第百十一話 走馬灯
久しぶりです!!
昨日の夜に新しい小説を載せたので、読みに来てねー。タイトルは『落ちこぼれ悪魔っ娘の手を取る』になります。
異世界系ではなく現代系になるけど、悪魔っ娘からパートナーに選ばれて戦う話になり、楽しく読めるかと思います。
よろしくお願いします。
”冥王”を発動していても、届かないステータスの差。さっきまでは手加減していたようで、これからがゼゥクの本気が膨れ上がる。
「がぁっ!?」
「御主人様!?」
輪廻は手首を掴まれたまま、腹に膝蹴りを喰らってしまった。”冥王”を発動していたから、何とか耐えられたが、もし素だったら間違いなく上半身と下半身が半分になってもおかしくはない威力だった。
テミア達もヤバいと感じたのか、壊れない結界へ攻撃していた。
『おいおい、無駄なことをするなよ。壊れねぇからな』
「御主人様に触るなぁぁぁ!!」
テミアだけではなく、シエルとルフェアも攻撃をするが、結界は無傷だ。
「みんな…………」
輪廻もテミア達を見て、このままやられているわけにはいかないと、近距離から”虚冥”を発動して、掴んでいる手を狙った。
ドバァァァァァン!!
「ギィッ!?」
攻撃が当たって、距離を取ることに成功したが、狙った腕は少し欠けただけで、ほぼ無傷だった。”虚冥”をすぐに作って発動したから、魔力が不十分だったといえ、普通の耐性力なら吹き飛ばせる程の威力が込められていたのだ。
「ち、硬いな!?俺は大丈夫だから、無駄なことをするなよ!!」
「は、はい」
「本当に大丈夫なの!?」
「あいつは全員でかからないと勝てないぞ?」
ルフェアにはわかっていた。輪廻でも勝てないと。
だから、全員でやるべきだと言うが…………
「…………いや、あいつに勝てないなら魔王やその幹部にも勝てねぇだろうし。だから、俺が強くなりたいんだ。お前達を守れるぐらいには!!」
輪廻の覚悟、仲間達を守りたいという気持ちは前の世界では持たなかったものである。だが、テミア達に出会って初めて守りたいと言う気持ちが生まれたのだ。
輪廻の覚悟を聞いた皆は眼が潤んでいた。それ程に大切にされていることが嬉しいのだ。
『おー、いい覚悟だな。だが、こいつに勝てないと意味がないけどな』
「倒してみるさ」
先ほど、腕一本はいかなかったが、欠けさせることは出来たから攻撃が全く効かないのはないだろう。
だったら、少しずつ削り倒せばいいと輪廻は突っ込んだ。遠距離攻撃ではウィアが防いでしまうから近距離から高い威力を持つ攻撃を当てる。そこに勝機があると判断していた。
「うらぁっ!!」
気を使った攻撃に、”虚冥”を近距離からぶっ放した。だがーーーー
「ウィア!」
ウィアが”虚冥”を防いで、気を使った攻撃は邪剣イグニウルが侵食してかき消す。そして、そのまま回し蹴りで輪廻の脇腹を打ち抜いた。
「グギィッ!!あ、あぁぁぁ!!」
「!?」
輪廻は脇腹を打ち抜かれても、脚を掴んで吹き飛ばされないようにしていた。そのまま、”気功内流”で気をゼゥクの中へ流した。
気で中から破壊をするために。
「ギガッ!!」
なんと、邪剣イグニウルを自分の身体に刺して、黒く染めていた。その黒が輪廻の気を押し返して、反対に輪廻に侵食しようとする。輪廻はこのままだとヤバいと感じ、手を放して”縮星”をゼゥクの両端に放つ。引力が両端から生まれてゼゥクの動きを止めようとしたが、
「ムダムダ!!」
「なっ!?」
黒くなった骨の形が変わって、”縮星”を突き刺して破壊した。それだけで終わらず、骨の集合体というものがゼゥクの胸から出てきてパイルバンカーのように打ち出してきた。
虚を突かれた形だったので、輪廻はモロに喰らって、壁がある先まで吹き飛ばされてしまった。
「う、がぁっ…………」
このダメージは意識を刈り取るには充分過ぎて、輪廻の身体から力が抜けてしまう。さらに、額からも血が流れてきて、意識が薄くなるのを感じられていた。
テミア達が何か叫んでいたが、聞こえず、最後にはゆっくりと近付いてくるゼゥクの姿が見えて、意識が完全に落ちた。
お………………おき……ろ……………………起きろ!!
その声で目を覚ました…………と思ったら、目の前には倒れている輪廻と修業に付き合っている父親の姿があった。
これは…………走馬灯か?
意識は覚醒していないのに、起きているような気分で昔のことを思い出していた。
目の前にいる輪廻はまだ6歳だった頃だ。この歳から暗殺者としての修業が始まり、父親から鍛えられていた。
あの時の輪廻はまだ弱くて、すぐに気絶をしたり泣いたりしていたものだ。
「起きろ!!まだ終わってないぞ!!」
「ち、父上……、何故、暗殺者にならないといけないのですか……?」
「それは話しただろう。その稼業に生まれたには、お前にも暗殺者になってもらわなければならない。それが運命だ!!」
そうだったな。だから、俺は自由を求めていたんだ。しかし、走馬灯を見ているということは向こうでは死にそうってわけか。
せめて、最後にはテミア達の顔が見れる走馬灯にして欲しかったものだ。
輪廻はわかっている。今の輪廻ではゼゥクには勝てないと。もう自由を手に入れることが出来ないなら、楽になった方がいいんだろうな…………
「諦めるな!!」
っ!?
父親からの言葉で走馬灯に目を向けてしまう。
「運命だからと言われたら諦めるのか?そんなもの、覆して見せろ。俺の子供ならなっ!!」
あぁ……、確かに父上はこんな奴だったよな。運命だ!と言った先に覆せと言うんだしな。
運命か…………、別の世界に行くことによって稼業から離れることが出来たよな…………………………いや、変えてねぇな。ただ、逃げた(・・・)だけだ!!
輪廻は運が良かっただけで、運命を変えられたわけじゃない。ただ逃げたのと変わらないことに理解したのだ。
そして、映像が変わった。次は輪廻が8歳の頃。
「2年でお前は強くなったよな……」
「いえ、父上が厳しく教えて下さったからです」
暗殺者としての才能が開花したのが8歳だった。この話の後、父親と母親は海外へ向かい、年に一回か二回にしか帰ってこれなくなる。
「父上にとって、暗殺者とは何でしょうか?」
そういえば、そんな質問をしたな。確か、その答えは…………
「大気。世界中の何処にもある大気だ。わかるか?」
「暗殺者との繋がりがわかりませんが…………?」
そうだった。父上は『大気』と答えていた。
「大気の意味はわかるな?」
「まぁ、窒素、酸素を主成分で世界を包む気体……ですね?」
「そうだな。意味としては合っているが、俺はこう考える」
大気とは気配に似ている。人間を地球と考えれば、気配は大気になる。
そんな暴言みたいなことを言っていたが、気配は大気と同じように見えないし、人間は地球と同じように見える。
それは無理矢理な考え方だが、父上なりの暗殺者の表し方なのだ。
つまり、暗殺者は気配そのものと言っており、存在を薄くすることに努める暗殺者には、見えない大気になるのと変わらないかもしれない。
暗殺者は、前の世界では渋々とやってきたが、厳しい修業のおかげで実力はかなり付いてきた。
だが、この世界では活かせているのか?
それは否だ。魔法という特別な力が合って暗殺者らしくこそこそと動いて殺す必要がなかった。
前の世界では静かに殺すことが当たり前だったので、この世界では派手にやりたい心情が心の底にあったから、派手な攻撃が出来る『重力魔法』が出たと思う。
だが、『重力魔法』ではゼゥクに通用しなかった。これだけではゼゥクに勝てないなら、暗殺者として戦うのもいいかもしれない。
そう、父上が言っていた大気のような暗殺者を…………
太陽神ラーの神殿は今、光に包まれていた。
『な、なんだ!?』
「ギィッ!?」
光は輪廻の身体から出ており、気絶していたはずの輪廻が立ち上がった。
「ナイフが鼓動している……」
手に持っているのは、前の世界から持ってきた黒いナイフだ。このナイフはただのナイフなのに、心臓を持っているような鼓動をしていた。
そして、輪廻がそのナイフを振ると…………
ゼゥクの右手が切り落とされた。
「ギギッ!?」
『何が!?』
ナイフの周りにナイフと同じ刀身が銃のリボルバーのように充填されていた。
「これが、新しい魔法か。父上……、今まで鍛えさせてくれてありがとうな。これからも暗殺者として、自由に生きていくよ……」
何処にいるかわからない父上に対してお礼を言って、『重力魔法』から変わる新たに進化した魔法…………
特異魔法『大気魔法』
父上の言葉から暗殺者として戦うと決めた輪廻は、新たな魔法を手に入れて、ゼゥクに向き合うのだった…………
新しい魔法を手に入れたー!!




