキルで伸ばしたり増やしたりしていた。だが、ツノを壊されていた時に『王角変型』までも跡形も無く消滅していた。その故に、メガロモスはもう黄金のツノを使えなくなったわけだ。
だが、スキルを破壊してしまうのはそう簡単なことではない。特殊なスキルで一時に使えなくするのは出来るが、概念のその物であるスキルは魂を砕かない限りは消滅することはない。
だが、輪廻はそれをやってのけた。邪神の魔力に侵食されている輪廻は、『破壊』その物の存在となっていて、普通の存在ではない。今の輪廻は概念であるスキルと比べて、遜色がない存在となっているから、『破壊』の力がスキルを消滅させるまで昇華しているのだ。
「ゴァァッ!?」
超音波で輪廻を体内から破壊しようとしたが、今の輪廻には効いておらずあっさりと接近させていた。
邪神の魔力を纏っていなかったら、大きなダメージを受けていたかもしれないが、今の輪廻は破壊で相殺させながら突撃しているため、柔な攻撃は通じないでいた。
そのまま、爪を伸ばして斬りつける。
一振りだけで、左の羽は斬り落とされて胴体にも大きな切り傷が出来ていた。今度は音波のスキルが破壊され、超音波が消失して静かになった。
「ゴォォアァァァーー!!」
黄金のツノと音波が使えなくなっても、メガロモスにはまだ『生命』の力がまだある。
メガロモスが鳴くと、地面から大きな蔓が現れて浮いている輪廻へ襲いかかっていく。それで終わらず、さっき輪廻を封じていた大樹が光りだして、トレントみたいなモンスターになっていた。そのデカさは並のトレントより数十倍は大きく、メガロモスをも超えている。
大きなトレントが腕を振り上げて、輪廻を潰そうと勢いを付けて振り落とすーーーー!
輪廻の周りは大量の蔓が襲っており、上空は大きなトレントが振り下ろした大樹の手がある。それを見ていた啓二達は輪廻の逃げ道が無くてヤバいと感じていた。
だがーーーー
「ジャマするナぁぁぁぁぁ!!」
輪廻は叫びながら、小さな黒い球を頭の上に顕現していた。その小さな黒い球を握りつぶすように両手を掴みーーーー
衝撃が発生した。
ただの衝撃ではない。衝撃を浴びた蔓とトレントの腕が黒く染まり、朽ちていくようにボロボロになっていた。それで止まらず、腕を朽ちて破壊されたトレントは生き物でもないのに、苦しむように倒れて腕と同じように黒く染まって消え去った。
たった一撃だけで輪廻は絶体絶命な状況から抜け出していた。大きなトレントより後ろにいたメガロモスは衝撃を受けなかったから無事だったが…………
「ゴォォ、ギガァ……」
信じられないという風に驚愕していた。蔓も大きなトレントも『生命』によって強化されているから、再生によって不死身に近い力を持っていたのだ。
それが、たった一撃。
一撃だけで全ての蔓と大きなトレントを全滅されてしまった。
これで驚愕しないのは無理だろう。
「ゴォ、ゴォォォォォォォォォォッ!!」
メガロモスは自分よりも目の前にいる黒い竜…いや、小さな邪神が強いのは充分理解出来ていた。だが、その心を隠すように雄叫びを上げて、残った力の全てを練り出し、口から『生命』の力が溜まっていく。
それを見た輪廻も両手をメガロモスの方に向け、先程と同じ黒い球が顕現していく。この技は”黒槌衝氣”、破壊の力を十全に発揮し、身体や概念に魂も破壊尽くす。
「ゴガァァァァァ!!」
「キエロ!!」
同時に発射され、輪廻とメガロモスの間で2つの技がぶつかり合う。全ての『生命』の力を込めた光線、全ての『破壊』の力を込めた球が相手の技を突き破ろうと真っ直ぐにぶつかり合いーーーー
両方の間で一度はぶつかって止まっていたが、すぐに動きを見せた。
輪廻の”黒槌衝氣”が相殺ではなく、一方的にメガロモスの光線を散らし始めたのだ。
「ゴガァァァァッァァァァァァァァァァァァ!!」
周りから生命を吸収して、光線を強めようとしたが…………何も起こらなかった。それどころか、光線が弱くなっていく。まるで、周りへ『生命』の力による影響がなくなっていくような感じだった。
ーーーーそう、メガロモスの『生命』の力が弱くなっていくようだった。
そして、ついに…………光線さえも発射出来なくなっていた。『生命』のスキルが『破壊』の力によって弱められてーーーー最後にはスキルが使えなくなるまでになっていた。
光線が消え、抵抗が無くなった”黒槌衝氣”はそのままメガロモスの口へ直撃して貫いた。
「ギゴァ、ガァッ……」
『生命』の力が使えなくなったメガロモスは再生も出来なくなり、そのまま森へ落ちていった。
敵を倒した輪廻は勝利の雄叫びを上げた。
「ウオォォォォォォォォォ!!」
だが、皆は悲しみの叫びにも聞こえたのだった…………




