卒業
「……卒業って言われてもな。」
高校、略さず言えば高等学校を俺はこの度卒業する事になった。
めでたい事なんだろうが、祝う気になんて一向にならない。
何たって―――
「何たって、卒業と同時に『バンビーノ』なんていうノーセンスな組織に入る事が決まっているからぁ。うふふ、確かに祝う気にならないねーそー君。」
「人の心を読むなよ。あと、何度も言うが『爽』だ。そんな間延びしたアホみたいな名前で呼ぶんじゃねえよ雨。」
「ゴメンねそー君。」
謝る気ねえなら謝るんじゃねえよ。
ったく、こいつといると調子が狂わされっぱなしだ。
「あーでも、まだ決まった訳じゃないんだよね?」
「ん?ああ……何でも、卒業式終わった後に最終試験みたいなもんがあるらしい。ったく、こっちは入れてくれなんて頼んでねえのに。」
「……でもでも!良かったじゃない!あっちから入れてくれたんだし!」
「何だよ大きな声出して……。」
確かに良くはある。
内部に入っちまえばそれだけちゃんと―――
「あーほらぁそー君始まるみたいだよ。早く行こ。」
「ちょ、おい引っ張るなって!」
こうして俺は晴れて卒業式を終えて特に思い入れの無い高校を卒業した。
「んー。詰まんない卒業式だったねえ。」
「……いやいや、お前は『式』なんて名の付く堅苦しいもんに期待してたのかよ。」
「別にー。」
なんだそりゃ。
相変わらず掴み所のねえ奴だ。
「っと、そろそろ時間だから行くかな。」
「行くかなぁって、そういえばそー君。その最終試験って何処でやるの?」
「んな事も知らねえのか。此処だよ此処。」
とんとんと二回蹴ってやりその場所を示す。
「此処って、学校?」
そうその学校。
この校舎の中にいるその試験をやる奴を見つけて終わり。
何て簡単な試験だ。
ったく、そんな試験いらねえっての。
めんどくせえだけじゃねえか。
「ま、そういう訳だから俺は行くわ。じゃあな。」
「分かったぁ。じゃねー♪」
という訳で、俺は一人卒業しちまった校舎に戻った。