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第百四十一話 輪廻の楽園

はい、続きをどうぞ!

 




 チュンチュン…………と鳥の囀りが聞こえ、日差しが窓から照らしていく。良い天気で一日が始まる中、ある街で他の家よりも少し広めで道場がある家が一軒だけあった。

 その家で、ある部屋の中には二人の親子がいた…………


 その親子のやり取りは何処でもあるような日常が展開されていた。






「輪廻君、起きなさい。夜行はいつも朝練で早いのに、輪廻君はいつもお寝坊さんなのね」


 歳を取った女性は兄と比べて、クスクスと笑みを浮かべながら、まだ寝ている輪廻の頭を撫でている。頭を撫でていたお陰か、輪廻は窓から差し込む日差しから逃れるように布団を深く被る。




「いい加減に起きなさい! 朝ご飯が冷めるでしょ?」

「ぅ、うん……あと五分……」

「駄目よ。目を覚ましたなら、着替えてから下に降りてきなさい」

「ふぁあい」


 輪廻は眠そうに目を擦りながら布団から出ていく。朝ご飯を食べるために着替えをさっさと終わらせてから下へ降りていく。下のリビングでは、父親と母親は輪廻が来るまで食べずに待っているのだろう。兄である夜行はいつも剣道部の朝練に行くため、朝に顔を合わせることは少ない。




「おはよー」

「おはよう。時間がないから早く食べるように」

「おはよう。御飯は中盛りでいいかしら?」


 何時ものように、両親から挨拶をしてくれる。…………何時ものように?


 輪廻は一瞬だけ違和感を感じた。だが、その疑問は父親から放たれた言葉によって霧散してしまう。




「夜行は来週から剣道の全国大会に行くらしい」

「えっ! 僕はそんなことを聞いてないよ!?」

「あ、まだ秘密だったのか?」

「ふふっ、大会間近になってから驚かせてやる! と言っていたじゃない」


 兄が全国大会へ参加することに、輪廻は誇らしい気分になっていた。自分の兄は凄い人なんだ! と憧れのような感情を持っていた。






「む、そんな時間じゃないか。輪廻も学校に行くんだ」

「うん!」


 輪廻は学校へ向かうための準備をして、いつも持っていく手提げ鞄を掴んで部屋から出ようとする。




「あれ?」


 いつもと違って鞄が軽いような気がした。もしかして、物が足りてないかと思い、調べてみる。

 筆箱、教科書、ノート、体操着…………調べたが、忘れ物はないとハッキリ出来た。




「……あれ、この底板は前からあったっけ?」


 底板に目が向き、前からあったか思い出せず、取り出してみようと手を近付けてーーーー




「おーい! 早く行かないと遅刻するぞ!!」

「あ、はーい!」


 輪廻は底板に手を付けず、さっさと鞄のファスナーを閉めて下へドタバタと降りていく。




「いってらっしゃい」

「いってきます!!」


 毎朝は母親に見送られて、学校へ向かっていく。そこでまた輪廻は違和感を感じたが、走らないと遅刻するので深くは考えずに走っていった。




 そして、ギリギリに学校へ着いた輪廻は息を整えようとしたが、自分は思ったより疲れてないことに頭の上へハテナを掲げていたが、クラスメイトから声を掛けられて、気にしないことにした。




「おはよー!!」




 輪廻は元気よくクラスメイトへ挨拶をして、誰にもある平和な日常が始まったのだったーーーーーーーー








 ーーーーーーーーーーーーーーーー









「ご、御主人様……?」

「お、小僧の仲間か? ここに来られたということは、幹部を倒したわけか」

「な、何をしたのよ!? しかも、魔人イアまでも!?」


 戦いに勝ち残ったテミアとシエルが一番先に輪廻の元へ着いていた。だが、その輪廻の状況が異常であった。




 二つのクリスタルが浮いており、中には輪廻とイアの二人が眠っていた。




「それは、私は何もしてねぇよ。兄貴の魔法だ」

「御主人様を解放しろ!!」


 テミアは地喰を取り出して、ウルを睨む。だが、ウルはその態度に何も変えずに見ているだけだった。テミアは訝しみながらも、攻撃しようと脚を動かすがーーーー




「落ち着いて! 何かおかしくない?」

「おかしいことだと?」

「うん、少年は眠っているからウルにしたら、隙だらけだよね。でも、狙わないのはおかしくない?」

「言われてみれば……」


 今の輪廻は隙だらけだ。輪廻のステータスより低い者でも殺せそうなぐらいに無装備である。

 だが、ウルは輪廻に傷を付けた様子は全くなかった。




「ほぅ、気付いたか。まぁ、攻撃されたら堪らないから説明してやるよ。この魔法は相手にとっての楽園だと思える状況を夢にして見せることができる魔法だ。強制的に眠らせることが出来る最強の魔法だが、それにはデメリットがあるーー」


 一つ目のデメリットは見て通りに、術者であるイアまでも眠りに入ってしまうことだ。だから、ウルが戦争中に使う技ではないと言った理由がわかるだろう。

 術者まで眠ってしまい、無装備になるからだ。


 二つ目のデメリットは、イアに対してのデメリットではなく、外部の者に対してのデメリットである。もし、ウルがこの状況で輪廻を殺すとーーーーーーーーイアまでも死んでしまう。イアを狙った場合も、同様に輪廻が死ぬ。

 二人は魔法によって同調しており、外部は手を出すことが出来ないのだ…………いや、二人の死を厭わない者なら手を出すかもしれない。輪廻のことを知らない者にしたら、輪廻を犠牲にするだけで、魔人イアを殺せると考えるだろう。




「つまり、お互いは手を出せない状況ってわけね」

「あぁ、お互いが二人に傷を付けるつもりはなくても、戦うのは勘弁して欲しいな。流れ弾が行かないと言えんからな。それに、私はこの二人を守らなければならんし…………だから、今だけは休戦にしようぜ?」

「くっ、今すぐにぶっ飛ばしたいが、我慢するしかありませんね……」


 お互いはここで戦うのはデメリットが多すぎる。戦っている間に、他の者が二人を傷つけないという確証もないため、戦わないで見守った方が賢明だと思える。




「さぁて、楽園に呑まれたら小僧は死ぬ。反対に楽園を押しのけることが出来れば、夢から帰還出来る…………まぁ、破られることは今まで無かったからあり得ないがな」

「いえ、御主人様は必ず帰ってきます」

「そうよ、少年は今までの危機状況から、苦戦はしても必ず勝ち残ってきたんだから!!」


 二人は輪廻を信じている。必ず、私達の元へ帰ってくると信じてーーーー







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