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第百二十九話 戦場その1

 


「痛え、痛ぇなぁぁぁぁぁ」

「真正面から”虚冥”を喰らって、無傷とはな。いや、あの槍で防いだか?」


 街の外へ飛ばされたウルは埃にまみれていても、傷一つもなかった。ウルは輪廻の攻撃が来ることを即座に読み取り、ゲイボルグで防いだためだ。ウルのダメージは衝撃によって吹き飛ばされた際に地面へ当たったぐらいである。




「痛かったが、それはいい!!お前も召喚者の一人かぁ!?」

「そうだ。俺の邪魔になると判断したから、魔王ごと消えて貰うぞ」


 ウルは普通の人だったら発狂してしまいそうな覇気に輪廻は風を受け流すように返事をしていたことから、ニヤッと口を歪めている。




「面白い。私の魔槍、ゲイボルグを受けて同じことを言えるか!!」

「魔槍か、俺は邪剣で相手しよう。暗殺者らしくはないが、たまにいいだろう。来い、カオディスア」


 輪廻は手を振ると、虚空から邪剣カオディスアが現れる。長さは短剣より少し長めで、腹には二体の蛇の紋章のようなものがある。




「邪剣だと、聞いたことがねぇな……」

「知らなくてもいいさ。お前は俺にやられるからな」

「はっ、言ってろ!!」


 弁舌はここで終わった。一瞬でウルが輪廻の懐へ入ったからだ。そのままゲイボルグを突き刺そうとするが、輪廻は反応していた。

 カオディスアでゲイボルグを受け流して、ウルの首を狙う。ウルもその攻撃を首を少し逸らすだけで避けた。


 そのまま、両者は後ろへバックステップで距離を取る。そして、輪廻が”瞬動”で真正面から突っ込む。それを見たウルも”瞬動”で輪廻と同じように真正面へーーーー




 輪廻の持つ邪剣カオディスアとウルの持つ魔槍ゲイボルグが突撃し、周りの地面が吹き飛ぶ程の衝撃が撒き散らされた。




 両者は互角だったようで、吹き飛ばされることはなくそのまま、至近距離で剣と槍の打ち合い、斬り合いが始まった。




 この激しい戦いが始まっただけではなく、他の場所でも戦いが動こうとしている。






 ーーーーーーーーーーーーーーー






「貴様らが、俺の相手をするということか?」

「そうなるな」

「輪廻に任されたとなれば、みっともない戦いは見せられねぇな」


 三者は顔を合わせていた。魔王の側近となっている魔人のバルムとギルド長の二人であるダガンとメルア。バルムは輪廻に結構の距離を離されたため、街から結構の距離があって、三人が暴れるには問題ない場所でもあった。




「安心しろ、みっともない戦いを見せるまでもなく、終わらせてやる」

「はっ、もう勝った気になるなよ?」

「うむ、輪廻達に出会ってから自分を鍛え直したからな」


 ダガンは輪廻達の強さに触れ、鍛え始めていた。若者に負けられないという闘志が湧き上がったのもあるが、召喚者が呼ばれたことから近い内に大きな戦いが始まると勘が訴えていた。

 そして、その勘は当たったようで重要な役目を任されたのだ。

 相手は魔王の側近、不足はないと闘気を纏う。

 メルアも最初から本気で行くようで、特異魔法の『地竜魔法』で両手に爪を作り出していた。


 魔騎士族は身体が鉄の鎧で出来ている魔人で、無機質の魔人……ゴーレムに近い造りになっている。ゴーレムとは違って自我があり魔法も使える。




「魔王様の道を邪魔する者は消す」







 ーーーーーーーーーーーーーーーー






「のぅ、この前はお前の部下が我の邪魔をしてくれたようだが?」

「貴様、ゼロクア様になんてな口を利いている!!」

「ふふっ、構いませんよ。まさか、貴方が人間の味方をするとは思いませんでしたよ」


 ルフェアが相対しているのは、ゼロクアとその部下である悪魔族のロイディと鳥人族のロロイ。




「言っておくが、我が味方をしているのは人間ではなく、輪廻とそのパーティだけだ。そこを間違えるな」

「ほぅ…………ふむ、取引をしませんか?」

「取引だと?」


 ゼロクアは戦場にて、取引を持ちかけたのだ。その取引とは…………






「貴方と、輪廻と言う者、そのパーティが魔王様の仲間になりませんか?」

「ゼロクア様!?」


 それはルフェアにも意外な取引であった。その証拠に、無視して攻撃しようとした魔法を止めるほどに驚いていた。




「人間を仲間にするなんて、反対されるに決まっているでしょう!?」

「いや、その取引はいいかもしれん」

「貴様、ロロイまで言うのか!?」

「あの人間を見ただろ?」

「しかし…………」


 ロロイは妙に肯定的であった。ロイディとロロイはゼロクアの後ろで待機していたため、輪廻がゼロクアと幹部達を吹き飛ばし、ウルをあっさりと外へ放り出したのも見ている。

 ロロイはあれと戦うよりも仲間に引き入れた方が被害が少ないと判断したのだ。

 ロイディは人間を仲間に入れることに反対だが、輪廻のことになると口を摘むんでしまう。




「どうでしょうか?」

「その取引は意外だったな。まぁ、輪廻達が魔王側に回れば、人間はもう対抗出来ないだろうな」

「なら…………」


 対抗出来ないという評価は、輪廻達が魔王側に回れば、輪廻達は確実に勝てる側になれるという事だ。

 なら、ルフェアの答えは決まっている。ルフェアは輪廻が無事にいられるなら問題はない。ゼロクアはそれを理解し、笑顔で良い答えを待つように手を差し出していた。その答えはーーーー






 ゼロクアの手が凍らされた。




「っ!?」

「残念だな。輪廻の目的を知らないお前にはその取引は失敗だ」


 ルフェアは取引を蹴るように、ゼロクアの手を凍らしたのだ。ゼロクアは舌打ちをして、凍らされた手を引きちぎって、再生した。




「目的だと?」

「ああ、輪廻の目的はこの世界を自由に見回って楽しむ。つまり、お前の王。魔王は世界を魔の世界に変えることだろ?なら、輪廻の答えはそう答えただろうな」






 そんな世界はつまらないと。






 魔の世界だと魔物が増えて、魔人が暴れるだけの世界は輪廻にしたら楽しめない世界である。魔人で人間のような生き方をするのは少数であり、他は単純であると輪廻は純粋な魔人であるテミアから聞いている。




「だから、輪廻はその取引には乗らない。一瞬で終わらせてやろうーーーー」

「貴様!!」

「な、ロイディ行くな!!」


 ゼロクアが止めようとするが、それは遅かった。ルフェアが周りも纏めて凍らせる”氷の息吹”でルフェアの半径300メートルぐらいが氷の世界に変わった。








「貴様、魔王様に矛を向けるつもりか!!」

「そのつもりだが?それに、よく逃げ切れたな。ゼロクア?」


 氷の世界となった場所から逃げ切れたのは、ゼロクアだけで向かったロイディと向かわなかったロロイも全身を凍らされていた。二人とも宙にいたため、重力に従って地に落ちて割れた。




「あっさりと私の部下をやるとはね……」

「お前も数分でそうなるから悲しむ必要はない」

「この私があっさりとやられるわけはないでしょう。返り討ちにしてあげます!!」




 ゼロクアは高質の魔力を纏い、戦闘型の身体に変えていく。ルフェアも何を持たずに魔法を放っていた。変身を待たずに攻撃するが、その変身は一瞬で終わったようで魔法は当たらなかった。




「ほぅ、それがお前の本気か」




 避けられてもルフェアはまだ余裕を持ち、姿を変えたゼロクアを冷たく見るだけだった…………






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