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第十五話 捜索

本日二話目



 輪廻とテミアは真夜中、宿にも泊まらずに外で野宿をしていた。

 ティミネス国でのんびりしていると捜しに来た兵士達に見つかる可能性が高くなるから、すぐに別の国に向かわなければならないのだ。




「御主人様、これから何処に向かう予定ですか?」

「言っていなかったな。人間の国で、三番目に大きい国。まぁ、人間の国は三つしかねぇけどな。ラディソム国に向かうぞ」

「ラディソム国……、確か、周りにはダンジョンが二つあって、冒険者が集まる場所でしたね」

「……良く知っているな。それも勉強・・でか?」

「はい」


 やはり、詳しく説明しないテミア。もう追求はしないつもりだが、気になるものは気になるのだ。




「話を変えますが、ホブゴブリンを倒したのだから、レベルアップしたのでは?」

「ああ……、確認はまだだったな」


 言われて、ステータスのことを思い出した。ホブゴブリンはFランクのゴブリンより強いEランクなのだ。少しはレベルが上がっているだろうと思い、確認をする。




−−−−−−−−−−−−−−−


崇条輪廻 11歳 男


レベル:4

職業:暗殺者

筋力:240

体力:290

耐性:160

敏捷:550

魔力:520

魔耐:260

称号:邪神の加護・暗殺の極み・冷徹の者・魔族を虜にした者

特異魔法:重力魔法(重壁・重圧)

スキル:暗殺術・隠密・剣術・徒手空拳・身体強化・鑑定・隠蔽・魔力操作・言語理解

契約:テミア(魔族)


−−−−−−−−−−−−−−−




 確認したら、レベルが2上がっていた。ホブゴブリンを5体倒して、レベルが二つ上がったが、またホブゴブリンを5体倒してもレベルは上がらないかもしれない。

 レベルが上がるつれに、必要な経験値が増えるからレベルを早めに上げたいなら格上の相手を殺せばいい。




(称号とスキルは簡単に増えないみたいだな。耐性が低いから、出来るだけ攻撃は避けないとな……)


 テミアはレベルが35だったから、確認しなくても上がってないのは予測出来る。




「レベルは上がったが、お前のステータスと比べたらまだまだだな」

「いえ、レベルが離れているのですから、仕方がないかと思いますよ?」

「それもそうだけど……。あ、ギルドカードのことを思い出したのだが、名前はどうやったんだ?」


 元の人間が持っていた魔力を使ったから人間と表示させることが出来たが、何故、名前がテミアになっているのか疑問だったのだ。




「あら? 名前はそこまで考えてなかったのですか? てっきりそこまで考えて、テミアにしたかと思いましたわ」

「え、どういうことだ?」


 輪廻は名前に深い意味があって、考えたわけでもないのだ。ただ人間らしい名前にしただけなのだ。




「だって……、名前が同じですし」

「は?」


(名前が同じ? ……………………まさか、そんな偶然が?)


 それが本当なら、輪廻は確率の低い偶然を引き起こしていたことになる。ついに、テミアが答えてくれる。






「元の人間もテミアですもの」









−−−−−−−−−−−−−−−






 輪廻達がゴブリン討伐に行っていた頃、王城でのこと。

 朝ご飯も食べ終わり、ロレック国王、エリー王女、菊江先生、ゲイル、輪廻と仲が良かった四人が一つの部屋に集まっていた。そこに、またメイドさんが慌ててドアを開けながら用件を伝えてきた。




「エリー様! テミアもいません!」

「テミア……? あ、貴女と同じメイドをやっている子?」

「え、メイドさんもいなくなっているって、どういうことなんですか?」


 朝、輪廻が手紙を残していなくなったことに王城内では大騒ぎだったのだ。実は、輪廻のことで密かに勇者より期待されていた人が多く、旅に出たことに驚きを隠せないでいたのだ。

 それもようやく落ち着いてから、もう1人もいなくなっていることに気付いた。


 それが、メイドの1人、テミアのことなのだ。




「実は、メイド服が何着か無くなっているので、持ち出したかもしれません」

「輪廻に続いて、テミアと言うメイドもいなくなっている……」

「一緒に旅に出た可能性が高いねぇ……」

「何で……?」


 絢は落ち込んでいた。もし、一緒に旅に出たなら何故、私ではなくメイドのテミアなのか。

 テミアに何か戦闘などで、特別なことが出来るのか……? と考えてみるが、それは伝えに来たメイドによって反論された。




「テミアは何か出来ました?」

「いえ……、メイドになったばかりで、家事などは私達より下で、戦闘は全く出来ない人なのです」

「わからないな……、輪廻がそんな子を連れていくのか?」

「たまたま出た日が同じだっただけで、別々とか……?」


 そう、輪廻が1人だけで旅に出ていて、テミアが別の道に進んだ可能性もあるのだ。だが、それもロレック国王によって有り得ないと判断された。




「ただのメイドがあの警備を抜けて外に行けるとは思えん。夜の警備は昼のより厳重なのだから」

「それでは、輪廻君もここを出ていけないのでは?」


 英二がそう言うが、今まで黙っていた貴一が反論していた。




「……いや、あの輪廻だったら他に何か力を隠していた可能性が高い。頭のいい奴のことだ。初めから旅に出ると考えていたなら、まず力を隠すはずだ」

「何故、貴一にそんなことがわかるの?」


 ハッキリと断言する貴一に晴海は疑問を感じる。輪廻と出会って短いのは私達と同じなんだから。




「あの夜行の弟だぞ? 何故、旅に出たかったのかわからんが、突飛なことをしてきた夜行ならその弟も可能性があると言いたいだけだ」

「ああ……、夜行から繋げたわけね。夜行と長い貴方が言うならその可能性もあるわけね」

「力を隠していた……? あれだけしてきて、まだ力を隠していたのかよ!?」


 英二は、貴一の話で輪廻の実力をまだ全て見せていなかったことに驚愕する。




「むぅ、やはりそれだけの人物なら、連れ戻したいと思うが、皆はどうなんだ?」


 今までの輪廻のやってきたことを聞いて、ロレック国王も期待をしていたのだ。今の輪廻に、ここの厳重な警備を抜ける程の実力があるなら、勇者と同等かそれ以上の潜在能力が秘められている可能性がある。故に、国王は最高戦力候補として連れ戻したいと思っている。




「もし1人の旅だったら、危険ですよね……?」


 菊江先生はまだ王城から出たことないから、国の外のことを知らない。




「うむ、もしテミアと言うメイドが一緒にいても危険と言っても良いほどだ」

「国の外には魔物がうようよとしていますよ……。輪廻君の実力でも、1人だったら危険だとしか言えません……」


 ロレック国王とエリー王女の話で、菊江先生は顔を青ざめる。




「なら、連れ戻さないと!!」


 菊江先生は生徒が大事だが、同時にも一緒に召喚された輪廻も先生の保護対象でもあった。だから、危険な場所には行かせたくはないと考えている。




「わ、私が連れ戻しに行きます!!」

「絢!?」


 そこに絢が自分が捜しに行くと言うが…………




「駄目だ。兵士達に捜索命令を出す」

「何故、駄目なんですか!!」

「絢! 落ち着きなさい! 貴女はこの国のことを知らないでしょ! この国を良く知っている兵士達に捜して貰った方が早く見付かるわ」

「…………」


 晴海の言葉は正論であり、絢が捜しに行っても、脚を使って探すしか出来ない。兵士達に任せれば、人に聞き、ギルド等に聞いたりして、輪廻の足取りを掴めるかもしれないのだ。

 国中で捜し回ることになるが、兵士全員で捜すなら夜になるまでには全てを回ることが出来るのだ。

 国と言っても、地球のような国ではなく、壁に囲まれた一つの町のようなモノであり、それ程に広くはない。




「……わかりました、大人しく待っています。だけど、何かわかったらすぐに教えて下さい」

「了承した。ゲイル、兵士達に通達を頼むぞ」

「はっ!」


 ゲイルはすぐに兵士達に輪廻のことを通達するために部屋を出て行った。輪廻は英二と同等に有名だったので、兵士全員は顔を知っている。

 すぐに見付かるだろうとロレック国王は考えていた。




「後のことは兵士に任せて、皆は訓練に戻るように」

「ああ、もっと強くならないとな……」

「……うん」


 絢は輪廻に置いておかれたのは、実力がなかったからだと考え、訓練に打ち込んだのだった。














 夜、また同じメンバーが集まっていた。輪廻のことの報告のためだ。

 ゲイルと兵士が国中を捜し回って、輪廻本人は見付からなかったが、情報は得たのだ。

 説明をするのは、ゲイルだが、ゲイルの顔色は良くなかった。捜し回ったから疲れているだけなのか、嫌な情報だからか、わからないが…………




「皆様、これから話すことは本当のことなので、最後までお聞きをお願いします」

「何かあったのか?」

「輪廻君は無事なの!?」


 絢は輪廻本人は見付からなかったと聞き、ゲイルの顔色が悪いことから嫌な想像をしてしまう。




「まず、ギルドで登録したことから話しましょう…………」






 ゲイルの話を簡単に纏めたら、こうなった。



・輪廻はメイドを1人連れていて、御主人様と呼ばれている。そのメイドはテミアで間違いないと。


・ギルドでギルドカードを作ったら、Dランクの冒険者に難癖を付けられて私闘をすることになり、輪廻が圧倒する。


・難癖を付けられたDランクの冒険者はパーティ仲間に見限られて、そのパーティ仲間と一つの依頼を受ける。


・輪廻、テミアと組んでいた冒険者の話では、輪廻とテミアだけでホブゴブリン5体とゴブリン30体以上の集団相手に無傷で殺し尽くした。


・依頼報告を終わらせて、すぐにこの国を出た。




 と、報告を終わらせたが、この部屋は静かだった。

 何故なら、皆が絶句するように、驚愕する顔を浮かべていたのだから。




「…………はっ!? そ、その報告は本当のことなのか!?」


 一番、気付いたのはロレック国王だった。続いて、皆も覚醒する。




「Dランクの冒険者を圧倒した……? Dランクの冒険者はステータスでは平均500は超えているのに?」

「いやいや、魔物35体以上を相手して無傷で勝ったぁ!?」


 驚きだったのはこの二つの情報だった。その話が本当なら、輪廻はDランクを超える実力を持っているということになる。




「メイドと一緒……」

「絢……」


 絢はメイドも一緒だったことに少しショックを受けていた。

 テミアはゴブリン30体以上の相手に、無傷だったことから、戦闘技能を持っていた。輪廻はそのことに気付いたから、絢よりもテミアを連れていったと絢は考えていた。


 テミアが戦えたことに、ロレック国王とエリーはわからなかった。戦闘は出来ないと聞いていたのに、隠していたのか?


 そして、輪廻はどうやってテミアの実力を見抜いたのかも気になったが、輪廻とテミアは既に国の外に出ており、もう捜しようがないのだ。




「あははっ! さすが、夜行の弟だなっ!」

「それにしても、異常だろ……、どんな力を隠していたんだ?」

「さぁ? 次に会った時に聞けばいいんじゃねぇ? 生きていれば、何処かで会えるだろうし」

「何処かで……」


 絢は貴一の話を聞いて、一つの案を思い付いた。




「そうよ……、ここにいたままじゃ、輪廻がここに来ない限り、会えない!! なら、私も旅に出る!!」

「「絢!?」」


 突飛な案に英二と晴海が声を上げる。




「ははっ! それも面白そうだなっ! 俺も行こう。その方が輪廻に会える可能性が高いからな。輪廻がここに確実に戻る保証はないし、自分から捜しに行った方がいいだろうな」

「貴一まで!」

「待て! 外は危険だと言っているだろ? それでも行くのか?」

「うん」


 英二の言葉に、ハッキリと答える絢。




「……わかった、僕も一緒に行こう」


 晴海は仕方がないわねぇ、とため息をつき、ロレック国王に聞く。




「一人旅は危険と言いましたが、パーティとして行動するのは駄目ですか?」

「むっ……、今のレベルではな……」


 訓練を重ねたら、旅に出るパーティと近くにあるダンジョンに潜るパーティに分けるつもりだったし、旅に出るパーティが英二達でも問題はないが、まだレベルが低いから迷っていた。

 旅に出る前に、近くで魔物を倒してからなら問題はなかったが、輪廻を捜しに行くことが目的で、すぐに国の外に出て行きそうで心配なのだ。

 苦悶していたロレック国王に手を挙げる者がいた。




「ロレック様、私も一緒に行ってはどうですか? 旅をしながら鍛えさせるのも出来ると思います」

「それでは、部下を纏める者が……」

「私の部下達は優秀な者ばかりですので、副隊長に任せれば大丈夫です」


 ゲイル隊長はハッキリと答える。ロレック国王はその気持ちが伝わったのか…………




「…………わかった、ただし、ゲイル隊長の言うことに従うことが条件だ」

「あ、ありがとうございます!!」


 絢は嬉しそうに礼をして部屋を出て行った。おそらく、旅の準備をしに行ったのだろう。




「俺も行こおっと〜」

「絢ったら」

「なんか、無理言ってすいません……」


 迷惑を掛けたことをロレック国王、エリー王女、ゲイル隊長に謝る。




「いい。その代わり、ちゃんと輪廻を見付けるように」

「うふふっ、無理だけはしないでね」

「構わない。旅の途中でもビシビシと鍛えさせるからな」




 次の朝、英二、絢、晴海、貴一、ゲイルはパーティを組み、旅を出ることに…………







次は明日の朝です。

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