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第百三十六話 シエルの頑張り

はい、続きをどうぞ!

 


 時間稼ぎを頼まれたシエルは、森を使った撹乱作戦で行くことにした。シエルがいる場所がわからないように、適度な魔力の残滓をバラバラにして置き、星屑の攻撃で悟られないようにーーーー




「む!?」


 森全体から様々な矢が撃ち出されて、トトは三節棍で防御をしていく。先程みたいに眼を狙われているのだから、防御を優先するのは当然だろう。

 だが、どうやって矢を森全体から撃ち出されているのか。射手はシエル、ただ一人だけなのに…………




 シエルの方は脚を動かずに、矢を射っていた。だが、いつもと違って星屑を持っていない手は指を細かく動かしていた。




「あ、また木に矢が……。やっぱり操作は難しいなーーーー」


 シエルは指を細かく動かして、水平に撃ち出された矢を操作していたのだ。ここら辺の森は魔力の残滓を残す時、木の位置を大体記憶させていたため、木の障害はあまり関係はなかった。たまに木に矢が刺さってしまうが…………




「くっ、これでは場所を突き止められん! ならば、こうすればいい!!」


 トトはシエルの居場所を突き止められないので、まず森を刈り取ることから始まった。三節を鎖で伸ばせば、十メートルを超える大きさを生かして、振り回していく。三節棍が地面ごと森を抉っていき、シエルの隠れる場所を減らしていく。




「やっぱりこうするか……。自然を愛する心がないな……」


 シエルはダークエルフだが、エルフと同じように森を愛する心を持っている。それをトトはあっさりと自然へ傷を付けていくことに我慢がならなかった。

 だが、シエルがトトを倒すには威力が足りなすぎる。さっきは眼に刺さったが、奥まで突き進むことが出来ず、浅く傷を付けるしか出来ていなかった。それ程にトトが発動した強化のスキルが強いとも言える。外部だけではなく、内部も強化されていて矢が眼の奥深くまで刺さらなかったのもそのせいである。


 しばらく、隠れながら矢を射り続けていたが、限界が来た。殆どの森が刈り尽くされて、シエルが隠れている場所に近付いているからだ。




「この作戦には無理があったかぁ。少しは自然を労わりなさいよ」


 第一の作戦も終幕になり、次の第二へ移る。第二の作戦とはーーーー




「む!?」


 急に脚が沈んだかと思えば、足元に湖が現れたのだ。何もなかった場所にいきなり湖が現れたら驚いたのだ。これも、シエルの仕業である。




「よし、嵌った! ”豪雷球”!!」


 一つだけではなく、幾つかの雷の球が現れて湖へ撃ち込まれた。そのままトトへぶつけようとしても、三節棍によって薙ぎ払われるのは予測できた。だから、湖へぶつけて電気を流し付けたのだ。


 だが、まともに喰らったトトは悲鳴を漏らしつつも脚を動かそうとしていた。




(ありゃ、動けるの? せっかく偽装で湖を隠していたのに……)


 湖を隠したのは、シエルが得意としている偽装を使ってのことである。前は自分自身しか偽装出来なかったけど、今は動かさない限りは、湖のような大きく広い物を隠せるようになったのだ。




 おそらく、トトは身体を強化するつれに魔法に対する耐性も高めていた。だから、痺れる身体を無理矢理動かして湖から出て行こうとする。だが、動きが少しは鈍くなっているのはチャンスである。




(少し早いけど…………)


 別の戦法へ移るように、シエルが隠れていた森から出てきて星屑と大きな盾を構えていた。シエルはいつもの戦法に戻したのだ。

 シエルの見切り能力である”視領”を使った接近戦でトトへ挑むのだ。




「ようやく出てきたか!!」

「やっぱり、この戦法がやりやすいわ。集中をーーーー」


 シエルはトトの言葉を無視して、動きだけに注視していた。まず、三節棍が横から襲ってくる。”視領”で攻撃の軌道が赤く見えていて、自分自身の身体が赤く塗り潰されていた。武器が大きすぎて、面に近い攻撃になっているのをシエルはどう躱すか思考する。




(逃げ道はないーーーーならば、作る!!)




 咄嗟に星屑を地面へ撃ち出して、衝撃でクレーターのように凹ませる。そこへ身体を潜り込ませて、三節棍が上を通り抜けると言うやり方で躱したのだった。通り抜けた後は直ぐに身体を起こして、三節が繋がっている部分の短い鎖のような物を狙って、スピードと威力がある”雷火”を撃ち出すがーーーー




「硬い!」

「ワシの鬼潰棒を壊すつもりなら、無駄な行動だ!!」


 ”雷火”は鎖に当たった瞬間に呆気なく、弾かれて霧散した。トトは三節棍を操って、次は頭の上から打ち落とされようとしていた。

 さっきみたいなやり方では躱せないようにとのことだろう。シエルは範囲がさっきよりマシだったので、直ぐに瞬動で横へ逃げようとしたが、それでもかすってしまうと理解したシエルはーーーー




「はぁっ!!」




 大盾でパリィをするように構えて、星屑で少しでもズラそうと撃ち出した。結果は、大盾が触れた瞬間に大盾は三節棍に引っ張られるような威力によってひしゃげてしまう。

 このままでは自分まで巻き込まれてしまう、とわかったシエルは瞬時に大盾を捨てることに決行した。




「ほう、また躱すとはな!!」

「くっ!!」


 シエルは大盾を捨てたため、巻き込まれずに済んだが、大盾を持っていた手が少し痺れていた。苦し紛れに星屑で眼を狙うが、あっさりと手を振るだけで防がれてしまう。




「こうなれば、お主は終わりだな!!」




 再び、頭の上から来るが、さっきのよりも落ちるのが早い。これでは躱せないと悟ったシエルは星屑を持つ手が下がってしまう。もう諦めたような雰囲気だった。




(私はここまでみたいね…………)




 シエルは動かず、この場で振り落とされようとしている三節棍をジッと見ているだけだった。このままなら、シエルは死んでしまうだろうーーーー










 だが、そうはならなかった。何故なら…………




「なっ!?」




 振り落とされていた三節棍、トトが硬さに自信を持っていた鬼潰棒が…………




 バラバラに砕かれていたのだ。それを成した者は、立ち尽くしていたシエルの元に立って、




「老婆にしては頑張りましたね。老婆を労わってあげたのですから、土下座して感謝し尽くしなさい」

「酷っ!? せっかく時間を稼いだのに、その言い草!?」




 両腕を黒く染めたテミアが毒舌を吐いていたのだった…………








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