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第百五十四話 メガロモスの繭

はい、続きをどうぞ!!

 


 メガロモスの親衛隊である蟲人は一体残らず倒した。残りは、繭に籠っているメガロモスだけだ。


「む、アイツらは勇者のパーティか?」


 他に召喚者であるクラスメイトも何人かいた。啓二達の姿が見えないのは、まだ魔物と戦っているのだろう。勇者のパーティから火や氷などが繭に向かって放っていたから、繭を破壊しようと動いているようだ。

 繭を破壊するなら、勇者のパーティよりも強い啓二がやった方がいいんじゃないかと考えていたら……




「あ、輪廻君!!」

「輪廻がこっちに向かっているということは……あの蟲人を倒したのか!?」

「まだ魔力があったら、こっちを手伝って!! 私達じゃ、火力が足らないの!!」


 こっちに気付いた絢、貴一、晴海が声を上げる。英二は…………悔しそうな顔をして逸らしていた。




 英二は悔しがっていた。勇者なのに、ここへ来ても何も出来ていなかった。魔王軍の幹部と戦いはメンバーを外され、啓二と一緒に魔物の排除をしていたが、啓二の助けになるために来たのに、魔物の数が多過ぎて反対に助けられてしまう場面があった。

 今も繭を破壊しようと、全力で攻撃を加えていたが、傷一つもない。

 パーティ仲間である三人は輪廻が来ると、喝采を上げている。勇者である英二よりもまだ小さい輪廻に頼りをしている。

 自分がこんなに役立たないことに悔しくなり、剣を持つ手が震えていた。


 そんな英二の様子を知らない輪廻は、近くまで来た繭の様子を観察していた。勇者パーティが全力で攻撃をしてみたが、傷は一つも無かった。輪廻が観察している内に、どんどんと仲間達が集まっていく。


「来たか」

「お待たせてすいませんでした。この婆さんを回復させるのに、手間取って……」

「私は頑張ったよ? メイドのために時間稼ぎ、足止め、隙を作ってあげたのに、この言い草…………うわぁーーーーん!! 少年んんんーーーー!?」

「煩いわぃ。今は戦争中だから、抱きつくのは後にせよ」


 テミア、シエル、ルフェアがいつもの雰囲気で輪廻のとこに集まっていた。テミアは毒を吐き、それに傷心中のシエル、輪廻に抱きつこうとするシエルの襟を掴んで止めるルフェア。

 最後に来たウルはその様子に呆れていた。




「お前らは戦争中だと理解してんのか? 余裕過ぎるだろ……」

「あ、アイツは!?」

「なんで、輪廻君の側に!?」

「あん? お前らは…………あぁ、弱い勇者の奴らか」


 英二達はウルと面識があり、輪廻と休戦していることを知らないので慌てて武器を向けていた。




「あ、知らないんだっけ? ウルとは休戦中だ。今はあの蟲を止めなければならないからな」

「というわけだ。足を引っ張るなよ」

「輪廻君、本当なの!?」


 絢はウルが残虐な魔人だと聞いている。なのに、休戦して組んでいることが信じられないようだ。絶句している絢に、テミアが鼻を鳴らしていた。




「頭が硬いですね。先程まで敵だった者が味方になる。そんなことは、戦争では良くあることよ。頑固な脳みそに味噌でも掛けて、柔らかくしたら?」

「脳みそに味噌って何よ!? だしゃれのつもりなら、つまらないわよ!?」

「あら、笑わせるつもりで言ったわけじゃないわよ? 貴女の頭は笑いで一杯なの? 戦争中なのに、お花畑の頭で幸せそうだね」

「放っていた方がいいわよ……」


 シエルが疲れたように絢へアドバイスを送る。反論するごとに、その毒が強くなるなら、無視すればいい。それが、シエルの経験から出た答えであった。




「まぁ、とにかく休戦中だ。今はあの繭を破るぞ」




 輪廻はそう言って、”虚冥”を放った。斥力を強めにして置いたから、衝撃が凄いものになったが………………繭は無傷だった。

 勇者パーティが放っていたのよりは数倍の威力があったのに、それでも無傷。まさか、輪廻の攻撃でも傷一つも付かないとは、この繭はどれだけ硬いのか?

 傷一つも付けられなかったのに、輪廻は慌てた様子もなく、落ち着いた表情を浮かべていた。




「うん、硬いな。予想出来ていたが、”虚冥”でも傷一つ無しか」

「繭も硬いが、それを纏うように防御の結界があるのは厄介のぅ」


 他の人には見えてない物がルフェアに見えており、ルフェアの眼には薄い緑色の膜が映っていた。さっきの”虚冥”は繭に届く前で防がれていたのだ。


「防御の結界ねぇ、これはどうだ?」


 輪廻はカオディスアの『透過剣』で結界を無視して繭本体へ攻撃しようとしたが…………弾かれた。


「む? 透過出来ない…………、もしかして、魔力で出来た結界じゃないのか?」

「うむ、我が感じるには、魔力とは少し違うような感覚がするのぅ」

「え、魔力じゃないなら物理的な現象で?」

「老婆エルフ、馬鹿ですか? 物理的な現象であれば、ご主人様の攻撃が通っていたはずです。幼女吸血鬼が言いたい事は、物理や魔力では無い何かの力が働いている可能性があるという事なのです。もう頭は残念になったどころか、手遅れになってしまいましたか?」

「………………」


 毒舌にシエルは耳を塞いで無視をする。もう心が限界に近い状態になったら、耳を塞ぐようになったのだ。

 それを見たテミアはやれやれと首を振りつつ、輪廻にある案を提案する。




「魔法では弾かれてしまうので、力尽くに物理の攻撃で破壊しつつ、このまま繭ごと葬らなければならないかと思います」

「俺もそう思う。結界だけを破壊しても、すぐに修復されたら体力の無駄だ」

「なら、テミアがその突撃役をやるか?」


 このパーティで筋力が一番高いのはテミアだ。だが、当のテミアは首を横に振っていた。




「私もそうしたいと思いますが、まだこの力は為ったばかりで十全に発揮出来ません。賭けになるような状況は控えるべきかと」


 一発に全力を掛けて、失敗したとなれば、輪廻達は消耗した状態で繭を破ったメガロモスと戦うことになる。それを避けるために、確実に繭ごと葬る攻撃をしなければならない。他に方法はないかと考えていた時にーーーー




「誰だ!?」


 こっちへ近付いてくる強者の気配に、警戒する輪廻達。向こうの森から現れたのは、露出が多い服を着た女性、クレア・トーラスだ。その手にはけん玉を持っており、ポンポンと音を鳴らしながら、こっちへ歩いていた。




「やっほー、君が輪廻君かなー? ダガンとメルアから聞いたけど、君がリーダーをやってるって。あ、私はクレアね」

「クレア? 確か、『最強』のSSSランク冒険者のだよな?」

「お、知っているなら、話が早いね」


 クレアのことはこの前に、メルアから聞いており、話に聞いた通りに露出が多い服を着ていて踊り子みたいな奴だなと思った。




「ダガンとメルアに会ったのか?」

「そうね、ギリギリだったけど生きているよ」

「……そうか、すまなかったな。お前の仲間を危険に合わせて」

「構わないよ~。2人も覚悟を決めていたんだし、相手の実力もほぼ未知数だったからね。あら、何故、魔人ウルが一緒にいるのかしら?」

「休戦中だ。今はこいつをなんとかしないと全滅するからな」


 メガロモスの繭に指を指して、今の状況を説明してやる。その説明にうんうんと頷いて、クレアはわかったわ! と言って、玩具魔法を発動した。




「少し調べてみるね。”フリスビー”、分裂」




 一つのフリスビーが現れ、そこから大量に分離し始めた。そして、繭を囲んで…………爆発させていた。

 これで何を調べているんだ? が皆の認識だった。クレアだけはうんうんと何かを理解したような行動をしていた。




「わかったわ。頂上の一部だけが脆いわよ」

「…………それだけでわかったのか?」

「まぁね」


 輪廻は驚愕していた。クレアがやったことは、繭を守る防御の結界を爆発させることで、弱い部分を探し当てたのだ。そんなことで、弱い部分を探し当てるのは輪廻には無理だ。おそらく、ルフェアに聞いても無理と言うだろう。


 これが『最強』の二つ名を持つ冒険者、クレア・トーラス。




「ねぇねぇ、ここからは力を合わせて、破りましょう!!」




 輪廻がまだ子供だからなのか、話し方を合わせて楽しそうに話すクレアだった。まるで、ゲームをやるように強固なる結界を破って敵を倒そうと、笑顔で呼びかける。

 輪廻はメルアから聞いた通りだなと、再認識するのだった。

 まだ子供の心を持った大人、それがクレア・トーラスと言う人物であった…………








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