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第百五十六話 完全体の実力

はい、続きです!

 


 完全体になった蟲王メガロモスは、巨体の身体を浮かせ、羽の内側では星空が輝くような幻想を映していた。その星空が渦巻いたかと思えばーーーー




「離れろぉぉぉぉぉ!!」


 輪廻は一先に、メガロモスから殺気を感じ取っていた。その声に、メガロモスの前方にいた人が横へ逃げるように走り出す。

 そして、両羽から黒い光線が二本も撃ち出された。




「うわぁぁぁ!?」

「が、な、何が……」


 逃げ遅れた冒険者が数人いて、黒い光線を浴びた者はどんどんと老けていくではないか。




「た、助けてくれ!!」


 叫んだのは、輪廻ごとイアを殺そうとした冒険者であった。その冒険者も黒い光線を浴びて、身体から生気が抜けるように若さが失われていく。

 そして、最後に顔がしわくちゃになり、髪が白く染まってーーーー白目を剥いて倒れた。無事だった者が寄って、支えようとしたが、既に事が切れていた。




「ろ、老人になって死んだ?」

「そんなことが……」

「あれ、輪廻君は?」


 絢は輪廻がいなくなったことに気付いて、周りを探してみるが姿は見当たらなかった。




「に、逃げたのか!?」

「輪廻君は逃げてないよ! 現に、仲間がそこにいる。輪廻君は仲間を置いて逃げる人ではないわ!!」


 冒険者がそんなことを言い、絢が一先に咎めていた。もし、輪廻がこの場から逃げるなら彼女達を残すのはあり得ない。




「だったら、姿が無いのはーーーー」


 それでも反論しようとした冒険者だったが、何らかの衝撃を感じて言葉が止まる。

 皆が感じた衝撃は、宙に浮いていたメガロモスが急に落ちてきたものだった。メガロモスの上空には、1つの影が見えた。


 その影とは、輪廻のことだ。




「いつの間に!?」

「輪廻君!!」

「チッ、ダメージはないか」


 輪廻は『静隠気』で姿と魔力を隠して、メガロモスの上空まで駆け上がっていた。気付かれていない内に、メガロモスの上空から『極気圧』で押し潰そうとしたが…………、地に付けるだけで終わった。

 地に付けることは出来たが、ダメージらしいダメージは見受けられなかった。




「ッ!? ハクゥ!!」


 急にメガロモスの首が180度回転して、輪廻がいる場所へ口から黒い光線が放たれた。さっきと同じ光線であり、当たれば冒険者のように老人になって朽ちていくが…………




「輪廻君!?」

「大丈夫ッ! 今の内だぁぁぁ!!」


 すぐにハクを呼び寄せたことで、防御に間に合っていた。今のメガロモスは地に落ちており、隙だらけの姿になっている。

 輪廻を信じて、地に落ちるまで待機していたテミア達が動く。テミアとルフェアは先程と同じように協力して、巨大な氷柱が落ちていく。シエルは自分の魔力を回復すべく、薬を飲み干してから闇魔法の『魔隕石』を数回発動した。クレアは『フリスビー』を分裂させ、限界まで出せるだけの数に増やしていった。最後に…………ウルが全ての魔法を覚醒する『魔豪昇格』を発動した。

 それらの攻撃が、メガロモスに襲いかかっていく。

 爆発を起こして、地面を揺らして砂煙が吹き荒れる。だが…………、メガロモスは無傷で羽に付いた砂を落とすように幅いていた。




「なっ!?」

「嘘でしょ!?」

「くっ、伝説の通りか…………」


 ルフェアが言う伝説とは? 輪廻もそれが気になったが、メガロモスはテミア達を無視して、眼を輪廻がいる場所へ向けていた。

 羽が先程と違い、光の粉…………鱗粉みたいな物が散らばったかと思えば、地面から凄さ増しいスピードで太い蔓が伸びていた。こんなことも出来たのかと驚きながら、”虚冥”で反撃をするがーーーー




「む!? 破壊しても……あっという間に再生するだと!?」


 輪廻の攻撃は太い蔓を千切って破壊してもいくが、千切った先から新しい蔓があっという間に生まれていくように、再生していた。反撃ではなく、避けるべきだったと後悔しつつ、ハクを纏わせた。

 そして、輪廻は大量の太い蔓に呑み込まれーーーー






 数十秒もしない内に、アルト・エルグの中心にある大樹よりも巨大な大樹が出来上がった。




「御主人様!?」

「大丈夫だ! ハクを纏わせたから、無事だ。ただ、出てくるまでは時間がかかりそうだが……」

「で、でも、蟲王は自然を操れるの!?」

「わからんが……、蟲王は生命を操れたはず。おそらく、周りの森を急激に成長させたのが正しいかもしれないのぅ」


 ルフェアの言う通り、メガロモスは周りにあった森を普通ではありえない成長をさせて、大樹の中に輪廻を封じ込めたのだ。その大樹は生きているように蠢いており、中にいる輪廻を出さないようにしているようだ。一先ず、輪廻が身動きが出来ない中、メガロモスが次に標的を変えてくる。

 そう、無傷だったといえ、攻撃されたことを許すことはなかった。メガロモスは雄叫びを上げ、テミア達に向かって突進していった。




「吸血鬼幼女! 伝説とは何か、説明しなさい!!」

「言われなくとも! 蟲王はある一定以下の攻撃を受けても、無傷だったと書物に残っていた。推測であるが、先程の攻撃以上に強い攻撃をしなければ、傷一つも付かんだろうな」

「ある一定って……、もっと詳しい情報はなかったのですか?」

「ない」


 ハッキリしない情報に頭を抱えるシエル。一定以上と言うのが、どれくらいなのがわからないと、攻撃してもダメージを与えるのは難しいだろう。なら、テミア達がすべきすることは、1つだけ。




「全員で全力を尽くして攻撃しなければなりませんね」

「あぁ、それしかないだろう」

「どうもなれ~ですッ!!」

「はぁ、やるしかないか」

「うーむ……」


 テミアは覚悟を決め、構えて眼を細めた。


 ルフェアは少し諦めを含めたような表情になりつつも、やすやすとやられるつもりはなかった。


 シエルはヤケっぱなしであっても、頭の中は冷静に敵を見据えていた。


 ウルは他に方法がないかと考え、溜息を吐く。


 クレアはメガロモスに弱点がないか見極めようとする。


 こっちへ向かってくるメガロモス。それぞれが違う形であっても、倒す気概だけは消えずに、巨大な敵へ相対するのだったーーーー










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