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第十二話 パーティ編成

本日一話目



「アタイのパーティメンバーをやったの誰だ!!」



 その女性の声で、ギルドにいた全員がこちらに向けた。その視線で、こちらがパーティのメンバーをやったのがわかったのか、ずかずかとこっちに向かってきた。




「あんたがやったのか……」




 怒りを込める瞳をした赤毛の女性。




 そのまま、輪廻の方に向かって………………………………来なかった。

 女性の視線は…………






「そこのメイド野郎! お前がやりやがったのか!!」






 輪廻の横に立っていたテミアに注がれ、怒鳴ってきた。




「…………はい?」


 テミアは、コイツ、何を言っているんだ? と言うように見下げていた。




「だから、アタイのメンバーをやったのはお前だろ!? 全員の視線がそう言っているんだぞ!!」

「…………はぁ」


 面倒臭そうな溜息を吐くテミア。その溜息に、さらに顔を赤くしていた。このままでは、また私闘が起こりそうなので、輪廻が2人の間に入った。




「あのー、お姉さん、いいですか?」

「なんだ? この少年は? コイツの近くにいたら危ないからアタイの後ろにいるんだ」


 輪廻に気付いた赤毛の女性はさっきと違った優しげな声で話して来る。




「そうじゃなくて……」

「貴女、御主人様に触らないで下さい。獣臭さが移りますから」

「何だとぉ!? アタイは獣臭くねぇ……………………待て、御主人様?」

「ええ、ですから御主人様に触らないで下さいと」


 御主人様と聞いて、赤毛の女性は周りを見るが、そんな人がいるようには見えなかった。いるのは1人の少年だけで…………




「あー、テミア。少し黙っていて」

「畏まりました」


 輪廻がそう言うと、赤毛の女性から一歩、離れて黙る。これに気付いたのか、赤毛の女性はこっちに目を向けてきた。




「ま、まさか……」

「そっ、そのまさかだよ。御主人様は俺のことで、あの男をやったのも俺だよ。あ、証拠はこれね」


 そう言って、まだ手に持っていた男の指を渡した。

 指を渡されて、固まる赤毛の女性。しばらくして、ようやく理解したのか…………






「えぇぇぇーーーーーーっ!?」






 まさか、小さな少年がDランクの男を倒したとは思えなくて、叫び声が響き渡るのだった…………






−−−−−−−−−−−−−−−






「本当にすまねぇぇぇぇぇ!!」


 赤毛の女性は輪廻に土下座をしていた。叫び声が上がった後に、リーダが何があったのか全て説明をして………………こうなったのだ。


 まぁ、謝るのは当然のことをあの男がしたのだから。赤毛の女性はパーティのリーダーをやっており、あの男は最近、パーティに加わったといえ、迷惑を掛けたのだからパーティのリーダーからも謝罪が必要だろう。

 監督不足という責任として…………




「いえいえ、こっちは怪我もありませんし、もう自分で仕返しをしたのですから気にしていませんよ」

「いや、パーティを纏める存在として、謝罪をしなければならない!」


 頑固として土下座から動こうとしない赤毛の女性。






「おい、ラン。謝罪をするのはいいが、このままだと少年が女性をずっと土下座させたと悪名が立ってしまうからそこまでにしとけ」

「っ!? す、すまない、そこまで考えが回らなくて……」


 介抱していた男の1人がランと言う赤毛の女性にそう言って、土下座を止めさせた。




「えぇと、こっちのツレが迷惑をかけてすまなかったな。少年の名を教えてもらってもいいか?」

「輪廻でいいですよ」

「そうか、俺はダリオと言う。コイツはパーティのリーダーをやっているランだ」

「お、おう。ランと呼んでくれ。少し待ってくれていいかな?」

「いいですが……」


 ランがこっちに断りを入れて、介抱されている男の元に向かった。そして…………蹴り飛ばした!!




「目を覚ましやがれ!!」

「あ、あぁぐ……」


 腹を蹴られて、気絶から覚醒したが、痛みで動けないままだった。




「お前が何をしたのかわかってんのか? ギルドに登録したばかりの新人に因縁をぶっかけた? アタイ達のパーティに泥を塗るつもりか!!」


 1人の行動でパーティのメンバーに迷惑を掛けたことに怒っているのだ。




「もういい、お前とのパーティは解消だ。アニー、指を繋ぐだけでいい」

「わかった……」


 傍にいた女性は魔術師で、回復の魔法が使える。ランは指を繋げるだけで、骨折は治さなくてもいいと言っているのだ。

 そのことにアニーと後ろにいたダリオは異論がなかった。おそらく、最近に問題を起こしたことがあって、また問題を起こしたからパーティから外したのだろう。

 ではないと、メンバーの反応が冷た過ぎる。




「待たせてすまなかった。どう謝罪すればいいかわからないけど……」

「俺達が出来ることなら何でも言ってくれ」

「終わった……、少年は怪我ない?」


 謝罪をしたいが、思い付かないから、何かあるか聞いているようだ。アニーと言う魔術師はもう指を繋げ、さらに、こっちの怪我はないか心配もしてくれた。




(悪い奴じゃないのはわかるが、こういう義理が固そうな人は断っても反対に断られそうだな……)


 どうしようかと思った時に、テミアが手を挙げてきた。




「ん? テミアは何か思い付いたのか?」

「はい。パーティ全員の全財産を剥いではどうですか?」


 テミアの言葉にピシッと空気が固まった気がした。




「あ、貴女はね……、アタイ達を路頭にさ迷わせたいの……?」


 ぴくぴくと青筋を浮かべるラン。他の二人はテミアの言葉に信じられないような目で見ていた。




「あれ、良い案だと思ったのですが?」

「何処が良い案なのよ!? アタイ達が出来ることと言ったでしょ!! って、なんで戦ってない貴女が決めるのよ!?」

「はぁ……、案と言っただけで決めたわけでもないのに、怒鳴るなんて獣のような女性ですね」


 テミアは呆れるように首を横に振っていた。




「あ、貴女は……、喧嘩を売っているわけぇ……?」


 ランは我慢の限界と言うように、拳を握っていた。

 このままでは、ここで私闘が起こりそうな雰囲気なので、また輪廻が止めに入る。




「テミア」

「はい」

「物騒な言動は控えるようにと言ったよね? しばらく黙りなさい」

「承りました」


 そう言って、口を閉ざす。その後、ランに向き合う。




「すみませんね。うちのメイドは冗談を言ってからかうのが好きなので」

「いや……、メイドの目が結構本気だったんだけど……」


 ダリオがそう言うが、輪廻は無視する。




「謝罪の件では、気にしなくてもいいと言っても引かないでしょう?」

「ああ。あのクソメイドはともかく、輪廻に迷惑を掛けたからな。貸しを作ったままだと、気持ち悪いからな」

「そうですか……、では、一ついいですか? 今日の予定は空いていますか?」

「予定? 本当なら、合流したら請けた討伐依頼をしようと思ったが、必要ならキャンセルしてもいい」

「いえ、そんなことをしなくてもいいですよ。では、その討伐依頼に同行してもいいですか?」

「え、そんなことでいいの?」


 ただ、一日だけパーティを組んで、ラン達が請けた討伐依頼をやる。

 それが輪廻の願いだった。




「ダリオ、アニーもそれでいいか?」

「おう、全財産を剥いで取られるよりはマシだからな」

「いいよ……、あの男より強いなら、問題はない……」


 2人も了承し、テミアは輪廻に反対することはない。




「よし、よろしくな!」

「よろしくお願いします」


 輪廻とランは握手をし、一日だけパーティを組むことになった。






「あ、まず武器を買いに行きたいのですが、武器屋が何処にあるか教えてくれますか?」

「武器屋か、アタイ達がよく行く場所でもいいか?」

「ええ、武器を買えれば充分なので」


 という訳で、まず武器屋に案内してもらうことになった。

 まだランとテミアの間はギスギスとしているが、一日だけなら問題はないだろうと判断する。

 3人に着いていく間に、小さな声でテミアの得意な武器を聞いておく。




「瘴気を使わない方面で行くように。あと、武器は何を使う?」

「そうですね、瘴気を使わないならば、筋力の高さにモノを言わせる戦い方になりますね」

「あ、そういえば……、武器関係のスキルを持っていないな」

「なので、壊れにくい武器であれば」


 テミアは魔力が一番高いが、筋力も結構高い方で、壊れにくい武器を振り回すやり方で行くらしい。




(敵を撲殺するメイド…………、なんかシュールだな……)


 テミアが戦う姿を思い浮かべたら、笑いが出そうになった。


 しばらく、歩いたら3人がよく使う武器屋に着いた。




「ここだ。ここなら色々な武器が置いてある」


 中に入ると、言った通りに色々な武器が置いていた。




「色々な武器がありますね……」

「おう、ラン達じゃねぇか。……見知らない2人もいるな」


 中から出て来たのは、ドワーフの店長だった。


「久しぶり」

「そうだな。で、2人がここの武器を買いに?」

「ああ。ギルドに入ったばかりだが、実力は充分だぞ」

「ほぅ、武器は何を使うんだ? 見繕ってやるよ」

「はい、まずテミアの武器ですが……、ここで一番重くて固い武器を」

「は?」


 後ろにいる細腕のメイドの武器がここで一番重くて固い武器だと言い、2人以外が呆けていた。




「おいおい……、坊主よ、メイドにそんな武器を持たせるつもりなのか……?」

「ええ、問題はありませんよ?」


 念押しに聞いてくるが、輪廻は笑顔で答える。




「ちょっと!? クソメイドにあんな武器を持たせるつもりなの!? どう見ても無理でしょ!?」


 ランの中でテミアはクソメイドと定着しているようだ。テミアを一度見るが、細腕で輪廻が言った武器どころか、普通の武器でも怪しい。




「……わかった。坊主は本気で言っているようだし、一番奥にある武器でどうだ? あれが一番重く、固い武器だ」


 奥と言われた場所には、一本の大剣があった。いや、大剣と言っても形が変だった。




「あれは……! オーガが使う剣じゃないですか!?」




 ダリオがそう叫ぶ。オーガが使う剣だと言った武器は、剣と言うより、包丁に近い。




「持っ手だけは人間が掴めるように作り直しているが……」

「重すぎて、誰にも持てなかったと?」

「ああ、坊主の言う通りだ。だが、そのメイドが持てると言うか?」

「ええ、持てたら安くして下さいね」


 すかさずに、交渉する輪廻。そのことに驚くドワーフだったが、だんだん笑顔になっていき…………




「がははっ! ここで交渉をするか! 面白ぇ、大包丁剣を持って、振れたら無料にしてやる!!」

「言ったな? テミア!」

「はっ」


 テミアがオーガの武器、大包丁剣の持っ手を掴む。

 ゆっくりと力を入れていき…………






「なぁっ!?」






 テミアは涼しい顔で、大包丁剣を片手で持ち上げていく。周りにぶつけないように、細かく動かす。その剣速は普通の剣を振るスピードと変わらなかった。

 輪廻以外は声が出なかった。




「テミア、どうだ?」

「はい、問題はありません」

「よし、これは貰っとくな」

「あ、ああ……」

「次は俺だが……、ナイフはあそこか」


 飾られたナイフがある場所まで歩いていき、ナイフを見ていく。




(ふむ、どれも丁寧に作られているな。予備も買っておきたいし……)


 今、持っているサバイバルナイフに近い形をしたナイフを二本、手に持って店長に聞く。




「店長、この二本のナイフはいくらだ?」

「その二本なら、銀貨40枚ずつで、銀貨80枚だ」

「よし、買った。ナイフのホルダーとあれの鞘を頼めるか?」


 輪廻は腰に付け、テミアは背中に付けるホルダーと鞘も買って、武器屋を出た。

 まだ三人は呆けていたが、二人がドワーフにお礼を言い、店を出ると慌ててついていく。






「……なぁ、2人が何者か気になったんだが?」


 これから討伐に行く途中に、ランがそんなことを聞いてきた。だが、輪廻の返事はいつも通りだった。




「秘密ですよ。それより、何を討伐するのですか?」

「むぅ、気になる……」

「北の山でゴブリンが大量に発生したから、それらを討伐するわけだ」

「了解しました。早速、行きましょう」


 ランは二人の秘密が気になり、頬を膨らましていた。ダリオはもう驚くのは疲れたように、苦笑していた。アニーもランと同様に気になっていて、じーっと二人を見ていた。




 輪廻は初のパーティでゴブリン討伐に北の山に向かうのだった…………







次は昼頃になります。

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