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君の手  作者: 印殷
7/7

いつもの笑い

柚木はまるで煙のように幸の家へ向かった。オートロック式の一般的なマンションのインターホンの番号を何箇所か叩いた。すると、

「柚木?あけるから。あがってきて」

と声が出てきた。柚木は、はいはいと言うとエレベーターに乗り込み、7の数字を押した。

 幸に部屋へ通されるといつもの様にいすに座った。幸はあらかじめ用意しておいたグラスにオレンジジュースを注ぐと、柚木に差し出した。柚木の前に座ると、

「で、どうだった?」

と唐突に聞いた。柚木はくすくす笑うと、

「…大丈夫じゃない?うん。そのうち、いい結果が出るでしょう」

と占い師のように言った。思いもよらぬ答えに幸は肩から力が抜けるのがわかった。

「そんなこと、聞かなくてもわかってるんじゃないの?智がどう思ってるのか。一番知ってるのは幸だと思うよ。違う?智が一番長い時間一緒にいて、笑ったり、泣いたり…。いっつも、一緒だったのは幸でしょ?」

柚木は涙をこぼす幸の手を取り続けた。

「何をそんなに構えてたの?肩の力、抜いたら?自分の気持ち大切にしないと。ね。確かに、わたしが同じ立場だとしたら、元の関係を壊すのは怖い。だって、それだけ時間かけてきたんだから、次の日からまた修復できるとはおもわないし。でも、智も、幸も、構えすぎなの。ちょっとのリスクくらい気にしないで、素直に自分を表現したら?ね?」

穏やかな沈黙の後、幸は立ち上がった。

「わたし、がんばってみる。…ありがとう。柚木」

と言い残し、走って出て行った。

「どういたしまして」

柚木はくすり、と窓の外を眺めた。

 舗道に落ちる影が長くなってきた頃、幸は下校中の智紀を見つけた。

「智紀!!」

自分でも驚くくらいの大きな声が出た時、智紀も振り向いた。

「幸…」

幸は上下する肩を落ち着かせながら、智紀の前に立った。

「あのね、智紀…。私、今までずっと智紀が横にいて、当たり前だと思ってた。でも、智紀はみんなから好かれるのに、ずっと、私の側にいてくれるから、智紀に鈍感になってた。だから、今までの私たちの関係を壊したくなかったの。だから、気にしないようにしてても、気にしちゃって、だけど、智紀は相変わらずで、でも、私気づいたの。智紀のこと…!?」

「好きだ。幸のことが。幼馴染だからいっつも一緒にいたんじゃない。…最初はそうだったのかもしれないけど、いつからか、幸を離したくなくなったんだ。いつでも、幸の隣りにいたくなって、でも、幸は相変わらずだから。言うに言えなかった。だから、もう一回、言っとく。幸、好きだよ」

智紀は幸を優しく抱きしめた。幸は溢れてくる涙を止めることができず、智紀の腕の中で泣いた。

「私も、智紀のこと、好きだよ」

赤々と燃える夕陽のもと、幸の心もたっぷりと満たされていった。

「じゃあ、これもいらないな」

智紀はポケットから封筒を取り出した。幸が封筒を手に取ると、

「最初で最後のラブレター」

と言って、にへらっと笑った。

だらだらと本当に遅筆でした。最後までお付き合いいただき有難う御座いました。これからも、明星院麗子を宜しくおねがいいたします。

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