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君の手  作者: 印殷
5/7

第5話こっくり人形

智紀と過ごす時間は楽しくて。どんどん時間が過ぎていった。文化祭も、とうとうフィナーレを迎え、最高潮に盛り上がっていた。最後のプログラムである、生徒会役員によるエンディング。今年のテーマは―いのち

とても重いテーマに生徒会役員は果敢に挑み、見事に成功させた。満員の体育館は拍手に包まれた。生徒会役員は惜しみない全校生徒、教職員、保護者からの拍手にステージ上で涙した。

 興奮冷めやらぬ幸は智紀と家へ向かって歩いていた。

「最後、生徒会エンディング。超感動したぁ!!ねぇ、智紀?」

幸はルンルン弾みながら智紀に聞いた。智紀は無言でうなずいた。幸は一人でペチャクチャペチャクチャ話していた。智紀は何かを考えているのか、無言でうんうんとうなずいていた。聞いているのかいないのか、それさえもわからなかった。

「・・・・・でね・・・・・。智紀聞いてる?」

こっくり。

「智紀ばか?」

こっくり。

「智紀聞いてないでしょ?」

こっくり。

「どっちよ、智紀」

こっくり。智紀はこっくりこっくりうなずくだけだった。幸ははぁっと大きなため息をつき、

「智紀っ!!!」

と叫んだ。

「うわっ・・・・・。何だよ、いきなり」

智紀はきんきんしている耳を押さえた。

「・・・・・どうしたの?智紀・・・・・。何考えてるの?」

智紀は見つめる幸の視線から逃げるように一歩前に出た。幸は、智紀の手首をつかみ、引き止めた。智紀は何も言わず立ち止まった。・・・・・・・二人は沈黙に包まれた。幸は、沈黙を破った。

「あっ、あのさぁ、さっきなんか言おうとしてたしょ?何て言おうとしたの?」

幸は智紀の前に立ち聞いた。智紀はしばらく押し黙った後、

「俺は、俺はっ・・・・・」

とだけ言い、また押し黙った。幸はムムムと眉を寄せ、

「俺は何?」

と聞いた。智紀はまたしてもこっくりうなずいた。

「もう!!こっくり人形じゃわかんないよ!!」

幸は智紀の腕を揺さぶった。智紀は幸の手を払い、

「俺はこっくり人形じゃない」

とぽっつり言った。幸は苦笑しながら、

「そんな事わかてるわよ。例えよ?」

と言った。智紀は、かすかに震え、

「俺はっ、俺はお前のことがっ・・・・・・好きなのにっ」

と言い放ち走り去った。

「智紀!!ちょっ・・・・・。どういう意味よ・・・・・」

幸は一人取り残され、たった一言“好きなのに”の深い意味にさいなまれていた。




好きなのに。たった一言の意味はひどく重く・・・・・・・・


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