第百二十三話 早期決着
はい、お待たせました!
続きをどうぞー。
啓二とロールが激突する。ロールの妖術で作られた薙刀で地を割るぐらいの勢いで啓二の頭を狙うが、啓二は『全魔変換』により、筋力と敏捷がかなり上がっていて、早い動きによって避ける。
そのスピードにロールも負けていなくて、薙刀の技を繰り出していく。
「私のスピードが追いつけないとは、凄いにゃ!!」
「はっ、そう言うお前もこっちを見失うことがないだけでも、大したものだな!?」
両者の切り札は、性質が似ていて自分自身を強化している。啓二は魔力のステータスを筋力と敏捷に上乗せにし、ロールの”武魔二式”も妖術で自分の力を騙すことにより、身体を無理矢理に強化している状態である。薙刀はリーチを伸ばすために、鎧は自分自身の防御力が低いことを隠すために。自分を騙すと同時に相手を騙すのは出来ないため、純粋なステータスや技術による戦い方になっている。
ロールは無理矢理に強化して、ステータスも元の数字よりも格段に上がっているといえ、魔力全ての数値を上乗せにした『全魔変換』に劣る。そして…………
「にゃ!?」
「少しずつ動きが落ちてきているぞ?」
啓二の攻撃が当たるようになり、腹へ打ち込まれた拳によって更にロールの体力が減っていく。
ロールは少しずつと体力と魔力が減って行く中、啓二は全く動きは変わらず、ロールのように落ちていくことはない。
「な、なんで、変わらずに動けるにゃ!!」
「んなもん、教えるか!」
薙刀を捌いていき、隙が出来た箇所に重い拳を何発か打ち込んだ。妖術で出来た鎧によって、致命傷は受けていないが生身で受ければ死んでいる程の威力がある。
何故、強化しても動きは全く変わらずにいられるのかは、ロールとの体力と魔力の消費するギミックが違うだけ。ロールは今みたいに発動したまま戦うと、体力と魔力が減っていく。だが、啓二は発動中は全く減らずに、解除した瞬間に魔力が全部無くなるのだ。10分は強力な身体を手に入れるが、最後にはエネルギー切れで倒れる。
そのようなギミックが違うから、啓二は発動中でも消費はせずに全力で戦えるのだ。
「にゃ、幹部のアタシが負ける?そ、それは嫌だぁぁぁぁぁ!!」
ロールは最後の攻撃に出る。残った全ての魔力を攻撃の妖術に込めて、防御を捨てた。鎧が消え、薙刀が膨れ上がって形が変わっていく。その姿は虎、色は薄い青と白が混ざっており、正に白虎と言う名がぴったりだろう。
「”白虎頸牙”ぁぁぁぁぁ!!」
ロールは薙刀の姿を変え、生きているように白虎が風を切りながら突進してくる。鎧が無くなって防御が無くなったが、触れただけで全てを斬り裂く諸刃の剣となった。啓二でもまともに受ければ塵になって消え去ってしまうだろう。
「これが、お前の最大技か。だが、甘い!!」
捨て身のような攻撃に啓二は甘いと言って切り捨てる。一点に集めた魔力は一撃必殺にピッタリな迫力を持つが、ロール本人の防御が低いという反面もある。
一対一なら啓二も最大技で相対していたかもしれないが、ここでは啓二の本気を見せる時ではない。まだロールよりも強い魔王という存在があり、今までは一対一でロールと戦っていたが…………
啓二には仲間がいることを忘れてはないか?
「ふにゃぁ、あぁぁぁ!?」
ロールは死角であった地面からの斬撃を受けて、”白虎頸牙”が揺らいでしまう。地面からの斬撃は、啓二の後ろにいる勲が刀を地面に突き刺して、スキルによる技である。
そう、啓二には仲間がいて一人で戦う必要はない。斬撃をまともに喰らってしまったロールは”白虎頸牙”を保つ集中力を乱され、威力が落ちている。
「一人で来たのが運の尽きだったな」
啓二は右手に筋力のエネルギーになる力が集まっていく。ロールはその力がヤバいと理解したのか、
「待っ…………」
「もう遅い、”魂丸玉”!!」
啓二は聞く耳を持たない。ロールは既にここの兵士を沢山殺しており、許すことは出来ない。
右手から放たれた二十メートルに届く透明なエネルギーの玉がロールを飲み込んでいく。悲鳴をあげる暇もなく、この世から消え去った。
「ふぅ……、いいタイミングだったぞ。勲…………」
ロールは消え、仲間がいる後ろへ振り向いたらーーーー
「ぐっ……!」
「勲!?」
裕美を庇って、肩に怪我をする勲の姿があった。怪我をさせた人物は背中に翼を生やしており、人間の姿をしているが黒い翼があることから魔人だとわかる。
そう、今まで隠れていた幹部の一人であるゼロクアだ。
「あれ、完璧にやれたと思いましたが、まさか避けられてしまうとは」
「勲ぉぉぉぉぉ!!」
啓二は一瞬でゼロクアの懐に入り、拳を打ち込もうとするが、上へ逃げてしまって空振りになった。
「勲!」
「あはは、大丈夫だ。肩を掠っただけで問題はない。だから、ケイたんは集中してくれ」
「あ、あぁ……」
啓二はホッとしていた。勲には先読みをするスキルを持っており、たまたま裕美を見た瞬間に、裕美の胸を貫かれる未来が見えたため、庇ったわけだ。
もし、勲の能力がなかったら地面から現れたゼロクアによって、裕美は殺されただろう。
「さすが、召喚された者と言うべきか。ロールがやられてしまうとは、計算違いでした」
「貴様、仲間に傷を付けやがって…………。もう許さねえ!!」
啓二の『全魔変換』の制限時間はあと半分しかないが、ロールと変わらない実力なら勲、裕美と協力すれば勝てると信じていた。
「ふふっ、自己紹介ぐらいはさせて下さい。私はゼロクアと申します。ロールと同じように幹部ですが……」
ドバッ!と抑えられていた魔力が噴きだされる。その魔力はロールを軽く超えており、悪魔族としての高い能力が現れている。
「私をロール程度と同じように考えないで欲しいですね」
街の中で、魔王の幹部との第二戦が始まるコングが鳴らされた瞬間であった…………




