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第十話 冒険者ギルド

本日一話目。



 日が完全に地平線から出て来て、朝の時間になった。

 皆は朝の食事で、ホールのような広い場所に集まっていく。

 ここには、英二、絢、晴海、貴一の姿があり、他のクラスメイトや先生の姿もあったが…………




「あれ、輪廻君は? 姿が見えないんだが」

「あ、本当だ」


 英二、晴海に続いて、輪廻がいないことに気付いた。




「絢は輪廻を知らないか?」

「ええと、ここに来る前にノックしたけど返事がなかったから、まだ寝ているかも……」

「あー、昨日は遅くまで起きていたからねー」

「そうだったら、僕達も悪いことをしたかな?」


 輪廻が大人びているといえ、身体はまだ11歳の子供なのだ。

 小学生と高校生では必要な睡眠時間が違うのも知っている。なのに、遅くまで部屋にお邪魔をして今、輪廻が寝坊していることに罪悪感を覚えていた。




「そろそろ、朝ご飯だから、呼びに言った方がいいじゃないか?」

「そうだね。でも、メイドさんに聞いてからの方がいいじゃない? それもメイドの仕事っぽいから」

「あー、メイドさんの仕事を奪うのは良くないよな」


 ここは地球と違い、メイドを使うことに慣れる必要があるのだ。メイドの仕事を奪うと、メイドの仕事がなくなって解雇されてしまうこともあるらしい。

 寝坊しているお客様を起こすのはメイドの仕事でもあるから、近くにいたメイドさんに輪廻のことを話した。




「承りました。皆様は座ってお待ちください」

「ああ。わかった」


 やはり、これもメイドの仕事になり、皆は椅子に座って食事が来るまで待つことに。






「皆様、おはようございます」

「エリー、おはよう」


 英二に続いて三人も王女様であるエリーに挨拶をし、会話が始まる。




「あら、少年の姿がお見えになりませんね」


 輪廻はある意味、有名で王城の中で知らない人はいないのだ。

 輪廻は訓練では勇者の英二にも負けない実力を持ち、文字を早々と覚え、色々な本を読んで、勤勉さを見せたのだ。これで有名になってもおかしくはない。




「輪廻君は、珍しく寝過ごしているみたいなんです」

「そうなの? やはり、疲れが溜まって……?」

「確かに、頑張り過ぎているかもしれないけど、昨日は僕達が夜遅くまで、部屋にお邪魔をしていてね」

「そうでしたか」


 輪廻は11歳にしては、頑張りすぎだと皆も思っていたのだ。だったら、メイドに言わないで、もう少しゆっくりさせれば良かったかな? と英二が考えていた時に…………






「た、大変です! 輪廻様がいません!!」

「えっ!?」


 メイドさんの声にすぐ反応したのは絢だった。

 そして、メイドさんが紙をエリーさんに渡していた。




「このような紙が残っていました……」

「これは手紙ですか?」


 エリーは受け取り、中身を読んでいくと、だんだんと驚愕の顔になっていく。

 その表情が気になったのか、絢がエリーに問い詰めていた。




「その手紙に何が!?」

「くっ、読めねぇ……」


 貴一がエリーから手紙を奪って読んだが、この世界の文字で書かれており、貴一は読めなかった。英二、絢、晴海はまだ文字を半分ほどしか覚えていないから、単語なら何とか読めるが、文章になると読めない。

 だから、エリーに聞いたら…………




「えぇと……、『旅に出るので、探さないでね☆』と書いてありました……」


 エリーは言いにくそうに、手紙の内容を話してくれたが…………






「「「…………えっ?」」」






 一瞬だけ意味がわからない顔をし、それが理解するようになり…………






「「「ええぇーーーーーっ!?」」」






 驚きの声で部屋にいた他の人も何事だ!? と視線が集まったのだった…………






−−−−−−−−−−−−−−−






 王城では、驚きの嵐に見舞われている時、輪廻の方は、冒険者ギルドの前に立っていた。




「ここがギルドか。身分証明書の変わりになるギルドカードを作れるよな?」

「ええ、この世界のことを少しは勉強はしてきたのでギルドカードのことはわかります」

「テミアは人間臭いな……」


 魔族なのに、何故、人間のことに詳しいんだ? と気になったが、聞いてもいつも勉強しましたからとしか答えない。

 それは輪廻の害になることではないから、別に構わないが、そんなことより気になることがあった。






「……なぁ、本当にメイド服で旅をするつもりか?」






 今のテミアの姿はメイド服である。出る前にテミアが着替えを持ち出していたが、全ての着替えはメイド服だけだったのだ。




「はい、御主人様はメイド服が好きでしょう?」

「好きか嫌いのどちらなら、好きなんだが……、目立って仕方がないんだけど……」


 今も周りからジロジロと見られている状態なのだ。メイド服を着ているからだけじゃなくて、テミアの容姿が良いのもある。髪はファンタジーな水色で肩まで届くぐらいの長さ。

 身長は160センチぐらいでまだ11歳の輪廻より大きいが、暴漢に絡まれたら助けてあげたいと思うぐらいの可愛さを持っている。




「このメイド服は動きやすいし、可愛いと思うのでいつでも着ていたいのですが、駄目でしょうか?」

「あー、旅の邪魔にならないと思うなら、好きにしていい」

「御主人様、ありがとうございます」


 メイドらしく、御主人様にお礼を言う。輪廻は言動と姿勢といい、テミアはメイドにハマリ過ぎねぇ? と思ったが、好きにさせることにした。




「とにかく、ギルドカードを作るか」

「あ、お金はどうしましょうか? 1人で銀貨1枚必要でしたはず……。必要なら、周りの人から奪いましょうか?」

「なんで、そんなに物騒なんだよ……。お金なら金貨があるから物騒な言動は控えとけ」

「了解致しました」


 テミアの言動に周りの人がギョッとしたが、無視する。








「冒険者ギルドにようこそ。僕は当のギルドに何か用のあるかな? 依頼の発注?」


 受付嬢は小説と同じように、綺麗な人しかいなかった。その1人が輪廻の相手をする。

 受付嬢は輪廻がメイドを連れていることから、何処かの貴族が依頼をしに来たと思っているようだ。




「いや、ギルドカードを作りに来た」

「えっ!?」


 周りがざわつく。まさか、メイドを連れた目の前の少年が冒険者になりにきたとは思わなかっただろう。




「僕、冒険者はとても危険な仕事なのよ? それでもなるの?」

「そうです。冒険者になるために、ここに来たのですから」

「でも……」


 渋る受付嬢にいらつくテミア。




「貴女はくどいですよ。御主人様がそう言っているのですから、さっさとしなさい!」


 テミアがそう怒鳴ると、その気迫で涙目になる受付嬢。そして、別の受付嬢がこっちに近付いてくる。




「そのメイドの言う通りよ。さっさと進めてあげなさい」

「先輩……、でも……」

「はぁ、変わりなさい。私がやるけど、いいかな?」

「構いませんよ。すぐにギルドカードを作れるなら」


 先輩と言われた受付嬢が変わる。さっきの受付嬢はとぼとぼと別の受付に向かう。




「さっきはごめんね。あの子は心配の性分であまり子供を冒険者にしたがらないのよ」

「はぁ、もしかしてギルドが冒険者にするか判断しているのですか?」

「そうね。あまりにも若すぎるとか、怪我で働けないように見える人等は冒険者に出来ないわ」

「成る程。で、ギルドカードをお願いします」

「了解したわ。2人なら銀貨2枚で、この水晶に手を置いて頂戴」

「この水晶は?」

「ギルドカードを作るために必要なことで、貴方のステータスから名前、歳、種族を読み取るの」


 種族と聞いて、顔をしかめる輪廻。隣にいるテミアは魔族であり、種族を読み取られてはばれてしまうのだ。

 ちらっとテミアを見ると、念話で話してきた。




『御主人様、方法はありますから、安心してください』


 と言ってきたのだ。方法があるなら、テミアを信じるしかない。




「了解した」


 まず、金貨1枚を渡した。一瞬、驚いていたが、すぐに表情を戻していた。




「お釣りは銀貨98枚になります」

「うむ、水晶に手を置くだけでいいよな?」

「はい、置くだけで何もしなくてもいいですよ」


 輪廻は手を置いてしばらく待つ。




「はい、終わりましたよ」

「早いですね?」

「そうよ、この魔道具は凄いですからね」


 魔道具は自分の変わりに魔法を発動できる道具で、ほとんど白銀貨以上の価値がある物ばかりなのだ。

 次にテミアが手を置く。輪廻は心配だが、テミアが方法はあると言うのだから、信じてみる。




「はい、ありがとうございます」


 受付嬢に何も反応はない。あの受付嬢には水晶の結果が見られないのか? と思ったら、水晶からカードのような物が出て来てビックリした。




「2人とも、ギルドカードが出来たので確認をお願いします」


 輪廻は2人分のギルドカードを受け取り、確認をして見たら…………




(おや、テミアの種族が人間になっている?)


 テミアの種族が人間になっていることがわかり、ギルドカードをテミアに渡しながら目を見たら、教えてくれた。




『私の身体は人間のを使っていますからね。人間の魔力を使って水晶に染み込ませたので人間と表示できます』


 魔力を操作して、元のメイドの身体にあった魔力を流したと言っている。でも、それでは名前も元の身体のを表示されてしまうのに、何故か名前はテミアになっていた。

 こっちから念話で聞けないから、あとで聞くことにした。




「冒険者はまず、Fランクから始めるの。ランクを上げる方法は、依頼を受け続けるか、魔物を倒してポイントを溜めるのどちらかになるわね」

「ポイント?」

「魔物にもランクがあることは知っている?」

「はい。冒険者と同じようにランクがあって、SSS〜Fランクと強さが分かれていますよね?」


 SSSランクが一番強く、Fランクが一番弱い。この世界でSSSランクの冒険者は極僅かで、様々な冒険者が目指す頂点でもある。




「よく知っているわね。そのランクによってポイントが違うの。ここまで話せばわかるよね?」

「はい、理解しました」


 ランクが高いほどにポイントが高くて、格上の魔物を倒せば、一気に次のランクへ近づくことも可能なのだ。




「あと、魔人のランクもあるけど、魔物のと桁が違うから、会ったらすぐに逃げるのよ? 魔人はAランク以下では相手にならないから、無謀なことをしないように!!」

「は、はい」


 真面目な顔で注意してくる受付嬢の気迫に押された…………わけでもなく、貴女の近くにその魔人がいますよーと思いながら苦笑していた。




(そういえば、テミアのランクはなんだろう?)


 そのランクは誰が決めたのだろうかと考えていたら、冒険者についての話は終わっていた。




「私はリーダと言うわ。もし、依頼を受ける時は向こうにある依頼書を持ってくるのよ」

「僕は輪廻で、隣の人はテミアと言います。早速、依頼を見てきますね」


 軽く礼してから依頼書がある場所に向かう。いや、向かおうとしたが、誰かが邪魔をして行けなかった。






「おい、子供が冒険者だと? 冒険者を舐めてんのか? あぁん?」






 目の前には、筋肉質の男がいた。どうやら、輪廻が冒険者になったことが気に食わないようだった…………







次は昼頃になります。

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