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第九話 病魔のテミア



『そうそう、契約のために、私に名前を付けてくれる?』

「そういえば、そんなのもあったな……」


 本に書いてあったことだが、契約するためには、召喚した魔族に名前を付けて、相手が同意をする必要があるのだ。

 もし、相手が拒否したら契約は出来ない。




(名前か……、もし呼ぶなら病魔には関係ない名前で街の中でも呼べる奴がいいな。なら、人間らしい名前か……)


 名前から病魔だと断定されないように、人間らしい名前にする。

 さらに女性だと言っているから…………




「テミア、うん。テミアでどうだ?」

『あら、いい名前じゃない。さすが、私の御主人様だね!』

「褒めてくれるのは有り難いが、これで契約は出来たのか? ……あ、俺の名前はまだ言っていなかったな。俺は崇条輪廻だ」

『ちょっと待って。……確かに、崇条輪廻で間違っていないわね。ちょっとステータスを確認させてもらったわ』

「それは必要なのか?」

『ええ、他の魔族で、偽名を名乗った人がいたと聞いたことがあるの。この陣だと、偽名で契約をすると契約は成されずに魔界に強制的に送られちゃうの』

「へぇ、馬鹿なことをした人がいたのか」


 偽名を名乗った人は死ななかっただけでもマシだが、他の召喚方法だと偽名を名乗ったとたんに死ぬとかもありえるのだ。




『では、契約をするわね。……私の名はテミア、名の元に崇条輪廻を御主人様と認める! 一生を崇条輪廻に預けることに誓うわ!!』


 テミアが念話でそう誓うと、輪廻の左手の甲に複雑な魔法陣のようなのが浮き出た。

 そして、テミアの周りを囲っていた魔法陣と結界がなくなった。




『これで、御主人様との契約は成されたわ。では、案内してくれるかな?』

「そうだな。ただ、このままでは魔力が漏れ出ているからこのビンに入ってくれるか?」


 鞄から取り出したのは、何も入っていないビンだ。元は毒を入れていたビンだが、空きビンが一つだけあったのだ。




『成る程、ここは外に魔力が漏れでない部屋みたいだね』

「そうだ、もし魔族を召喚していたことをここにいる人にばれたら殺されるからな」

『え、ここは貴方の家じゃないの? 『ゼアス』の世界なのはわかるけど……』

「ここはティミネス国で、王城の中だ」

『ええっ!? あ、貴方は王族なの!? ……あ、名前がここの世界のと違っていなかった?』


 驚きの声が頭の中に響く。念話は普通に喋る分には問題はないが、さっきみたいに大きいと少し不愉快な感じがする。




「それは、おいおいと説明してやるから、さっさとビンの中に入ってくれよ。これから身体にする人の元に向かうからよ」

『う、うん……』


 テミアは大人しく輪廻の言葉に従ってくれた。

 ここで後片付けをして、召喚した証拠を消していく。

 まぁ、チョークで書いた魔法陣は終わると自然に消えたから割れた『闇のオーブ』を拾うだけですぐに終わった。


 部屋から出て行き、ある部屋に向かう。






 輪廻が向かったのは、前に案内してくれたメイドが寝ている部屋だ。

 そのメイドは戦いに関しては素人だが、健康状態であり、結構可愛い女性だ。そのメイドなら、テミアも気に入るだろうと、選択したのだ。




『……御主人様はただ者ではないな?』

「後で話すから、今は静かにしてくれ」


 テミアの言葉は念話だから、周りには聞こえないが、輪廻は念話を送ることが出来ず、声を出さなければならないのだ。

 だから、会話は事が終わってからと。




(ふむ、メイドにも1人ずつの部屋が与えられているのか? ここの王城は思ったより広かったな)


 メイドが泊まっている場所は王城の端っこであり、異世界人である俺達が行ってもいいと許可はもらってない。

 行く必要がないからだ。




(ふむ、息遣いは1人分しかない。他の誰かがいるようには感じられないな)


 そう判断して、ピッキングツールで鍵を開けていく。




『御主人様は本当に何者……?』


 独り言のような声が聞こえたが、無視する。扉がゆっくりと開かれ、深く寝ているメイドはこっちに気付いた様子はない。

 扉をゆっくり閉め、鍵をかけ直す。そして、メイドの近くまで来て…………




「よし、身体を奪え」

『……本当にいいの? この子は死ぬわよ?』

「知るか。この子は案内してもらっただけで、俺とは何も関係はない。使える物は使うし、必要ならば人を殺すさ。生きていくためにな」

『ふふっ、その考えは嫌いじゃないわ。確かに、私の世界では生きるために必要なら、殺すのは間違っていないからね。殺しは悪いことだと喚く奴はただの臆病者よ。だが、御主人様はそれをわかっているみたいね』

「理解して貰って嬉しいぜ」


 輪廻はニヤッと笑い、ビンをメイドの方に向ける。

 ビンから出たテミアはメイドの口から入っていく。






「ごっ!? ごげ、がはっ!?」






 メイドは目を覚まして、口に入った異物を吐き出そうと暴れるが、瘴気に身体を抑えられて、動けない。

 メイドは隣で見ていた輪廻に気付いて目を開いていたが、声は出ない。

 そのまま口の中にテミアが入っていき、だんだんと身体が動かなくなり…………






 すぅっと、メイドの身体が起き上がる。


「……ふぅ、どう? おかしな所はある?」

「いや、見た目は問題ない。中身はどうだ?」

「ふふっ、心地好い気分だ。これが身体を得るというものだな」


 さっきのメイドが、テミアの声で喋っている。

 いや、たった今、テミアになったと言うのが正しいだろう。




「よし、ここを……」

「あ、ちょっと待って」


 ここを出ようと言おうとした時に、テミアが待ったを掛けていた。




「私と契約したことで、ステータスが変わっているわよ。確認しておいて」

「そうなのか? では、『ステータス』っと」




−−−−−−−−−−−−−−−


崇条輪廻 11歳 男


レベル:1

職業:暗殺者

筋力:150

体力:200

耐性:100

敏捷:400

魔力:400

魔耐:200

称号:邪神の加護・暗殺の極み・冷徹の者・魔族を虜にした者

特異魔法:重力魔法(重壁・重圧)

スキル:暗殺術・隠密・剣術・徒手空拳・身体強化・鑑定・隠蔽・魔力操作・言語理解

契約:テミア(魔族)


−−−−−−−−−−−−−−−




 確かに、少し変わっていた。しかも、魔族とか見られたらヤバいのが増えていた。

 これは絶対に見せられねぇなと思ったら、”鑑定”と”隠蔽”と”魔力操作”があることに気付いた。




「受け継いだスキルがあるでしょ? 元は私のスキルだけど、契約したことで、私のスキルを使えるようになったわ」

「成る程、これは欲しかったスキルだな」


 一番嬉しいのは、”隠蔽”だ。”鑑定”を使われてもステータスを隠せるということだ。もし、”鑑定”の上位である”上位鑑定”を使われたら駄目だが、そうそう持っている人はいないから今は心配しなくてもいいだろう。




「そういえば、テミアのステータスは”隠蔽”で見れないのか?」

「それは大丈夫よ。こっちが許可すれば見れるわよ。”鑑定”を使ってみて」

「それじゃ……」


 鑑定を使うと、テミアのステータスが見えた。




−−−−−−−−−−−−−−−


テミア(魔族) ???歳 女


レベル:35

種族:病魔

筋力:2400

体力:2100

耐性:1500

敏捷:2100

魔力:3000

魔耐:3000

称号:病の魔族・珍魔族

スキル:瘴気操作・魔力操作・鑑定・隠蔽・身体強化・毒無効・念話・言語理解

契約:輪廻(人間)


−−−−−−−−−−−−−−−




 化け物だった。化け物で間違ってはいないが、テミアのレベルが35なのに、レベルが50はあるゲイルのステータスを格段に上回っていた。さすが、魔人だなと思った輪廻だった。歳は見れなかったが、女性だから見られたくはないと思ったのだろう。輪廻はそれほどに気にすることではないから言わなかった。




「あ、成る程。契約した時は名前しか見てなかったけど、御主人様は暗殺者で色々な称号とスキルを持っているのね。しかし、この『邪神の加護』は……」

「理解したかい? 旅仲間に人間ではなく、魔族にした理由を」

「……ええ、この称号だけで人間の敵と判断されそうだね」


 テミアが納得したことで、輪廻が何者か詳しく説明してやった。契約をしていて、輪廻が主になっているからテミアに誓約を掛けられる。

 だが、その誓約はただヤバい情報を漏らさないこと、と軽い誓約だけにした。

 これで口が滑ったとしても、誓約が止めてくれるからこれで安心だ。


 話した後もまだ驚いたままこっちを見ていたが、すぐに表情を元に戻した。




「大変でしたね……と同情はいらないですね? 今が楽しそうに見えるもの」

「ああ、これから自由の旅に出るんだ! 楽しみなんだぜ!」


 これでやるべきのことを終わらせた輪廻は、テミアの着替えやある程度の道具を持って…………




「よし、ここを出るか。外は警備がいっぱいだし、一番暗い所から出ていくぞ」


 一応、輪廻がいなくなったことで騒がないように、ベッドの上に書き残しを置いてから、輪廻の”隠密”とテミアの瘴気を使って、王城から出たのだった…………







次は明日の朝になります。


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