第百六十四話 テミア死す!?
はい、お待たせました!
続きをどうぞー。
「うあぁ、ああああああぁぁぁぁぁーーーー!!」
テミアが死んだ、俺のせいで! 弱かったせいで!! 守ると約束したのに!!
壊れたように叫び続ける輪廻。テミアは輪廻にとっては大切な存在であり魔族だろうが、間違いなく心の底から愛をしていた。なのに…………
テミアは死んだ。絶体絶命になっていた輪廻を庇い、貫かれて光の粒となって消え去ったのだ。
狂う様に叫んだ後、胃から胃液を吐き出して喉を焼いた。その痛みで思考に一瞬だけ空白が出来た。そのお陰で、テミアを傷付けた敵のことを思い出した。
首を上げると輪廻の眼にメガロモスが映りーーーー
敵、敵ッ! テミアを殺した敵! テミアが死んで、何故、お前が生きている!! こ、殺す、殺してやるぅぅぅ!! 虫ケラがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!
その憎しみや恨みが輪廻を包んでいくように、全身を黒く染まっていくーーーー
「な、なんだアレは!?」
遠くから見ていた啓二は輪廻の異常な姿になっていくのを目視していた。さっきまでの『破壊』が付加されていた魔力と違い、目視すると悍ましく感じ、恐怖を掻き立てる感情が浮かんでくる。
「なんか、ヤバくないか?」
「ヤバいに決まっているでしょ!? 輪廻の支えでもあったテミアが死んだのよ!!」
「輪廻君……」
貴一達も輪廻が危ない状態なのはわかった。だが、すぐ側に行けそうはなかった。輪廻がいる場所から結構離れているし、まだメガロモスとの戦闘中であったからだ。
そのメガロモスは異様な雰囲気から、無闇に突撃するよりも様子見をした方がいいと判断していた。
「だ、大丈夫なの……?」
「無理だね。近付いたら巻き込まれそうだわ~」
シエルはどうすればいいかわからずオロオロし、クレアは危険な場所から距離を取る動きをしていた。
ただ、皆が慌てる中でルフェアだけは落ち着いた雰囲気で何かを考えて呟いていた。その声は小さくて、周りには聞こえてなかった。
考えが纏まり、ルフェアは2人に秘密の話をするように呼び寄せていた。
「ちょっといいかのぅ?」
邪神の魔力に侵食されていく輪廻、さっきまでのように片腕や片脚だけを侵食させていくのと違い、余すこともなく全身へ黒い魔力を侵食させていく。
普通なら、半身程度でも死ぬ可能性が高いのに、輪廻は全身へ邪神の魔力を浸透させーーーー両足で立っていた。
その姿は二本のツノが生えた小さな竜のようだった。それだけだったら良かったが、その雰囲気は人間から掛け離れており、新しい邪神が生まれたのではないかと信じてしまいそうな力の化身がいた。
「グゴガァァァァァァァァァァァッ!!」
黒い竜の姿をした輪廻が咆哮を上げ、それだけで地面を揺らして近くにあった木々が吹き飛ぶ。
理性無きに見えるが、その眼はメガロモスを睨みつけていた。邪神の魔力に侵食されて理性を無くしていようが、自分の敵だけは忘れていなかった。
そして、ようやくメガロモスが動き出した。
金色のツノを枝分かれにして、輪廻を貫こうとする。大量に枝分かれしたツノが抜け道を無くして迫ろうとするがーーーー
「ガァッ!!」
輪廻は腕を一振りするだけで、貫こうと迫ってきたツノの全てが破壊された。そして、本体のツノまでもその攻撃が届いて、粉々に砕かれていた。
「ギィ!? ゴォォォ、ゴォォ……?」
メガロモスは意味がわからないというように、頭を振っていた。何故か、ツノが再生しないのだ。ポッキリと折れた状態で、生命を集めても全く治る気配がなかった。だが、メガロモスには長く考える余裕はなかった。
「シネェェェェェ!!」
小さな邪神の化身が来ているのだから。ツノが使えないなら、別の攻撃方法で対応しようとする。
コオロギの蟲人が使っていた音による攻撃を放とうとしたがーーーー
「ゴガァァァァァ!!」
また咆哮を上げ、メガロモスの音波を掻き消していた。そのまま、攻撃を掻き消されて隙が出来たメガロモスに魔力を纏った腕で腹に打ち込んでいた。
殴られたメガロモスは口から唾みたいな液体を吐き出し、数十メートルは吹き飛ばされていた。
空中で体勢を立て直すが、痛みに身体が鈍っていた。
ーーーーメガロモスは初めてだった。ただのパンチだけでここまでダメージを受けたのは。
死ぬ気で行かなければやられるーー、と本能で理解したメガロモスは輪廻を睨み、全身でぶつかる覚悟を決めた。
それに対して、輪廻は怒り、憎しみ、恨みを持って咆哮をするのだったーーーー




