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第百四十二話 輪廻の楽園とは?

はい、続きを書けたので載せます!!


 


 輪廻は学校で友人と勉強をし、休み時間に遊んだりする普通の子供みたいに学校の生活を楽しんでいた。

 それらは夕方になり、帰宅の時間となる。輪廻は夜行に聞きたいことがあったため、寄り道をせずに真っ直ぐへ帰る。




「ただいま! 夜行兄さんは、もう帰ってきている??」

「おかえり、夜行なら道場にいるわ。朝のことで、話があるみたいだから輪廻君を待っているわよ」

「うん、わかったー」


 朝のことといえば、全国大会のことだ。輪廻も全国大会のことを聞きたかったから丁度良かった。すぐに道場へ向かい、夜行の姿を探していく。道場には輪廻ともう一人しかいなかったからすぐに見つかった。

 道場の真ん中に後ろ向きで立っている男がいて、それが夜行兄さんだと輪廻はすぐにわかった。見慣れている胴着の姿で夜行も後ろ姿のまま、輪廻が来たことに気付いた。




「輪廻か。帰ってくるの早かったな」

「うん、寄り道をしてなかったからね」


 普通の兄弟の会話。輪廻は朝から違和感を感じつつも、会話を続ける。




「そうだ、僕は聞いてないよ! 夜行兄さんが全国大会に参加することを!!」

「あぁ、驚かそうと思って、まだ言っていなかったが、父から教えられたみたいだね。母から聞いたよ」


 夜行はまだ振り向かずに、道場に飾っている額縁を見つめていた。そこには、何代か前からある言葉が書かれている言葉があった。『起源』とーーーー




「今まで、俺はこの言葉に向かって鍛えてきた。なぁ、輪廻は『起源』とはどう言う意味だと思う? 剣を教えてもらった師である祖父は、強くなればいつかその意味がわかるようになると…………。だが、俺はまだその意味を見つけられていない」


 輪廻は夜行が今まで努力してきたのを見てきた。夜行は決して、才能がある人ではなかったと父から聞いているが、努力によって今の力を勝ち取った。




「『起源』……」




 前からその額縁が飾ってあったな…………あれ、前から?

 なんで、その言葉が出たのか疑問が浮かんだ。さらに、何故か『暗殺者』という言葉も思い浮かんだ。

 混乱している輪廻だったが、途中から黙ったことに夜行はわからないと読み取ったようだ。




「すまない、変なことを聞いたようだ。俺の様に剣を習ったわけでもないのにな」

「…………」


 輪廻は既に夜行の言葉は耳に入っていなかった。朝からおかしいと違和感を感じていた輪廻は混乱する頭を鎮めて、考えてみた。起源の意味をそのまま受け取れば、物事の始まりだという事だが、この言葉を飾った先人はそんなことを思って飾ったわけではないぐらいはわかる。

 武術家として考えるなら、初心に還るだと輪廻は考える。行き詰まったら初心に還って見るのもいいと思うが、夜行兄さんはどう思っているのだろう。




「夜行兄さんは『起源』の意味を考えなければならないの?」

「……確かに必要なこととは言えないが、亡きの祖父から最後の宿題を途中から放り出したくはない」


 祖父は輪廻が七歳の頃に亡くなっており、夜行兄さんは宿題だと言った…………




 ずきっ




 急に頭痛が起こり、顔を顰める輪廻だったが夜行はまだこっちへ振り向いてはいなかったから、輪廻の様子に気付かないまま、話し続ける。




「俺はもっと強くなりたいと思っている。剣を習い始めたのは、上手くなった自分を祖父に誉めてもらいたかったからだ。今はその祖父はもういないが……今まで続けた剣を捨てることはなかった。捨てられなかったというより、強くなれば天国にいる祖父も喜んでくれるじゃないか? と考えるようになったんだ」


 輪廻はここで、違和感が更に強まった。この人は何を言っているんだ? とまるで独り言を聞いているような気分になっていた…………


 夜行兄さん……いや、夜行はそんなことで剣を習い始めたわけじゃないと、心が否定していて、頭の中ではそうだったなと肯定している。

 そこが違和感と感じて、朝から感じた違和感を考えるようになった。




 違和感を感じた時はどんな時だったか?




 両親から挨拶されたこと。


 鞄がいつもより軽く感じたこと。


 全力で走ったのに、あまり疲れがなかったこと。


 そして、たった今に夜行と話していると違和感を感じてばかりで鬱陶しいーーーー




 頭の中では違和感に埋め尽くされてイライラしてきた所に、夜行がようやくこっちへ振り向いてきた。




 夜行の顔は柔らかな笑顔を浮かべていた。




 それだけなら、二人が仲が良い兄弟で、弟へ優しい笑みを浮かべているように見えるだろう。だがーーーー




「違う!!」

「え、輪廻?」

「これが楽園だとーーーー」






 次の瞬間は夜行にしたら予想外の行動であり、読めなかった。




 まさか、輪廻が兄である夜行へーーーーいつの間に現れたカオディスアで貫いていた。




「ご、ふぅ! あ、あぁ、お前は……」

「これが俺の楽園だと抜かしやがったな? …………イア!」


 輪廻はイアの催眠魔法から抜け出し、全ての記憶を取り戻していた。腹にカオディスアを貫かれた夜行の姿がブレて、イアの姿へ変わっていた。




「ど、どういうことだ、お前の心では普通の生活を望んでいたはずだ!! いつも家にいる両親、優しい兄、暗殺者の家系ではない生活を! お前はそれを望んでいたんじゃないか!! なのに、何故ーーーー」

「確かに、俺はそのような生活を望んでいた時期もあった。だが、お前は一つだけ間違いを犯したから目を覚ますことが出来たわけだ」

「一つの間違いだと……?」


 イアはこの楽園を作る前に輪廻の記憶を受け取っていた。輪廻が何を望んでいるのか? それらを解析し、作られたのがこの世界だ。

 だが、輪廻は一つだけ間違いを犯したと言っている。




「夜行を楽園に出したことが間違いだったな。お前は夜行がいない三人だけの家族へ作るべきだったんだよ」

「…………意味がわからない」

「わからないよな。お前は俺の心では普通の生活を望んでいると言っていたな。それは間違ってはいなかった。だが、夜行を出したことから俺の心を読んだわけじゃない。おそらく、記憶を見ただけだろ?」

「っ!」


 図星であった。確かにイアは心を読んだような言い方をしていたが、実際は記憶を見ただけで判断したのだ。大体の望みは合っていたが、一つだけ間違いを犯したのは…………そういうことなのだ。

 催眠魔法の最終奥義である『夢之理』は楽園を作り出して、堕落させることが出来れば勝つ。まさに、術者に有利な一撃必殺だったが、それさえも輪廻には破られた。




「わからない、何故、お前は夜行という兄をそれ程に嫌ってる?」


 イアが作った楽園であれば、現実の夜行がどんなに非道な奴でも優しい兄と為ることが出来る。だが、輪廻はそれさえも否定した。




「まぁ、記憶を見ただけでそこまで夜行のことを理解出来るわけねぇか」

「…………」


 イアが見た記憶では、輪廻は夜行を嫌っている所があり、夜行はサドとも言えるぐらいに非道な訓練を輪廻にやらせていた。だが、暗殺者の家系ではなく、さらに夜行が優しくなれば、理想な兄と言えるぐらいに高いスペックを持っていた。

 だから、優しい夜行を出したのだ。




「見た目ではわからないのだろうが、ずっと一緒にいた俺にはわかる」


 輪廻だけが見抜いた夜行という印象とはこうだ。




「あの夜行は兄と呼べる家族ではなく、人格の全ては嘘で塗り固め、全てを欺くために生きてきた人間としか思えない……! いや、自分と同じ人間なのか疑わしい所だ」




 輪廻がそこまでに否定するぐらいに存在ごと嫌うとは夜行とはどういう奴なんだ? と疑問が出たイアだったが、その時間はなかった。




 まだイアの腹に刺さっているカオディスアから魔力が溢れ出てきて、周りの景色にヒビが入っていくのがわかったからだ。




「……俺の催眠魔法が完全に敗れたか」

「この魔法は確かに厄介だが、俺には効かなかったな。まぁ、お前に心を読める能力が備わっていたら、この結果は違っていたかもな。ーーーーカオディスア! この偽りの楽園を破りやがれぇぇぇぇぇーーーーーーーーッ!!」




 パリッと全ての景色にヒビ割れが入って、二人はカオディスアから発する光に包まれていく…………






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