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第百三十九話 玩具魔法

はい、続きをどうぞ!

 


 フリスビーと言った光る円盤みたいな物がバルムに向かって飛んでいく。バルムは弾くのは効果がわからないことからリスクが高いと判断して、避けることに決めた。スピードもそれ程に早いモノだが、目に追いつけない程ではなかったので避けることが出来た。




「はぁっ!!」

「えいっ!!」


 黒い剣とけん玉が火花を散らして、二人はお互いの技術が変わらないと理解する。

 しかし、クレアが使っているのはけん玉であって、剣ではないのに打ち合えることに疑問を持っていた。




「硬いな……。特注で作らせたか、魔法で強化しているのか?」

「どちらも間違いだね。これは魔法そのものよ!!」


 けん玉の尖っている部分が淡く光り出し、元より長くなってバルムの顔へ突きさされようとしていた。

 だが、それはバルムの反射神経を超えるものではなく、頬辺りに傷を付けただけだった。




「無駄だーーーーっ!?」


 バルムは後ろから気配を感じて、横へ動くとバルムがいた場所を通る物があった。それは、さっき投げた魔法の”フリスビー”だった。




「分裂、追尾」


 クレアがそう言うと、通り抜けたフリスピーが数を増やしてバルムを追いかける。さっきまでは避けていたバルムだったが、数を増やされてはかなわないので、手に持った黒い剣で打ち落とそうとする。だがーーーー






 ”フリスビー”が黒い剣に触れた瞬間、爆発が起きた。




「クゥッ!?」

「まだ増やして、追いかけるわよ?」


 まだ爆発してない”フリスビー”がさらに数を増やして、二人の周りへ展開されていく。

 触れたらダメージを受けるのをわかっているバルムは全てを避けるか遠距離攻撃で防ぐしかない。だが、遠距離攻撃をしようにも、距離が近すぎて、避けようと思っても数が多くて追尾効果があるから難しい。




「人間相手に見せることになるのは予想外だったが、こうなっては仕方がない!!」


 ダガンとメルア相手には高い身体能力、技術、魔法で圧倒していて、切り札と言える物を一つも出していなかった。だが、突然に現れたクレアに使う価値はあると判断した。

 その切り札の一つは、種族の進化だ。




「『種族解放』!!」

「あら……」


 魔騎士族であったバルムは、その姿を変えていく。顔が黒い霧に包まれ、脚が分裂するように、二本から四本になっていた。上体も前より強固な鎧になっていて、その姿はまさにデュラハンのようだった。




「これが、本当の姿だ! 『魔騎士族』より上の種族、『魔鎧族』!!」

「魔鎧族、それが貴方の種族だったのね」


 クレアは魔鎧族のことを知っていた。デュラハンのように見えるが、実際は違う種族である。デュラハンは首が無いことに対して、魔鎧族は霧に隠れているだけで首はくっ付いている。




「”千刃流破”」


 バルムは剣の刀身が見えなくなる程のスピードで周りにあった”フリスビー”を切り裂いていた。クレアの”フリスビー”は触れると爆発するのだが、バルムは二度目を切ることによって、爆発ごと切り裂いていたのだ。

 つまり、一つの”フリスビー”に対して、二撃の斬撃を与えていたのだ。




「私には攻撃しないのは、距離があるからかな?」


 クレアは余裕を持って、相手の技を観察していた。バルムの周りにあったフリスビーは消えたが、距離を開けて浮いていたフリスビーやクレア本人には攻撃されていない。

 だから、距離に制限があると推測したのだ。




「そういうことなら、こうすればいいわ」


 普通ならここで距離を保つのだがーーーークレアは近づく事を選択して前へ走り出していた。その行動にバルムの空気に驚愕が混じっていることを感じ取れた。




「真っ直ぐに来るとは…………望み通りに切り裂いてやる!!」


 また刀身が見えなくなり、見えない斬撃が距離を無視してクレアへ向かう。だが、クレアは見えているように、けん玉を構えて弾いていた。その場にダガンやメルアがいたら、けん玉を持つ手が見えてなかっただろう。バルムは種族進化したことに、身体能力や反射神経も強化されているから斬撃を弾く様子が見えていた。




「き、貴様! 本当に人間か!?」

「失礼ね、キチンとした人間よッ!!」


 あっという間に、クレアはバルムの懐まで入ってきてけん玉と剣が合わせられる。この状況がクレアの狙いでーーーー




「これなら、剣を動かせないね?」

「な、正気か!?」


 バルムは見えていた。周りにまた”フリスビー”が分裂して、大量に展開されているのが。もし、その魔法がバルムに向かって爆発しようとするなら、確実にクレアも巻き込まれる距離である。

 だが、クレアは躊躇もなく大量の”フリスビー”をバルムに向かわせていた。


 今のバルムは迎撃したくても剣が使えない。人間とは思えない力で押さえ込まれているからだ。クレアから離れるのも考えたが、クレアは追ってくると推測出来るので、動くだけ無駄だ。

 既に”フリスビー”が近付いており、もう手がないバルムは爆発の衝撃を和らげようと巨大な魔力を纏う。




 全ての”フリスビー”が爆発を起こし、二人を巻き込んだ。地面は抉れて、何十個の隕石が落ちたようなクレーターが出来ていた。




「ぐがはっ!」


 煙が漂う中、バルムは立っていた。だが、それは無傷ではなく、顔を防御していた左腕が無くなっていた。元から防御が高いバルムがこれだけのダメージなのだから、露出度が高いクレアはもっと酷いだろうと黒い霧に隠れている顔を上げると…………




 目の前には無傷で立っているクレアがいた。




 理不尽な結果にバルムは意味がわからなかった。まさか、人間で自分より高い防御力を持っているのかと疑ってしまう。だが、おかしなことに気付いた。




「服まで無傷だと?」


 そう、クレアの服に傷や汚れがなかった。仮にも防御力が高くても服も高くなるのはない。

 だったら、爆発に巻き込まれても無傷というのはおかしいのだ。




「ふふっ、そこに気付くとは意外に冷静なのね」


 無傷だった服の中から一体の人形が地面へ落ちていた。その人形はただの人形ではなく、全身が焦げたような跡が残っていた。




「あら、少し威力が強すぎたかな?」

「なんだそれは……」

「これも私の魔法よ。詳しくは教えないけどね」


 バルムは詳しく教えてもらわなくても魔法と聞き、人形が焦げたような跡があるだけで推測出来ていた。

 バルムはクレアが身代わりのような魔法を使ったと判断した。そんな狡い魔法だが、特異魔法とはそんな物だと知っているバルムは慌てずに観察を続ける。

 まだ服の中に人形があるかはわからないが、あれだけの能力を持った魔法に制限がないのはありえない。




「複数の人形を作れても、2、3体が限界か?」

「流石、魔王の側近と呼ばれるぐらいだから、頭は良い方なのね。”ヨーヨー”」


 今度は刃が付いたヨーヨーが現れ、パチパチと音を立てて電流が流れているのが見えた。




「私の玩具魔法はこの程度ではないわよ。遊戯の能力を楽しんで下さいな♪」




 クレアは魔王の側近が相手なのに、その顔は子供のような楽しい笑みが浮かんでいたーーーー








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