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第百三十話 戦場その2

 


 まだ戦える冒険者、兵士、召喚者の全員は幹部の相手を後から来た輪廻達に任せて、魔物の鎮圧に当たっていた。魔物の数はディオの材料にされた二万を差し引いてもまだ一万程の魔物が残っていた。しかも、どれもSランク以上の魔物であり、質は啓二達がいるからこっちの方が高いといえ、数が問題だ。

 ついさっき、ウルにアドラーが戦闘不能にされて大量の兵士と冒険者がやられていて、動けるのは魔物の半分ーーーー五千人ぐらいになる。




「テメェら、幹部はあいつらに任せることになったが、此方が魔物にやられちゃ、街は終わりだ。それを理解して、一万の魔物に挑め。奴等共を消せ!!」

「「「おおーーーーーーーーー!!」」」


 士気は結構高い。指揮をするのが魔王の幹部を倒したことがある啓二だからのもあり、勇者のパーティも一緒で後ろに強い味方がいるのは安心出来るのだ。この街は強い者が上に立ち、引っ張っていく習慣がある。




「行くぞ、テメェら!!」




 啓二達は穴が空いた壁に向かってくる魔物を迎え討ち、街を守っていくーーーー






 ーーーーーーーーーーーーーーーー







「うわ、私達の敵は面倒そうだわ……」

「黙りなさい、年増エルフ。御主人様に任されたのだから、シャキッとしなさい!!」


 テミアとシエルは二メートルもある良い体格をした男を前にしていた。その男は幹部の一人、トト・ブリュールである。




「お前達がワシの相手になるのだろうな。しかし、お前は魔人だろう。何故、人間の味方をする?」


 トトの目はテミアだけに向けられていた。どうして、人間の姿をしているテミアが魔人だとわかったのかわからないが、その質問はテミアにしたら輪廻に出会った時点から決まっていたことだ。




「私は御主人様に従っているだけで、他の人間はどうでもいい」

「一応、人間も守ろうよ!?」

「御主人様からの命令だから、そうするけど巨人族を相手するなら被害は少しは覚悟しなければならないわ。日和な年増エルフで脳天気な貴方にはにはわからないことだけどね」

「脳天気で日和な年増エルフじゃないわよ!!こんな時でも、毒を吐くのを止めてよ!?」


 テミアは強者を前にしても、毒舌は平常運転であった。それを見ていたトトは呆気に取られていた。




「強者を前にふざける余裕があるとはな。しかも、一人の人間に従っているか…………」

「悪いですか?」

「いや、構わん。命を賭けるに値する主がいるのはワシのと変わらん。我の主がである魔王様はワシの命を賭けても惜しくもないぐらいの方だ」

「それはどうでもいいことです。私には輪廻様がいれば、それでいい」

「二人は私を放って話をしないでよ……。私も、少年に命を預けてもいいぐらいには信頼しているからね!!」


 放っておかれたシエルも意思表示して、魔弓の星屑を取り出す。テミアもそれに合わせて地喰を構える。




「その心構えは良し!」




 トト・ブリュールは本来の姿へ戻っていく。二メートルの五倍はある大きさになり、




「来い、鬼潰棒!!」




 地面が揺れたと思ったら、地中からトトの武器である鬼潰棒が現れた。その棒は魔棒であり、身体の大きさに合わせて大きくなったり小さくなったりする魔棒である。

 大きさではやれなくはないが、相手は魔王の幹部であり、実力と能力は未知数である。

 テミアとシエルはもしもの時は、命を賭けてでもトト・ブリュールを道連れにするぐらいの覚悟で相対するーーーー






 ーーーーーーーーーーーーーーーー







「”水龍”!!」

「”水蛇”」


 水で出来た龍と蛇が激突し、お互いの魔法は互角でどちらも霧散して消える。




「くっ、龍が蛇と互角なんて……」

「貴女と私の地力が違うから、この程度で充分わよ」


 水の龍を発動していたのはエリスで、水の蛇は敵である人魚族のレイナ。水の龍は蛇よりも一段階上の水魔法であり、実力が同じぐらいだったら確実に龍の方が勝つ。だが、今のはレイナの方が魔力が強かったため、龍が蛇に負けたのだ。




「”水針雨”」


 レイナは次の魔法を唱える。雨のように大量の針が落ちていく。水の針がエリスへ向かっていく中、エリスはある魔道具を取り出した。




 ザァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーー!!









「あら?」


 雨が降り止んだ時、地面が抉れていた中で一部分だけ変わってない場所があった。そこはエリスが立っていた場所で、無事だった本人は水色の和傘を差していた。




「あら、普通の雨じゃないのに傘で防いだの?」

「……この傘はただの傘ではないわ!」

「そう、水魔法を防いだなら、他の魔法だったらどうかしら?」


 レイナは闇魔法の”魔隕石”を発動した。その大きさはバルムが放ったのよりも一回り大きかった。街はエリスがいる方向にはないため、街が巻き添えになる可能性はないが、これだけの大きさでは、エリスが今から動いても避けられない。

 そのまま潰されるかと思えばーーーー


 エリスはクルッと傘を廻すと色が変わった。水色から茶色に、また一回転すると黄色に変わった。それを繰り返して、黒色に変わった。

 そして、黒色になった和傘を”魔隕石”の前に差し出した。


 魔法と傘が激突するとーーーー





「消えた!?」





 闇魔法の”魔隕石”が傘に弾かれるように、何も残さずに消え去っていたのだ。ここで初めてレイナの顔に驚きの顔を見せることになった。




「あの傘は魔法を無効化するの!?」

「使い方が面倒だけど……ようやく隙を見せたわね!!」

「っ!?」


 地面から水の龍がレイナの足元から現れた。レイナは人魚族なのに、脚があって素早い動きによって被害は片腕だけで済んだ。水の龍は中が凄さまじく動いており、飲み込まれたら水圧に押しつぶされてしまう程だ。片腕を巻き込まれたレイナは打撲を受けた状況と同じように腕全体が赤くなっていた。




「まさか、エリスにここまでやられるとはね」


 レイナはエリスのことを知っている風に話していた。そう、この二人は知り合いであり、その関係とはーーーー





「お父様を殺した報いをさせるわ。お母様ーーーー」







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