第4話般若軍
がやがやと混み合う校舎。人だかりであふれ、今にもはちきれそうな教室。そう。いよいよやってきた文化祭当日です。私のチームは、戦争について考える、です。生徒よりは、お年より受けしています。誰に受けようと、見てもらえると嬉しいです。
幸は自由時間を迎えると、教室の前で智紀を待った。・・・・・遅い。いつもは時間にルーズではないのに。
「智、どうしたんだろう・・・・・」
そのときである。階段から女子の悲鳴が大量の足音とともに聞こえてきたのは。
「ん・・・。何?」
ふと、視線を向けたその先には、劇で王子様の服を着た智紀が女子に取り囲まれていた。きゃーという鋭い悲鳴や、ないている人。最悪、失神してしまいそうな人までいた。
「うわ。すご・・・・・」
幸は傍観者の振りをして、おうおう、と眺めていた。智紀はその良く知る傍観者の視線に気がつき、すまなさそうな顔をしたが、その傍観者は、よっ、と手をあげた。智紀は助けてはくれない事を悟り、自力での脱出を試み始めた。おもむろに、穿いていた白い手袋を取ると、思いっきり遠くに投げた。女子の山は、面白いぐらいそっちへ走った。自力での脱出に成功した智紀はいそいそと幸のところへ行った。
「ごめん。幸。まさかこんな事になるとは・・・・・」
と言った。が当の本人は、
「やあやあ人気者。君もさぞ、大変だろうねえ」
とまるで他人事のように言った。そして、智紀の手をとると、
「王子様はお姫様をエスコートしなくちゃいけないのよ?」
と言った。智紀は、ふっと息をつくと幸の手をきゅっと握り、
「わかってるよ。俺のお姫様・・・・・」
と言った。幸はきょとんとしながら、
「あ、え。俺のお姫様とか。何言っちゃてるの。そ、そんな事言われたら・・・・・」
と言い詰まった。智紀は幸をまじめな顔で見つめ、
「そんな事言われたら、何?」
と、聞いた。幸は頬を赤くしながら、目を泳がせ、
「智が私のこと好きなのかと・・・・・思うじゃな、い・・・・」
と言った。智紀はまじめな顔で見つめたままだった。
「・・・・幸・・・俺・・・・」
と何かを言いかけた瞬間、
「いたわ!!あそこよ!!」
と先ほどの女子の山が般若のような形相で追いかけてきた。智紀は、がっくり肩を落とすと、
「走るぞ!!」
と智紀は幸の手を掴み走り出した。