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第百九話 輪廻vs元勇者

はい、どうぞ!!

 


 結界が現れて、中にいるのは輪廻と人骨のゼゥクだけ。他の人は弾き出されたため、結界の外で見ているしか出来ない。

 さっき、攻撃して破壊しようとしたテミアだったが、傷が一つも付かなかったことから破壊するのは難しいようだ。

 輪廻はとっくに戦闘態勢に入っており、警戒しながらゼゥクに問いかけていた。




「おい、意識はあるのか?」

「…………」


 さっきまでのゼゥクはいなくて、無言で立ち尽くすだけだった。代わりにガーゴイルの声が響いた。




『もうこいつは喋れねぇよ。ワイがそう細工したからな』

「細工?やはり、骨をここに持ってきたのも……」

『そうだ。全てはワイが仕組んだ。四つ目の条件にゼゥクが含まれたのは偶然だが、それについては問題はなかったさ』


 つまり、ゼゥクから邪神のことを話されるのも織り込み済みだったようで、今更知られても問題はないと言うのだ。




「まだこれは四回目だろ?もしクリアしたとしても、邪神は復活しないはずだ」

『ククッ、今はそんなことを話すために二人っきりにしたわけじゃないさ。さぁ、試練を始めようじゃないか!!』


 ガーゴイルの声が合図になったように、今まで動かなかったゼゥクが雄叫びを上げて、何もないところから長剣を生み出した。




「ぎぃガァァァ……邪剣、イグニウルぅ……」

「邪剣?」


 ゼゥクが言ったことに初めて聞く言葉が含まれていたことに気付く。魔剣なら知っているが、邪剣と言うのは聞いたことがない。




「なんだそれ?見たことも聞いたことがないぞ?」

「吸血鬼幼女でも知らないということは未知な武器ですね。御主人様!お気を付けて下さい!!」


 輪廻はその叫びに頷き、邪剣イグニウルと呼ばれた剣を注視する。長剣の様に長くて二メートルはあった。形は刀身に二体の蛇が巻きついており、それでは切れないのでは?と思ったが、次の行動で考えが変わった。




「ウィア……、エズリィ!!」


 呼んだのは名前だろうか、声が響く同時に二体の蛇が動き出して剣から離れて、両腕に一体ずつが巻きついたと思ったら刺青のように骨へ浸透していった。




「ち、見た目では何の効果がわからないな…………なら!!」


 輪廻は効果を発動される前に、ゼゥクを斬ればいいと動いた。紅姫を振るい、首を狙ったが…………




「む?」


 魔力の刀身が首の十センチ前で止まっていた。よく見ると、薄い蛇がゼゥクの身体に巻きついて守っているのがわかった。

 蛇が魔力の刀身から守っていたようで、ゼゥクには傷一つもない。




(蛇の繋がりから、腕に巻きついた蛇の効果ってわけか。あと一体は…………)


 蛇は二体はいたので、もう一体が別の効果を持っていると予測していた所にーーーー






「ギガアァァァーーーー!!」

「はやーー!?」


 ゼゥクがたった一歩を踏み込んだだけで、輪廻に届きそうな距離まで詰められていた。輪廻はなんとか邪剣イグニウルの突き攻撃に反応して、紅姫で払う。剣での攻撃は防げたが、次に来た蹴りは避けられなかった。




「ぐぅっ!!」


 腹に蹴りが入ったが、輪廻は避けられなくても後ろに飛んでダメージを軽減させていた。少し後ろに飛ばされたが、すぐに体勢を立て直して紅姫を様々な方向から振り抜く。




「ウ、ウィア!!」


 ゼゥクが蛇の名を叫ぶと、さっき首を守っていた蛇が輪廻の攻撃に対応してみせた。ウィアはゼゥクに巻きついて、隙間もない鉄壁の守りを作り出して攻撃を受けていた。輪廻が何回も攻撃をしようとしても、ゼゥクに届かずに十センチ前で止められてしまう。




「硬いな…………、いや、あの蛇は何らかの効果で防いでいる……?」


 硬くて斬れないというより、届いていないような感触を受けられたため、違和感を感じたのだ。先に謎を解き明かさない限り、ゼゥクに傷を付けるのは無理だろうと考えるが…………




「エズリィ!!」


 ゼゥクには待つ理由があるわけでもないので、輪廻がゆっくり考える暇もなく、別の蛇が動き出す。




「”滅蛇矢”!!」

「シャァァァーーーー」


 今度は蛇が身体を伸ばしきった状態で弓で矢を射ってくるようにーーーー





 黒い光の矢となった。






 輪廻は蛇が動き始めた時点から嫌な予感、ここにいたら危険だと察知していたため、蛇が矢になる前から体勢を考えずに横へ飛んでいた。

 その危険察知のおかげで、黒い光の矢は輪廻の脚に届くか届かないの距離で通り過ぎていった。




「っ!?」


 横へ飛んでいた輪廻は矢そのものは避けられたが、矢から生み出されていた衝撃破に吹き飛ばされて結界がある所にぶつかった。結界には攻撃性はないから咳き込むだけで済んだのだった。




『おおっ、これをほぼ無傷で避けるのか。流石、頼んでいた物を持ってきたぐらいには強くなっているな!!』

「うっせぇよ……、骨の癖に早く動くわ、攻撃も防御も桁外れじゃねぇか」

『そりゃ、そうだろうな。元は勇者だったし、レベルもお前よりは高いからな。そこはお前もわかっていたことだろう?』


 そう、ゼゥクは死んでもレベルという概念はまだ残っている。前は勇者だったことから、半端なステータスではありえないのは予測出来る。

 それに加えて、変な効果を持つ邪剣イグニウルもある。

 ゼゥクはまだ魔法を一度も使っていないから、ゼゥクの全てを知ったわけでもない…………、それらをまとめて考えれば、輪廻が不利だ。




(間違いなく、俺よりレベルが格段に上だな。魔王を倒すために強くなったと言っていたな…………ん?魔王?)


 輪廻は一つだけ気になったことがあったので、戦いの途中だが、ガーゴイルに聞いてみる。




「おい、ガーゴイル。ゼゥクは魔王を倒せたのか?」

『戦闘中に聞くことかよ?……まぁ、いいか。ゼゥクは魔王に挑む前に邪神を復活させた。それが答えだ』

「成る程……」


 魔王はゼゥクに倒されて、次の魔王が現れたわけではなく、前から変わらないままのようだ。つまり、魔王は…………




「ちっ、こいつを倒せるぐらいには強くなければ、魔王相手には生き残れなそうだな」


 そう、長年生きている魔王は目の前にいるゼゥクよりも強い可能性。輪廻には魔王を相手取る理由がないといえ、もしもの場合がある。もし、向こうから輪廻の旅を邪魔をする可能性もあるので、魔王よりは強くなっていなければ、安心して旅をすることが出来ない。ルフェアから指導を受けているのも、そんな理由である。自分が全ての上に立ちたいから強くなりたいのではなく、ただ仲間と一緒に生き残りたいから。自由に安全に旅をしたいから。

 ただ、それだけなのだ…………




「ハァァァーー!!」

「黒いモヤ?」


 最初に苦しんだ時に出ていたモヤが剣に纏まり、斬り掛かってきた。モヤがどんな効果を持つかわからないが、いつまでも回避するだけでは限界がある。




「くっ!」


 剣の連撃に避けきれず、紅姫の魔力の刀身で受けてしまう。そしたら、魔力の刀身がモヤに侵食されていくのではないか。

 凄い勢いで紅姫の本体まで来そうな所に輪廻はとっさに魔力を切り離した。

切り離された魔力が霧散していくのを見ていたら、輪廻の反応が遅れた。






 ガチィッ!!






 振るわれた邪剣イグニウルは紅姫の本体へ向かい…………紅姫は粉々になって壊れてしまった。






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