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第百二十六話 骸ノ堕剣

この回も主人公が出ないのですが、あと少しすれば、出て来ます!!

では、続きをどうぞー。

 


 朝日が昇り、セイオリック天聖国はエメラルド色に光る結界が朝日を反射していて、綺麗に輝いていた。

 それを見ていて、面白そうに笑う者がいた。




「ふふっ、あの結界を作った者は天才だな。あそこにいなければ、良いのだがな」


 セイオリック天聖国にいる者は皆殺しと決まっており、エメラルド色に光る結界を見つめる者であるディオ・オリエルは天才と称した者を生け捕りしたいと考えていた。

 おそらく、セイオリック天聖国にいるだろうと思っているが、もし他の場所にいればラッキーだなとも考えていた。




「ふむ、二万か。これだけあれば、一発でやれそうだな。イア、頼めますか?」

「ふぁ~、わかっているよ」


 兄弟の片割れであるイアも同席しており、二人は空中に浮いていた。大人しく立ち止まっている二万の魔物を見下ろすように…………




「やったら、眠くなるから介抱をよろしくね。ふぁっ……」

「ええ、柔らかい布団で眠っているような感じで、空中に浮かしてあげますので」

「うん…、任せた。安らかに眠れ、”永眠死”」




 イアの手から音波のようにパンっ!と全位方向へ広がった。




 それに触れた魔物達は安眠するように、安らかな表情を浮かべて…………死んだ。

 下にいた魔物はランクがばらばらで、ランクが高い魔物がいたのに、二万の魔物へ平等に死を与えていた。

 一瞬でこれだけをやった魔人イアの実力の片鱗が見られた瞬間であった。




「終わった、眠い…………ま、かせた……」


 イアはそういうと、仰向けになって眠った。寝ていたら自力で空中に留まるのが難しくなるが、ディオが代わりに浮かしていた。




「流石、昔から生きてきた古豪の魔人ですね。特異魔法の中でも最強に近いと言われている『催眠魔法』…………」


 魔人イアの実力、同じ幹部であるディオにもその深さがまだ読めないでいた。何故、そのような実力を持つイアが魔王に従っているのか不思議に思う程である。




「いや、今はいいか。先にこれを進めておかんと、先に敵が来そうだな」


 先程のイアがやったこと、死の眠りは結界があるセイオリック天聖国までに効力を及ばせるのは無理だったが、魔力の残滓や振動で何かをしたという程度はバレているだろう。


 さて、何故味方である二万もいる魔物を殺したのかは、これからやることに必要であったからだ。




「骸になりての、舞い降りる死の世界に抗って命の残滓を…………」




 ディオは二万の魔物に手を向けて呪文を唱える。今まで研究してきた結果を発揮し、骸となった二万の魔物が黒いオーラを包み始めた。




「黒き魔よ、その力を増幅させて敵を打ち破る剣となり…………」




 その骸がプクプクと膨らんでいき、隣り合わせる遺体へ結合していく。全てが結合した瞬間に宙へ浮いていく。






「ーーーー”骸ノ堕剣”発動!!」






 一塊となった巨大な骸は肉片で出来た醜くて巨大な剣となった。剣の腹には目のような物があり、生き物みたいにギョロッと動いていた。

 この剣は、ディオが持つスキルを幾つか使って作成した物であり、研究によって普通ではあり得ないぐらいの効果を持っている。”骸ノ堕剣”の効果とはーーーー




 結合した骸の数だけ、威力が上がるというふざけた能力を持った剣である。




 そんな能力を持っている剣であるが、デメリットも凄さまじくて今までは使えなかった。




「一振りで役を終えてしまいますが、仕方がありませんね」




 そう、”骸ノ堕剣”は一振りをしたら、すぐに壊れてしまうデメリットがある。あれだけの能力を持っているのであれば、納得は出来る。この剣を作り出すために新鮮な遺体が必要になるため、そうそうと使えは出来ないが、発動したら骸の数だけ威力が上がる最強の剣となりえる。


 今回はその剣を使い、結界を破壊しようとの考えで、大量の魔物を犠牲にしたのだ。そのことにディオに心の変化はない。

 むしろ、弱い魔物が強硬な結界を破壊できる名誉を与えられるのだから、死にして喜ぶべきであると考えている。




「ふふ、どちらが強いでしょうね……」







 ーーーーーーーーーーーーーーーー







「巨大な剣が浮いています!!」

「来たか……!」


 城から見ているアドラーとガラードが声を上げ、皆に指示を出していく。

 街からも”骸ノ堕剣”が見えており、こっちへ降りおろされようとしている。結界があの剣を防げるかはわからないが、もし壊れた場合のことを考えて、皆は自らの配置へ着いていた。




「俺は念のために、城の頂上で待機しておこう」

「まさか、お主はアレを受けるつもりなのか!?」

「仕方がねぇだろ、魔法を撃ち込んでも止まるとは思えん。結界を壊されて、そのまま来るなら俺がやるしかない」


 一番の攻撃力を持っているのは、啓二であり、半端に魔法を撃っただけで止まるとは思えないので、啓二が前に出るのは当然だろう。




「私も行く~」

「もちろん、俺もだぜ」


 啓二は外から上がっていく中、裕美と勲もそれに着いていく。ガラードはそれを見送って、剣の中心部に立たないように注意を促して、城から離れていく。

 剣は啓二に任せることにして、自分達は結界が壊れた後のことを考えて動いていた。


 剣が出来てから、数分するとその刃がセイオリック天聖国へ倒れていくように、振り下ろされてきた。

 啓二達も見ているだけではなく、出来ることをしていた。










「皆、後のことを考えるなよ」

「ええ、戦えない者は全魔力をこれに注ぐわね」

「戦争中に動けなくなるのは駄目だから、少しは残すのよ」

「あわわ、来る、来ちゃうぅぅぅ!!」


 彼方を含めた、計6名の召喚者は中心部から離れた場所で、結界発動機を前に囲んでいた。

 今、発動している結界を強化のために魔力を注ぐつもりだ。






「ーーーーーーーー今だ!!」






 結界と”骸ノ堕剣”が接触する寸前に、非戦闘員の召喚者は魔力を注いだ。すると、結界の光がさらに強く輝いてーーーー






 バギィィィィィィィぃぃぃぃぃ!!







 いきなり、結界にヒビが入った。それを見た兵士達は恐怖や不安の感情が溢れ出た。このままでは、破られてそのままセイオリック天聖国へ振り落とされてしまうのでは?と…………






 だが、そうはならなかった。




 結界にヒビが入ってしまっているが、確実に”骸ノ堕剣”を止めていた。ギリリリッと聞こえそうに見えるが、結界の硬さが勝っていた。









「なんだと……」


 この”骸ノ堕剣”を作り出したディオは驚いていた。セイオリック天聖国までは行かなくても、結界ぐらいは壊せると信じていたが、この結果は予測出来ていなかった。

 ディオが驚いている時、結界発動機に魔力を込めている側は…………





「ぐぎぃぃぃ、と、止められたか!」

「私はもうギリギリだよ……」

「死ぬ、死ぬ!!」

「あわわわわわ」


 皆はいっぱいいっぱいだったが、まだ倒れている者はいない。さらに結界はまだ保っており、”骸ノ堕剣”は少しずつ崩れていこうとしている。

 このまま、行けば結界は保持できると皆は思っていた。だがーーーー






「あはは、凄いね!」






 崩れ始めている”骸ノ堕剣”の上から聞こえる声の持ち主がいなければのことだった。


 そこには、魔人イアの妹である魔人ウルが嘲笑に近い笑いを浮かべて、手を振り上げていた。




「手伝ってやるよ、覚醒魔法…………”武昇格”!!」




 魔人ウルが言った『覚醒魔法』、特異魔法の部類である。それを振り上げた手を”骸ノ堕剣”へ叩きつけて発動した。”武昇格”と言う魔法は、名前の通りに武器を一段と強化させることが出来…………




 その効果が目に見えるように”骸ノ堕剣”が変わっていく。崩れていた骸は持ち直し、白い物体が中から滲み出ていた。白い物体とは、魔物の骨で液体のように形を変えていく。

 その骨は剣で言うと、刃となる部分で鋭く切れ味が上がっていくように見えた。魔力的な強化も合わさってーーーー






「なっ、強くなりやがった!?」

「も、もう駄目…」

「っ、結界発動機が…」

「駄目、壊れる!!」


 結界に大量のヒビが生まれ、その結界を支えていた結界発動機も音を立てて、最終的には爆発するように破壊されたのだった。

 それと同時に、街を守っていたエメラルド色の結界も割れて消えていった。


 それと同時に、”骸ノ堕剣”も砂になっていくように形が完全に崩れていった。






「むぅ、下までは届かなかったか……。まぁいい!私が一番乗りで暴れることが出来るわね!!」






 崩れた”骸ノ堕剣”の上に立っていた最悪の魔人が一番手というように、狂気な笑みを浮かべて街の中へ落ちて行くのだった…………







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