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第百三十一話 エリスvsレイナ

 


 エリスはレイナのことをお母様と呼んだ。つまり、この二人は親子であるということだ。しかし、レイナは人間側からは魔王の幹部で人魚族だと伝われている。エリスは人魚族ではなく、生粋の人間である。

 その違いが今に明かされることになった。




「……『種の変換』でお母様は魔族になったのね?周りはお母様のことをレイナ・オルジェントと呼ぶけど、それは偽名。そうでしょう、レイナ・ワンスディス……」


 エリスもワンスディス家であり、母親であるレイナもワンスディスと呼ばれる。






「少しはやるようになったわね。だけど、『種の変換』ではないわ。確かに、あの時はその研究をしていたけどね」




 否定しないことから、間違いなく親子だと証明された。あと、二人の口から放たれた『種の変換』とはどういう意味か?そのままの意味であるが、普通の人が聞いたらそんなことが出来るわけはないと否定するだろう。

 二人が言う『種の変換』とは、他の種族へ変わるということである。人間から魔族になるための研究であって、他の研究者にしたら禁忌の研究だ。ワンスディス家はその研究に追随していて、レイナもその禁忌に触れていた。




「私はあの時、その研究をしていたけど無駄だとわかったの」


 そう、その『種の変換』は不可能だった。人間と魔族は身体の造りが似ているようで、全く違った。それに気付いたレイナはその研究を止めて、姿をくらました。その時に、自分の夫を殺したのだ。




「何故、お父様を殺したの?」




 エリスはまだ小さかった時、レイナが父親をナイフで殺していたのを見ていたのだ。さらに殺す時、レイナの顔は笑顔に歪んでいたのを覚えている。




「ふふっ、私の邪魔をしようとしたからね。まぁ、貴女を産んだ後にすぐに消すつもりだったけどね」

「なっ!?」


 邪魔をしなくても、どの道は父親を生かすつもりはなかったようだ。レイナと暮らしていた頃の思い出では、二人が一緒にいる時は幸せに見えたはずが、全ては演技だったのかと?




「なら、何故……」

「貴女を産むためよ。それ以外にはないわ。貴女は私の依代になるために、生まれたのよ。ふふっ……」

「依代……?」

「まず、順番に教えてあげるわ。私が人魚族になった……いえ、人魚族になれるようになったが正しいわね」

「なれるようになった?」

「ええ、私は『種の変換』に見切りを付けて、新しい研究を始めたのよ。その研究は『種の融合』と言うわ」


 今は戦争中なのに、二人がいる空間だけは二人の声だけが響いている。エリスはレイナの言葉を聞き逃さないように集中しているのもあるが、レイナが話す前に闇魔法の応用で、世界から自分らがいる空間を遮断したためだ。

 エリスはそれに気付いていたが、自分に害はないと判断したのだ。仲間へ助けを呼べなくなるが、問題はなかった。元からレイナだけは自分で殺すと決めていたからだ。


 その空間で、さらにレイナの話が続く。




「『種の融合』の研究によって、私は二つの種族を持ったハイブリッド的な存在になれたのよ」

「……それで人魚族にもなれるようになったと言いたいの?」

「そうよ!!この研究をして、二つの種族を持っているのは私だけよ!!」


 レイナは研究者らしく、歪んだ思考を持っている。自分の研究を自慢するように、腕を大きく開いて顔は恍惚な笑顔になっていた。

 レイナのことを知っていたエリスは、実の母親が人魚族の種族と融合と言う禁忌を出していたことに驚くこともなく、冷やかに見ていた。




「そう、お母様はそこまで堕ちていたのですね。なら、必ずここで殺さなければならないわ!!」

「ふふっ、焦らないでよ。何故、様々な種族がある中から人魚族を選んだか気にならない?」

「何?」


 人魚族は魔族の中でエルフと同様に寿命が長いから、レイナは寿命を延ばすために人魚族を選んだと思っていた。




「ふふっ、これが私の完成型よ!!」


 レイナは身体が輝き、形を変えていく。二本の脚が一本になっていき、人魚族と同じヒレとなっていて、綺麗な虹色の鱗が映えている。それだけではなく、服が胸を包む貝の水着のようになり、耳も人魚族と変わらず、耳の裏にはエラが隠されている扇上に近い耳になっていた。

 それだけなら、普通の人魚族であるが…………




「翼!?」


 天使のような翼がレイナの背中から生えていた。その白い翼に虹色の鱗で、レイナが何に変わったのか理解したのだった。





「まさか、人魚の女王と呼ばれた伝説の…………」






 レインボー人魚セイレーン






「そう、すぐに気付くよね。この翼と虹色の鱗がシンボルとなっているからね」

「っ、伝説でしかないと思ったけど、存在していたなんて!?」


 エリスが信じられないと思うのは、仕方がないのことである。虹の人魚はお伽話でしか聞かない、目撃のあるユニコーンや龍などの聖獣と違って目撃された情報はない。だから、伝説の生き物として、お伽話ぐらいでしか聞かれない。

 レイナがその人魚の女王と呼ばれた虹の人魚になっていることは、存在していたという証拠となる。融合と言っていたことから、元になる素材である細胞がないと出来ないことだと予測は出来た。




(ヤバいかもね、虹の人魚なんてお伽話でしか聞いたことがないし……)


 エリスは虹の人魚がどんな能力を使ってくるかは知らない。というか、そんな情報があるかも怪しい。もし、目立った動きでレイナがその姿で暴れていたなら情報は少しぐらいあってもおかしくはない。

 つまり、レイナは目立った動きをせずに人魚族だとわかるぐらいの変化しか見せなかった可能性もある。




「さぁ、話が長くなったわね。最後に、何故貴女を産んだか教えてあげるわ。貴女は、私になるのよ。若い身体が欲しい。同じ血が流れた貴女なら、あの研究は成功出来るわ!!」

「っ、依代とはそういう意味だったのね……」


 レイナは新しくて若い身体が欲しいと考え、結婚してエリスを産むという流れを作り出したのだ。依代にする研究は昔から出来ていたが、血が繋がった身体が必要だと数々の実験によってわかっている。

 レイナは確実に成功させるために、自分で産むという狂ったことをしてきたのだ。




「今まで放っていたのは、その方が強くなって更に輝いていけると考えたからよ。でも、それは今日までよ!!」

「私は、貴女になんて負けない……お父様の仇を討つまでは負けない!!」

「あは、魅せなさい。私の望んだ『水の恩恵』によって、貴女の輝かしい死体を!!」




 レイナは虹の人魚の能力である『水の恩恵』により、魔法が得意なエルフよりも水魔法が得意な普通の人魚族よりも…………




「それが、『水の恩恵』だというの!?」




 空には先程の魔法よりも巨大である蛇の顎が現れた。水の恩恵は水魔法を強大させるだけなら、エリスは警戒をしなかった。だが、その蛇の顎には悍ましいと思うぐらいの迫力があった。




「っ、”水りゅ……「無駄よ」な!?」




 エリスは水龍で少しは隙が出来ればいいと思っていたが、全く発動する気配がなかった。そこで、エリスはすぐに気付いた。




(『水の恩恵』とは……)

「そうよ、私は全ての水を支配する。貴女が魔力から生み出した水魔法でもね!!」


 虹の人魚が持つ『水の恩恵』は全ての水を支配することが出来るということだ。さすがに、人体にある水分までは支配出来ないようだが、水魔法を中心に戦うエリスにしたら天敵である。




 迎撃が出来なくなったエリスは、落ちてくる蛇の顎を睨むしか出来ない状況に陥っていたのだった…………







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