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君の手  作者: 印殷
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第2話涙の意味

9月。秋です。私、曽根幸(そねさち)は、文化祭のプロジェクトリーダーです。毎日、5,6時間目は文化祭準備です。・・・・・・・・・・・・確かに、やりがいはあるんです。やってて、“ああ、私が作ってる”って感じするんです。でも、なんだか違う気がして。

 ・・・・・あ、チャイム鳴り出しました。はぁ。とりあえず、今日も終わりです。疲れた。

 幸は、重い足取りで教室へ戻った。・・・・やっている人は楽しいのかも知れない。自分の権利ばかり要求して、楽しい事をわいわいやってれば良いんだから。でも、私は何なのだろう。他人が要求してきたことまで断って、いいものを作り上げようとする私は間違いなのだろか・・・。幸の胸の中はそんな事で一杯だった。・・・・何故か、涙が出た。私は間違っていないと思っているのに。正しい事をやっているつもりなのに。・・・どうして自分のことしか考えられないの?自分たちがわいわい楽しくやっている裏で、誰かが傷ついてるんじゃないの?どうして、気がつかないの?・・・・・・と、最後に自分のこと考えてしまう自分が幸は恨めしくなった。

 ダイジョウブ?ドウシタノ?ナニカアッタ?ツカレテナイ?・・・・・・そんな漠然としたコトバなんていらない。聞きたくも無い。私に話しかけないで・・・・・・・・・・。幸はただ、泣くしかなかった。変な同情なんてしてほしくなかった。本気で自分のことだけを考えてコトバを放ってくれる人がほしかった。・・・・・ふわっと背中に広がる暖かさ。小さい割りにずしっとくる優しい重さ。智紀(とものり)が背中合わせに寄りかかってきた。

「・・・・・・ばか・・・・・・」

・・・・・・・・・

「・・・・・・あほ・・・・・・」

・・・・・・・・・

「・・・・・・死ね・・・・・・」

・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・どうした・・・・?」

智紀はそれだけを聞くと、ひっきりなしにしゃくりあげる幸の手を引き、水のみ場へ行った。

 ただ泣き続けるだけの幸の横に立っているだけだったが、その無言の優しさが嬉しかった。思い起こせば、ずっと昔から智紀に幸は助けられてきた。幼稚園で、人気のあった智紀と毎朝登園したり、お弁当を食べたりしていてクラスの女子全員を敵に回したときも守ってくれた。小学校に上がってからも、やっぱり人気のある智紀と登校したりするだけで学年の女子からいじめられた。そのときも守ってくれた。・・・何度も何度も。いつもいつも。一番近くにいて、助けてくれたのは智紀だった。

「・・・・・落ち着いた?」

心に落ちてくる、優しい声。

「・・・・・疲れたんだろ?」

落ちてはしみ込む、温かい音。自然に解ける心の不安。辛苦。

「ありがと。・・・また、助けられちゃった・・・。いつも迷惑かけてゴメンね」

いつもは出ないのに、何故か素直に出た言葉。いえなかったこのコトバ。         ・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・・・・・

「今日は素直なんだな・・・。いっつも強がるくせに」

「べ、別に強がってる訳じゃ・・・・・・」

「甘えて良いんだぞ?つらかったら言って。ね」

私より少し小さな体で抱きしめる智紀。その腕は小さく震えていた。

「あ、え・・・。どうしたの?もしかして、泣いてるの?」

智紀は熱い息を吐くと、フルフル首を振りパッと離れた。

「泣く分けないだろ。ばーか。教室戻るぞ」

とにへらっと笑った。

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