第3話二つの心
月日が経つのは早く、気がつくともう文化祭前日。最終準備に追われ続けている幸。自分の仕事をこなしていきながら驚異的な統率力でプロジェクトメンバー全員に的確な指示を飛ばしていた。・・・・・・
「っくあーーーーーーーー!終わったああ!!」
文化祭の準備も終わり、幸は大きく伸びをして目を閉じた。・・・・長かったこの2ヶ月。あっという間に過ぎたわ。色々な事、あったわね。あ、そう言えば、智に助けられたなあ・・・。あの時、智いつもより優しかった。何でだろう・・・。なんか時々優しくなるのよね。しかも気持ち悪いくらいに。だって、この前なんて抱きしめられたわよね。あ、ずっと前なんかおでこにチューされたんだっけ・・・・。
ふと目をあけると、ドアップで智紀の顔。
「っひィ。っ智。いつから覗いてたの?」
智紀は幸の横に座ると、ニッと笑いながら幸の手を取り、
「目つぶったときから」
と言った。幸はにこにこほくほくしている智紀を見て、フッと苦笑した。今ままで何度この笑顔に癒されてきた事だろう。でも、笑顔だけじゃ足りなかった。つんつんと智紀の柔らかい頬を触った。
「いやああ・・・。癒し。超気持ちいい」
と言っていると、智紀はすくっと立ち上がり、
「触るなよ。・・・気安く・・・・・」
とボソッと言った。幸は聞き取れず、聞き返したが別に、とあしらわれた。智紀は、
「あ、そうだ。文化祭、一緒に回らない?」
と聞いた。幸は、
「うん。当たり前でしょ。私、智と一緒じゃないと迷子になっちゃうもん」
と言った。智紀は、複雑な胸中を押さえ込みながら、
「バカだな。ほんと。・・・・・じゃあ、また明日な」
と言って部活に向かった。
幸は一連の智紀の若干不自然な行動を見て、どうしたんだろう。と思ったが、最後のいつもの口調に一安心した。